目 次
表組みの校正方法:間違いやすいポイント解説
校正作業として、まず頭に思い浮かべるのは、誤字脱字や「てにをは」などの日本語のチェックかもしれません。しかし、校正では文章以外の情報、画像やイラスト、グラフ、表組みなども確認項目に含まれることがあります。
中でも表組みは、情報を視覚的に見やすく整理することができるため、あらゆる媒体で重宝されます。一見すると簡単そうに思える表組みですが、文章の校正以上にさまざまな間違いが潜んでいます。
情報が正しく入っているかの確認はもちろん、見やすさや理解のしやすさの確認も必要な場合があります。
この記事では、そのような表組みの特徴を考慮して、よく起こる間違いを中心に校正のポイントについて紹介していきます。
表組みの校正方法
▼ 次の表組みをサンプルとして、間違いやすいポイントを解説していきたいと思います。
表組みのデザインや情報の内容は多種多様ですが、校正で見るポイントは似てくる部分が多く、どんな媒体の表組みにも共通して起こる間違いがあります。
そのような間違いを、以下の1~8のポイントに分けて順に見ていきたいと思います。
✔ 校正ポイント
1. 文字情報とその体裁
2. 表組みの各要素の配置・結合
3. 表組みの色の確認
4. 表組みの罫線
5. 表組内のイラストや画像など
6. 表のタイトルや周りの情報
7. 表組みが複数ある場合
8. 本文と表組みとの対応
1. 文字情報とその体裁
表内の文字情報は、数値や単語のみで構成される場合もあれば、短めの文が入る場合もあります。本文の校正をするときと同様に、まずは誤字脱字や表記のバラつきなどがないかを確認していきます。
表組みの文字の大きさは、本文で使われる文字サイズよりも大抵小さくなることが多く、目立たないことがあります。確認した箇所は、マーカーで塗りつぶすなどの工夫をして見落としを防ぎましょう。
また製品のスペック情報など、表の行や列が多く情報がぎっしり詰まったものでは、同じような要素が並ぶことが多いため誤って一行読み飛ばしてしまうことがあります。それを防止するため、定規をあてて一行ずつ確認するといった方法が有効です。
1. 文字情報で見るポイント
A. 文字情報に誤字脱字がないか
B. 表にあるべき単位が抜けていないか、単位があれば、その単位が適切か
C. 文字情報の体裁(特に数値の体裁は注意)
Aは基本的な項目なため省略しますが、BとCについて詳しく見ていきたいと思います。
▼ B. 表にあるべき単位が抜けていないか、単位があればその単位が適切か
cm、kg、%、人、年など、表ではさまざまな単位が使用されます。単位は、数値一つひとつに付けるというよりも見出し部分にのみ入れられることが多いです。
この単位がちゃんと入っているか、それが適切なものであるかを確認していきます。
サンプルの表でいえば、「労働時間/日」の「/日」が単位になります。ここが抜けていたり、間違って「/週」になっていたりすると表の正確性を失うので注意が必要です。
単位については他にも次のような考えがあります。
次の表では、「合格者数」「合格率」とあるので文字情報から判断して単位がなくてもわかりますが、表組みは見やすさや理解のしやすさが重要になるので単位を入れることが多いです。
同様の考えで「試験年度」にも「(年)」の単位を入れても問題ありませんが、見やすさを考慮すればないほうがすっきりします。このあたりは好みの問題なので、あってもなくてもどちらが正しいというわけではありません。
単位は、読み手の視点を考慮してあえて入れていないこともあるので、機械的にどこにでも単位を入れるわけではありません。
▼ C. 文字情報の体裁(特に数値の体裁は注意)
サンプルの表では、名字と名前の間に半角アキが入っています。半角アキだけでなく、全角アキやアキがない状態の場合もあります。どれが正しいかは校正者では判断できませんが、アキがあれば全体で統一されているかを確認します。
【正】半角アキで統一
【誤り】アキがばらついている
このような間違いは、横方向の目線で行の情報だけを目で追っていると気付きづらいものですが、縦方向で見れば簡単に見つけることができます。
体裁の確認は、横の目線と縦の目線を組み合わせていくのがポイントです。
2. 数値の体裁
▼ 位取りカンマの有り無し
数値の場合は、位取りカンマの有り無しのバラつきがよく起こります。
その他にも、小数点がカンマになっているといった誤りがよく見られます。表組みでは文字自体が小さくなりがちですが、カンマやピリオドなどといったさらに小さな文字の間違いは特に見落とされやすいので注意が必要です。
(例)✕ 50,0 → ○ 50.0
▼ 小数点第何位まで表示するか?
