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校正ミスを減らすために[つらい夜勤で学んだこと]
今から十数年前。広告といえば紙媒体が中心で、出版業界にもまだ華やかさが残っていた頃の話です。
当時は校正といえば、紙が主流で、校正の必要性も今以上に理解されていて、校正者を数十人常駐させている会社も珍しくない時代でした。
下版間近になると今とは比べ物にならないぐらい忙しく、さらにそこに繁忙期が重なると、校正をやってもやっても終わりが見えないぐらい、山のように校正物がある状況です。
繁忙期は、残業からの徹夜が確定だったので、ほぼ夜勤に近い状態です。
夜勤専従だったら身体も慣れるのかもしれませんが、繁忙期だけの一時的なものなので身体が慣れることもありません。
1. 夜勤の校正で学んだこと
▼ 夜勤のときは、いつも次のようなループです。
1. 校正をする
2. 身体がだるくなる
3. 集中力が途切れる
4. 休憩をとる
5. コーヒーを飲む
6. 顔を洗う
7. 1に戻る
夜勤のときには、数名の校正メンバーがいて、皆がつらい環境の中での校正だったと思います。ただ、なぜかクレームに繋がるような大きなミスは起きませんでした。
原因は色々あると思いますが、その一つに、各校正者が見落としをしないように、自分なりの予防管理をしていたからだと思います。今風に言い換えればリスクマネジメントです。
- こまめに休憩をとる
- 見直しの回数を増やす
- いつもより校正のスピードをゆるめる
といった単純なことです。
「見落とす」という前提で、そこから逆算して、そうならないように無意識に行動していたんだと思います。(まあ、当時はこんなことは一切考えていませんでしたが……)
▼ 夜勤の校正を通して学んだこと
1. 校正の品質は、外部環境に左右されやすい
⇒ 個人の校正スキルが高くても、環境が悪ければその能力を発揮できないということ。
2. 自分(校正者)が思っている以上に、些細な体調の変化が集中力に影響してくる
⇒ 自分の目では確認できていると思っていても、頭が付いてきていないということです。そのせいで、見落としのリスクが高まることです。
2. 校正の品質は、外部環境に左右される
校正の外部環境で気を付けておきたいことに次のようなことがあげられます。
- 適切な作業スペースを確保する
- 会話や電話などの音を軽減する
- 無茶な時間内での校正の要求をしない
- 曖昧な校正指示を出さない etc.
いずれが欠けていても、校正者にとってはストレスになります。
環境づくりは、校正者個人ではなかなかできないものです。もし、校正をマネジメントするというなら、環境整備は真っ先に手を付けるべきところです。校正者のパフォーマンスを発揮させる土台となります。
見落としに対しての捉え方も、個人の責任にするのでなく、その取り巻く環境も視野に入れて考えたほうがよいです。その個人を取り巻く環境を見渡せば、ミスを誘発させる根本的な問題が見えてくるかもしれません。
何も環境を変えず、ミスを個人の責任にしてしまう状態では、また同じような間違いが繰り返される可能性が非常に高いです。
※場合にもよりますが、起こったミスを共有するだけでは、ミスへの対策が浅いこともあります。
3. 校正の品質は、校正者の自覚に左右される
外部環境が整っていても、校正者本人の自覚が品質に大きく影響してくる場合もあります。
校正のスキルが高いとか低いとか、やる気の有無ではなく、体調の変化です。
体調が少しでもすぐれない場合(ちょっと頭が痛い、カゼ気味のとき)は、自分ではいつも通り校正ができていると思っていても、見落としは確実に多くなってきます。
マルチタスクの状態に近いです。
目で文章を追っていても、頭が追い付いてこない(処理しきれていない)状態です。
これは、校正者本人だけの問題でなく、本来なら管理する側が気づいてあげるべきことですが、校正者も自覚しておいたほうがいいことです。
校正者には、真面目で頑張りがちな方が多いですが、自分のパフォーマンスを発揮できていない状態で頑張ったところで、万一見落としがあった場合、自分もつらい立場になり、校正を依頼している側にも迷惑をかけることになります。
あとから「あのときは、体調が悪かったんで……」という言い訳はできません。体調の悪いときは、必ず見落しがあると考えて行動したほうがよいです。
当然、それでも仕事をせざるをえない状況があると思います。
そのときには、次のような対応が考えられます。
- 難易度の高くないもの/赤字の少ないものを優先してやる
- ダブルチェックをしてもらう(重要項目以外も)
- 作業項目を限定する(照合だけ、ダブルチェックだけなど)
- 見直しの回数を増やす etc.
4. 校正のスキル以上に大切なこと
校正のミスをなくすためには、「環境づくり」と「本人の自覚(管理者側も)」は大切です。
これらは、スキル以上に大切になってくるかもしれません。
「どこでも、いつでも校正ができる」という気持ちはあっても、現実的に実行できるかは難しいところです。仮にできたとしても、そこに品質が付いてこないと「校正をした」とはいえません。
長い目でみれば、信頼と仕事を失っていく原因になりかねません。
校正者の中には、わかっていても言いづらい立場の方も多いと思います。そのため、そこは校正を管理する側が察してあげるべきところでもあります。