目 次
トルから起こる色々な間違い[例題から学ぶ]
「トル」は、校正記号の中でも、もっともよく使用される指示の一つです。
この「トル」の指示で、気を付けておきたいこと、よく見られる間違いを例題を交えて紹介していきます。
▼ トルの指示
「トル」は、文字や図版を削除するときに使う指示になります。「トルツメ」も同じ意味です。
次のようにしたいときに「トル」を使います。
トルと似た指示に「トルアキ」や「トルママ」がありますが、意味は違います。
トルアキやトルママは、次のようにしたいときに使います。
文字に対して、
削除してアキをツメル → トル or トルツメ
削除してアキはそのまま → トルアキ or トルママ
一方、図版等に対して「トル」を使うときは、削除後にツメルというニュアンスは弱まり、単純に「削除」だけの意味として使われる場合もあります。
▼ トルの基本的な使い方
1. 範囲を指定し「トル」と入れます。「トルツメ」でもOKです。
2. 打ち消し線だけで指示することもできます。
ただし、この場合、訂正範囲が曖昧になることがあるため注意が必要です。
3. 打ち消し線の両端に斜め線を入れる場合もあります。
この場合も訂正範囲が曖昧になることがあります。意図せず句読点などに斜め線が掛かることがあります。
※記事内の例題で使用している文章や画像の出典は以下になります。
『Wikipedia_忍者ハットリくん』
『InRed 9月号(宝島社)』
トルから起こる間違い例 1
Q. 次の赤字の修正結果を見て、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
■ 赤字
■ 修正結果
A.
削除された後の文章を通しで読んだとき、内容がおかしいことがあります。
トルの指示があった場合は、その指示が反映されているかだけでなく、前後の文の繋がりにも注意する必要があります。
トルから起こる間違い例 2
Q. 次の赤字の修正結果を見て、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
■ 赤字
■ 修正結果
A.
削除された文中に「※」があるので、下の注釈文だけが残された状態になります。そのため、この文では、注釈文も削除する必要があります。
[POINT]
上の問題とは逆ですが、注釈文に「トル」の赤字が入ったときにも同じような間違いが起こります。
■ 赤字
■ 修正結果
文中に「※」だけが残された状態になります。記号が小さいので見落とされることも多いです。また、「※」は一つだけとは限りません。複数箇所に入っていることもあります。
トルから起こる間違い例 3
Q. 次の赤字の修正結果を見て、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
■ 赤字
■ 修正結果
A.
起こしのパーレンに対応する閉じのパーレンが削除されています。一文が短いとすぐに気づきますが、長くなる場合は見落とされやすいので注意が必要です。
この文では、閉じのパーレンを入れ直すのが適切です。
トルから起こる間違い例 4
Q. 次の赤字の修正結果を見て、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
■ 赤字
■ 修正結果
A.
4行目のアンダーラインの位置が間違いです。
削除されて文字は移動したが、アンダーラインは元の位置に残っているという状態です。
[POINT]
アンダーラインは、文字を強調する働きがあるので見出しなどでよく使用されます。次の例では、見出し部分(スカートの文字の下)にアンダーラインがあります。
● この見出し文に、トルの赤字が入った場合
● 次のような間違いが想定できます。
トルから起こる間違い例 5
Q. 次の赤字の修正結果を見て、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
■ 赤字
■ 修正結果
A.