数値は、小数第一位、小数第二位、もしくはそれ以上表示するのか、見やすさにも影響するので重要なポイントになります。
小数点第一位の表示で統一するなら次のようになります。
この場合であれば、「250」を他にそろえるように指摘を出すことになります。
なお小数第一位、小数第二位などで桁数をそろえないこともあります。その場合は、数値の読みやすさを考慮して、小数点の位置でそろえることがあります。
(例)小数点でそろえる
これらの体裁は表組みが一つしかなければ、どれが正しいか判断がつきませんが、他にも表があるならそれと見比べて規則性を探り、どのように対処すべきか判断します。
2. 表組みの各要素の配置・結合
体裁(配置・結合)の不備は致命的な間違いとは言えませんが、表の見やすさに影響してくるので大切な確認ポイントです。
1. 表組みの各要素の配置・結合
▼ サンプルの表組みの各項目は左右センター・天地センターで収まっています。
左右センターや左揃え、右揃えなどが一般的によく見られますが、部分的に体裁を変えることがあります。
▼ 次の例は、「名前」と「メイン担当媒体」だけを左揃えにしています。
見やすさを重視して、部分的に体裁を変えてデザインされることがあります。
この場合によく起こる間違いは、表の一部の体裁が崩れるというものです。
▼ 次の例は、No.③の「校正者名」と「メイン担当媒体」がズレている例です。
正確にいえば、③がズレているというよりも、③だけ左揃えになっていないと言ったほうが適切かもしれません。
このような間違いは、表を作り変えたり、表に行や列の一部を追加をしたりしたときに起こりやすいです。
2. 各情報の結合
次に紹介する結合の間違いは表組み独特のもので、一番やっかいなものです。表組みでは、見やすさの観点から同じ情報を結合して表示することがあります。
▼ 次のように同じ情報を一つにまとめた箇所が結合にあたります。
ただこの場合には、すぐ下にも「8時間」があるので結合の対象にすべきか、という疑問が出てきます。
一方で、雇用形態が同じもの(正社員)だけの労働時間をまとめているとも考えられます。それなら正社員も結合すればいいのではないかと、さらに疑問がわいてきます。
どの状態が正しいかを校正者では判断できないので、規則性が見られないような場合は指摘を出しておくのが無難です。
▼ 他にも結合のパターンは色々と考えられます。
例1:任意の列(労働時間)の隣接する同じ情報だけ結合する
例2:同じ情報が隣接していればすべて結合する
例3:任意の同じ属性の情報だけ結合する。ここでは雇用形態が同じであれば、その範囲で同じものだけ結合しています。
3. その他の間違い
他の体裁の間違いとしては、行の幅が広い/狭いなど均一でない間違いがあります。
※情報量が多いなどで意図的に広くされている場合もあります。
表内だけでなく見出し部分にも間違いは起こりやすいです。部分的に体裁が崩れていることがあります。表の中の情報にだけ集中していると見落としやすくなるので注意が必要です。
(例)一部が太字になっていない
3. 表組みの色の確認
色が付けられている表組みについては、色分けが適切かを確認します。表組みによって色の付け方はさまざまなので、その表の中での傾向をつかむようにします。
色の間違いは、単純に付け間違いということもありますが、行や列の追加や削除、移動によっておかしくなることが多いです。
【正しい状態】
【誤り】
白、水色の交互に色が付くはずが、部分的におかしくなっています。
この手の間違いは、表の行が少ないとわかりやすいですが、行が多いとわかりづらくなるので注意が必要です。また、薄いグレーなどの目立たない色も見落とされやすいので注意深く確認する必要があります。
このような間違いも、結合と同様に、行や列の追加や削除、移動によって起こる可能性が高いです。ある意味パターン化された間違いとも言えますが、表内の文字情報ばかりに集中していると意外と気づかないものです。
4. 表組みの罫線
これまで述べた結合や色に続いて、罫線の不備も表組み独特の間違いと言えます。罫線の種類や太さなどの不備です。
罫線については表内で統一されているケースと、複数の罫線が使い分けられているケースがあります。通常の罫線、太い線、破線が一般的ですが、二重線なども区切りを表す際によく使われます。その表における傾向を踏まえて、規則性から外れている箇所には指摘を出します。
▼ サンプルの表組みは、以下の罫線から構成されています。
・大外枠と見出しとの境には太い線
・②の「メイン担当媒体」の区切りには破線
・他は通常の罫線
▼ 罫線の間違いとしては、以下のようなものがよく見られます。
【誤り例1】罫線の種類が一部違う
【誤り例2】罫線が抜けている
このような間違いも文字を読むことだけに集中していると見落とされやすいです。
また罫線で注意しておきたいことは、通常のプリンターではうまく罫線の太さが表示されないということです。ゲラ上ではバラついているように見えても、データ上では正しいということがあります。
