「時」と「とき」の使い分け(漢字にする?ひらがなにする?)
この記事では「時」と「とき」の使い分け方、漢字で書けばいいのか、ひらがなで書けばいいのかをわかりやすく紹介しています。
「時」と「とき」の使い分け基準
次の2つの文にはいずれも「とき」という語が含まれていますが、その意味合いは異なります。違いを説明できるでしょうか。
1.ときが解決してくれるだろう。
2.到着したときにはイベントは終わっていた。
1つ目の文の「とき」は、文字通りの「時間」を表す普通の名詞です。
それに対し、2つ目の文の「とき」は実質的な意味をあまり持たず、直前の「到着した」を受けてひとまとまりの名詞句を作っています。こうした語は、文法的には「形式名詞」と呼ばれます。
通例として、1つ目の文のように「時間」「時刻」「時期」といった意味を持つ場合は漢字で、2つ目の文のような形式名詞はひらがなで表記されます。
見分け方としては、「~場合」と言い換えられるものは形式名詞なのでひらがなとし、言い換えることができないものは漢字で表記すると判断できます。
▼ まとめると次のようになります。
名 詞 ……「時間」「時刻」「時期」を表す → 漢字で「時」
形式名詞 ……「~場合」と言い換え可能 → ひらがなで「とき」
「時」と「とき」の使い分けの練習
前述の例を踏まえて、次の文中の「とき」は、それぞれ漢字とひらがなのどちらで表記するのが適当か考えてみてください。
Q
1.困ったときは連絡してください。
2.楽しいことをしていると、ときの流れが早く感じる。
3.役に立つかどうかはときと場合による。
4.いざというときのために用意しておく。
5.荷物が多いときにはタクシーを使う。
A
1つ目の文の「困ったとき」は、「困った場合」と言い換えられるため形式名詞であり、ひらがな書きが適切です。
4つ目、5つ目の文も同様に「いざという場合」「荷物が多い場合」と言い換えられるので、ひらがなで表記するのがいいでしょう。
2つ目と3つ目の文中の「とき」はいずれも「~場合」とは言い換えられません。「時間」や「時期」そのものを意味する普通の名詞であるため、漢字で表記します。
ただし、形式名詞と普通の名詞は明確に区別するのが難しいケースもあります。
そのため実際に文章を書くうえでは、漢字とひらがなのどちらが適切なのか迷うこともあるかと思われます。判断がつかないときは、無難に「ひらがな」にしておくのが賢明です。
『記者ハンドブック(共同通信社)』でも「使い分けに迷う場合は平仮名書き」との注釈があります。
漢字とひらがなの使い分けで迷ったとき
漢字とひらがなの使い分けで迷ったときには、記者ハンドブックを参考にする方も多いと思います。
ただ、あくまで記者ハンドブックのような書籍は使い分けの判断基準の一つとなるものです。企業や媒体で使い分けのルールが定められているならそれが優先されます。
たとえば「時が来れば解決する」という文も、使い分けルールが定められているなら「ときが来れば解決する」としても間違いではありません。
形式名詞の「とき」も、「表記が揺れていた時は、疑問出しをする」と漢字にしても大丈夫です。
使い分けが難しい語に対しては、曖昧な使い方をせずに、迷ったときどちらに統一すべきか事前に決めておくことが大切になってきます。
おわりに
「時/とき」の使い分けについては、『記者ハンドブック』だけでなく、『明鏡国語辞典(大修館書店)』にも文例が多く示されています。
特に『記者ハンドブック』には、「時/とき」以外にも迷いやすい用字用語について豊富な実例が載っているので、文章を書く機会が多いなら一度手に取ってみることをおすすめします。
「記者ハンドブック」
(一般社団法人共同通信社)