次のように、「※1」を削除して、
「※2」を「※1」に繰り上げるという仕上がりも考えられます。
この状態でも間違いではありませんが、トルにより注釈文が1つになったため、1や2などで区別する必要がなくなります。そのため、「1」を取って「※」だけにします。
「※1」のままだと、「※2」以降もあると誤解を与えるかもしれません。そのため、数字を取っておくほうが無難です。
トルから起こる間違い例 6
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
【2のフレアスカート】が削除されるので、それに連動する箇所を探していきます。
まず、❶のフレアスカートに対応するキャプションがトルになります。
次に、❷の合番を一つ繰り上げます。
トルから起こる間違い例 7
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
(1)
トル指示により、商品が1種類になるので、❶の合番(2つ)がトルになります。
❷のキャプションもトルになります。
(2)
さらに、「各」や「ともに」も削除します(❸)。
複数商品がある場合は、「各」などを使いまとめて表記されることが多いです。「各」や「ともに」の他にも、「すべて」や「上下とも」「左右」など、色々な表現があります。
トルから起こる間違い例 8
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
(1)
商品が1種類になるので、❶の合番(2つ)と、❸の「ともに」がトルになります。❷のキャプションも不要なためトルになります。
(2)
❹:コピー内に、削除される商品の説明があります。
文章を読まないと見つけられない間違いもあります。
この場合は、「要変更」「要リライト」などの赤字が必要になります。
トルから起こる間違い例 9
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
見出し文と、その説明が対応していることは非常に多いです。どちらかに赤字が入った場合は、両方が対応しているか確認するクセを付けておく必要があります。
次のように、一部が変更されて矛盾を起こす間違いはよくあります。
トルから起こる間違い例 10
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
(1)
❶:合番を一つ繰り上げます。
❸:サンダルに関する文言を削除します。
❷:サンダルに関する説明があります。この部分は「要変更」「要リライト」になります。
※『サンダルが削除されたので、要変更』などと指示すると親切です。
(2)
❹のように、組み合わせ商品の金額が表示されていることもあります。商業印刷物ではよく見られます。
この問題では、すぐ近くにあるのでわかりやすいですが、細かな組み合わせ表などになると、まとめて別のページに掲載されていることもあります。
校正しているページ以外にも、赤字が連動することがあります。そのため、誌面全体の情報もある程度は頭に入れておかないといけません。
トルから起こる間違い例 11
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
❶:Part 3が削除されるため、以降の数字を繰り上げます。
❷:各Partのページ数も変更される可能性が高いですが、ここからは判断できません。
この場合は、まず中面の該当ページを確認する必要があります。
Part 3を削除して、その分、Part 2のページ数を増やすという可能性もあります。その場合は、ページ数の変更はなしとなります。
INDEXや目次など、中面の情報が記載されているページに赤字が入った場合は、注意が必要です。
トルから起こる間違い例 12
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
❶:①のコピーが削除なので、以降の数字を繰り上げます。
❷:①に対応する合番は2か所あります。合番は一つだけとは限りません。図面などでは、複数出てくることがよくあります。
[POINT]
見出し部分の「クリアケース3枚と4つの機能で管理!」も、トルの赤字と連動してくるように思えます。ですが、内容からして①のコピーが削除されたことによる影響はないのでそのままで大丈夫です。
トルから起こる間違い例 13
Q. トルの赤字以外にも必要な赤字があります。不足している赤字を考えてみてください。
■ 赤字
A.
(1)
❶:合番を繰り上げます(4か所)。
❷:キャプションを削除します。
(2)
❸:1の商品は、画像のモデル着用の商品になるため、この商品が削除されると、モデル着用に対応する商品がなくなります。
色が違う程度なら画像加工で対応できますが、商品の形状そのものが違う場合はそうもいきません。モデル画像を再撮することも考えられます。また、画像はそのままで、注釈文を入れて対応するということも考えられます。
この例では、赤字でも疑問出しでも大丈夫です。
※モデル画像を再撮するなら、右上のモデルのコーディネート情報も変更される可能性があります。画像差し替えの場合は、差し替えた画像と元の情報が対応しているかの確認も必要になってきます。
トルから起こる間違い例 14
※この間違い例は問題形式ではありません。
左右の両ページ(見開き)を使って、デザインされているページはよく見られます。特に巻頭や特集ページでは多いです。次のようなものです。
見開きページのキャッチコピーなどは、左右のページにまたがって作られることも多いです。
次の①~③のようにです。
■ この文に、トルの赤字が入った場合
■ 修正結果
▼ 正しいもの
▼ 間違い
間違い例は、左ページの文字は削除されて詰められたが、右ページの文字はそのままの状態というものです。そのせいで、左ページの文字の右側に不自然なアキができています。
見開きで作成されていないページであっても、校正するときにはゲラを左右に並べて確認するのが賢明です。
単ページで完結するものであっても、見開きで見ると、左右のページのバランスがおかしいということもあります。
※問題1~5で使用している文章【出典:Wikipedia_忍者ハットリくん】
※問題4・6~14で使用している画像【出典:InRed 9月号(宝島社)】