罫線の太さにバラつきが多いようであれば、プリンターのせいということも考えられるので、念頭に置いておきましょう。
5. 表組内のイラストや画像など
表組み内にイラストや画像のようなオブジェクトが入っている場合があります。たとえば商品ごとの特徴を紹介する表であれば、その商品の画像も表組み内に入れることがあります。
▼ 次の表であれば、実際の犬のイラストと「イラスト名」が対応しているかなどの確認も必要になってきます。
また大きさや色、位置などが統一されているかにも注意しましょう。
【誤り例1】③の眠る犬のイラストだけ大きさが違う
【誤り例2】③のイラストが右へズレている
6. 表のタイトルや周りの情報
表5. 社内校正者の特徴と担当媒体
ここでのタイトルは「表5. 社内校正者の特徴と担当媒体」になります。
1. タイトルが表組みの内容に合致しているか
▼ 内容の確認
タイトルを確認するタイミングは、文字情報を一通りチェックした後にすると、内容を把握できているので効果的です。近くに似たような表組みがある場合は、タイトルが入れ替わっていることがあるので注意が必要です。
▼ 通し番号の確認
上の表組みは「表5」なので、誌面内の他の表組みを見て通し番号になっているか確認します。前後に「表4」と「表6」があるはずなので出現順を確認します。
本文の修正や表組みの追加や削除によって、番号が通らなくなるという間違いがしばしば起こります。
2. 表組みの周りの情報
表組みは、必ずしも一から作成されるということはありません。毎年同じような情報を載せる場合は、既存の表組に最新の情報を追加して作成していくことがあります。
▼ 次の表組みは、年度ごとの合格者数と合格率を記載したものです。
たとえば、この表に最新の情報である2023年のデータを追加したときに、起こりやすい間違いがあります。
・上の表に2023年のデータを追加したものです。
【誤り】表右下にある「※2023年3月1日現在」の文言が最新の状態になっていません。
情報が追加された場合は、その情報が入っていればOKではなく、周りとの整合性も確認する必要が出てきます。
このような間違いは表組みだけではありませんが、表組みの校正作業に関していえば、表組みとその周りの情報が別々にとらえられる傾向にあります。
要は、表を校正しているときは、表にしか目が行かないということです。表組みには「◯年△月□日現在」などの注意書きが記載されていることが多いので、表だけでなくその周りの情報にも目を配りましょう。
7. 表組みが複数ある場合
ゲラ内に表組みが複数ある場合は、表組み同士の体裁がそろっているかのチェックが必要になってきます。
ただし、表組みについては内容等によって細部まできっちりそろえることが難しく、統一よりもそれぞれの表やページ内での見やすさを優先している場合があります。
体裁が大きくバラついていて傾向が読み取れないようなら、バラついている旨を申し送りするのみでよいでしょう。
表組みは必ずしも付近のページに入るわけではないので、余裕があれば誌面全体を通して他の表組みと体裁がそろっているか見比べて確認しましょう。
8. 本文と表組みとの対応
これまでは表組み単体の確認でしたが、今度はゲラ内での整合性の確認です。本文中に表組みに関する記述がある場合は、表組みと整合性がとれているか確認します。
誌面内の表組みは単体でなく、大抵は本文やキャプションなどでその表について触れられています。本文中の記述との対応を確認し、矛盾が生じている場合は指摘を出します。
たとえば、本文中に「最も多いのは○○である」「○○と□□は2倍以上の差がある」といった記述があり、表組みから読み取れる内容であれば整合性がとれているか確認します。
また本文中に、表に関する語句(たとえば、「表5参照」など)があれば、本文の内容と表組みとが一致しているか確認しないといけません。
本文との対応
たとえば本文中に
「野良犬健二さんは、校正経験が12年になります。」
とあれば、表組みの情報と照らし合わせる必要があります。
表組みの情報を見れば、「10年(契約社員の期間2年含む)」とあるので、本文中の「野良犬健二さんは、校正経験が12年になります。」と矛盾することがわかります。
この間違いの原因は、表組み内の情報を『10年+2年=12年』と誤って解釈したことだとわかります。
また本文中に
「山犬ななさんは、書籍を担当しています。」
とあれば、全員が書籍を担当しているので、どの書籍なのか明示したほうがいいのではないかと疑問出しの対象になります。
おわりに
以上、表組みの校正ポイントについて解説してきました。
表組みの間違いは、一つひとつを見ていけば簡単に見つけられますが、文字を読むことに集中していると意外と気づかないものです。この記事内で紹介した間違い以外にも、表組みではさまざまな予期せぬ間違いがあります。
そのため校正ポイントを一度にまとめて見るのではなく、「横の目線」「縦の目線」を組み合わせつつ、「文字の位置」「色」「罫線」という要素に分解して、一つずつ丁寧にチェックしていくことで間違いを潰していきましょう。
当然ながら、本文との対応は「全体を見る目線」が必要になってきます。