文章校正ソフト見つけられない間違い[校正・校閲向け練習問題]
今回の練習問題は、人の目でしか見つけられない間違いです。間違い自体は簡単ですが、現段階では校正ソフトで発見するのが難しいものです。
【宝島社 InRed(インレッド)11月号_P.61の一部を改変しての出題になります】
1:練習問題 <問題>
▼ 問題
次の画像とコピーを見ておかしな箇所を考えてみてください。
[上]フロントに大きく配したスヌーピーは、スパンコールの刺しゅうで象られたデザイン。ボトムスをファーブーツに入れて、アクティブながら街に着映えるコーディネイトの完成。[下]キッズ用のワンピースは、ポシェット風デザインのふわふわのスヌーピーが可愛い。
2:練習問題 <解答>
▼ 解答
[上]フロントに大きく配したスヌーピーは、スパンコールの刺しゅうで象られたデザイン。ボトムスをファーブーツに入れて、アクティブながら街に着映えるコーディネイトの完成。[下]キッズ用のワンピースは、ポシェット風デザインのふわふわのスヌーピーが可愛い。
【解答一覧】
■ キッズ画像
1. 画像の欠け(ワンピースのフード上部)
2.[上][下]→[左][右]or[左から]
■ バッグ画像
1. INFOMATION → INFORMATION
2. 下線が足りていない
3. ロゴの欠け(右上のTM)
3:練習問題 <解説>
▼ 解説
■ キッズ画像
1. 画像の欠け(ワンピースのフード上部)
切り抜き画像の周りが欠けていることはよくあります。画像やイラストは、パッと見て入っていたらOKではなく周りも注意しないといけません。他にも、画像の影の有り無しが混在している間違いもよく見かけます。
2.[上][下]→[左][右]or[左から]
「上・下」でもわからなくもないですが、この場合は「左・右」などにするほうが読者には親切です。画像が入れ替わったり、レイアウトが大幅に変更したりしたときは、画像とコピーとの対応関係がおかしくなることがあるので注意で必要です。
■ バッグ画像
1. INFOMATION → INFORMATION
見慣れた簡単な英単語ほど、気の緩みからか間違っていることがよくあります。
【例】 × Wintar ⇒ ○ Winter
2. 下線が足りていない
文字の追加や削除の修正をしたときに、よく起こる間違いです。文字ばかりに集中しているとうっかり見落としてしまいます。
3. ロゴの欠け(右上のTM)
バッグ画像のロゴだけ見るとわかりませんが、キッズ画像にも同じロゴがあるのでそこから判断できます。ロゴは小さく配置されるため、欠けていても誰も気付かないことが多いです。
▼ ロゴの欠けについて
ロゴやその周辺情報の欠けには、いくつかのパターンがあります。こういう間違いがあるということさえ知っておけば、あとはちゃんと確認すればいいだけなので難しくありません。
・例1~3のような欠けはよく見られるものです。
・答え
今回の練習問題では、文章に集中していると見逃す恐れのある間違いをピックアップしてみました。
校正を始めたばかりの頃は、文字だけに目が行きがちです。一歩引いて俯瞰しないと気付けない間違いはたくさんあります。この練習問題では、スペルミス以外は校正ソフトでも見つけられない間違いです。
4:ポイント
1. キッズ画像のキャプション
基本的に文章は、読者を想定してわかりやすく書くものです。なるべく難しい漢字は使わず、くどい言い回しも避けます。このキャプション内で「刺繍」を「刺しゅう」としているのもその一つの例です。
・『スパンコールの刺しゅうで象られたデザイン。』
「刺しゅう」に続く、「象(かたど)られた」も読み方が難しいです。
ここもひらがな表記にしたいところですが、
『スパンコールの刺しゅうでかたどられたデザイン。』
とすると、ひらがなが続くので却って読みにくくなります。
パターンとしては、次の4つが考えられます。
1. 刺しゅうで象られたデザイン(掲載文)
2. 刺しゅうでかたどられたデザイン
3. 刺繍で象られたデザイン
4. 刺繍でかたどられたデザイン
見た目的には「1」がスッキリしています。「2」だとひらがなが続くため読みにくく、「3」だと文が硬くなります。特にキッズに関する画像のキャプションなので、なるべく柔らかい印象にしたいはずです。
で、「4」はどうかというと、おそらくInRedのようなファッション誌には「刺しゅう」の単語がよく出てくるはずです。そのため、表記ルールで「刺繍」は「刺しゅう」にするという決まりがあるのではないかと思います。そこで「1」の文を選択していると考えます。
「象(かたど)られた」も比較的読みが難しいものです。この言い回しにしているのは、InRedの想定読者層が30代を中心とした女性であることが要因だと思います。おそらく、中高生向けの雑誌なら「象られた」という言葉は使わないでしょう。級数の小さいキャプションにルビを振ることはまずないので、コピー自体をリライトしているはずです。
2. ロゴ下のホームページアドレス
ロゴ下に小さくてわかりにくいですが、ホームページアドレスが入っています。この文が前号からの流用・既に印刷されている別媒体から流用されているものなら、それとの照合で大丈夫です。
ただ新規で追加されたものであるなら、ホームページアドレスの確認が必要になってきます。パソコンでURLを入力してリンク先が正しいかどうかチェックします。ホームページアドレスは、意外なところに入っているので要注意です。