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「止まる」「留まる」「停まる」の違いと使い分け[例文解説]
「止まる・留まる・停まるって全部『とまる』って読むけど違いは何だろう?」
「とまるを漢字で書くときに『どの漢字がいいのかな?』と迷ってしまう」
「よく似てるけど使い分けが知りたい」
「例文も教えてほしい」
このような疑問を感じたことがある方におすすめの記事になっています。
▼「止まる」「留まる」「停まる」の違い
3つの「とまる」の意味の違い簡単に説明すると次のようになります。
「止まる」= 移動や活動、変化などをしなくなる
「留まる」= ほかの場所に移動しなくなる、他の状態に変化しなくなる
「停まる」= 途中で一時的に移動や変化をしなくなる
どれも似たような意味で、この説明だけではいまいちピンと来ないと思います。
それぞれの成り立ちや例文も含めて詳しく解説していきます。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・漢字の使い分け ときあかし辞典_研究社
・小学生のまんが『ことばの使い分け辞典』_学研教育出版
・国語辞典_小学館
・漢字辞典_小学館
1.「止まる」の成り立ち・意味・例文
成り立ち
「止」の漢字は「足あと」の絵から生まれたものです。しっかりと足あとが残るところから「移動しなくなる/させなくする」という意味を表します。
意味
「止まる」には大きく分けて3つの意味があります。
① 移動しなくなる/させなくする
② 活動や変化をしなくなる/させなくする
③ それまで続いてきたことが、あるところで終わりになる/終わりにさせる
例文
「① 移動しなくなる/させなくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「止血」「静止」など
■ ①の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・赤信号で車が止まる
・歩みを止める
・タクシーを止める
・お店の前でふと立ち止まる
・この電車は次の駅止まりだ
「② 活動や変化をしなくなる/させなくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「中止」「休止」「阻止」など
■ ②の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・エンジンが止まる
・仕事が止まる
・涙が止まらない
・工場の操業を止める
・料金滞納でガスを止められる
・喧嘩を止める
「③ それまで続いてきたことが、あるところで終わりになる/終わりにさせる」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「廃止」「終止符」など
■ ③の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・出世をしても、せいぜい課長止まりだ
・株価もそろそろ下げ止まりだろう
・火を消し止める
・真相を突き止める
・息の根を止める
・時計が止まっている
・おもしろくて笑いが止まらない
・子犬の成長が止まった
2.「留まる」の成り立ち・意味・例文
成り立ち
「留」の漢字は「耕作地」を表す部首の「田」が使用されています。「流れてくる水を耕作地に引き入れてためる」ところからある場所にとどまって動かなくなることを表しています。
意味
「留まる」には大きく分けて3つの意味があります。
① ほかの場所に移動しなくなる/させなくする
② ほかの状態に変化しなくなる/させなくする
③ 見たり聞いたりしたものが記憶や心に残る
例文
「① ほかの場所に移動しなくなる/させなくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「留置」「駐留」「抑留」など
この意味をよりよく表す訓読みとして「とどまる」がありますが「とまる」とも訓読みできます。
■ ①の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・赤い羽をえりに留める
・写真を壁に押しピンで留める
・留め金を外す
・ボタンがきちんと留まらない
この意味の場合、「止める」の意味「① 移動しなくなる/させなくする」との違いがわかりにくいと思います。ただ「留める」には「ほかの場所に移動しなくなる/させなくする」という意味合いを含みます。「いずれほかに移動する可能性が高い」ものや「そうしないとほかに移動してしまう可能性が高い」ものに対して使います。
たとえば「出て行こうとする相手を引き止める」なら単純な事実を表しています。「出て行こうとする相手を引き留める」なら「放っておくと出て行ってしまう」というニュアンスが含まれます。
「② ほかの状態に変化しなくなる/させなくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「留年」「留任」「保留」など
■ ②の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・この件は、重役会議内に留め置いてもらいたい
・一命を取り留める
・獲物を仕留める話の要点を書き留める
「③ 見たり聞いたりしたものが記憶や心に残る」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「留意」など
■ ③の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・アイドルのポスターが目に留まる
・ハヤブサは、目にも留まらぬ速さで飛び去っていった
・王様のお目に留まって光栄です
・小さな失敗など気に留めるな
ここまでは、「止まる」と「留まる」の意味と違いについて述べてきました。
ただどちらを使っても結局は同じような意味として捉えられることがあります。そのため、どちらを使っても間違いとはいえない場面も多いです。ただし「留」の漢字を使う場合は、その意味合いを強く感じさせることがあります。
3.「停まる」の成り立ち・意味・例文
成り立ち
「亭」の漢字は「旅人が食事や休けい、宿泊などをするための建物」を表す漢字になります。現代でも「料亭」などにその意味合いが残ります。そこから「停」は、「途中で一時的に移動しなくなる/させなくする」ことを表します。「停車」などがその例にあたります。
意味
「停まる」には大きく分けて2つの意味があります。
① 途中で一時的に移動しなくなる/させなくする
② 途中で一時的に活動、変化などをしなくなる/させなくする
例文
「① 途中で一時的に移動しなくなる/させなくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「停車」「停船」など
「途中で一時的に」という意味合いを持つのがこの漢字の特徴です。「留」では、いずれ移動することが可能性にすぎないのに対して、「停」では、最初から予定や前提となっているのが異なります。
■ ①の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・列車が駅で停まる
・検問のため、トラックを停める
・呼びかけられて、ふと立ち停まる
「② 途中で一時的に活動、変化などをしなくなる/させなくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「停滞」「停電」「停学」など
■ ②の意味の訓読みの例文は次のようになります。
・びっくりして心臓が停まりそうになった
・点検のために電気が停まる
以上の例文で「止」の漢字を使っても大丈夫ですが、「停」とするほうが「途中で一時的に」というニュアンスを伝えることができます。
また「止まる」や「留まる」は常用漢字ですが「停まる」は常用漢字ではありません。
常用漢字は、平成22年内閣告示第2号「常用漢字表」で示された「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」として定められた漢字です。日本の学習指導要領では、義務教育の国語で習う漢字は常用漢字のみと規定しています。
そのため、「停まる」は一般的な使い方ではありません。
状況に応じて使用するというのが適切な判断です。
まとめ
以上、「止まる」「留まる」「停まる」の違いをみてきました。
それぞれの意味の違いをまとめると次のようになります。
・止まる → 移動や変化などをしなくなる場合
・留まる → ほかの場所に移動しない場合、ほかの状態に変化しない場合
・停まる → 途中で一時的に移動や変化をしなくなる場合
常用漢字の考え方で見れば、常用漢字外の「停まる」はやや特殊な使い方になります。一般的には常用漢字の「止まる」や「留まる」を使えばよいでしょう。
1.基本
「止まる」か「留まる」を使用
2.場面によっては
「停まる」を使用
3.「止まる」か「留まる」で迷ったとき
2つの使い分けは難しい場面があります。そういうときは、細かいニュアンスをイメージして使い分ければ大丈夫です。
ただし「止まる」でも「留まる」でもどちらを使用しても違和感がないという場合は、無理に悩まずひらがなで「とまる」としておくのが無難です。ひらがなを使用することで、読む相手に余計なイメージを与えずにフラットに見てもらえることができます。