「匂い」と「臭い」の意味と違い[漢字の使い分けをわかりやすく解説]
この記事では「におい」を漢字にする場合に、「匂い」か「臭い」のどちらを使用すればいいかを解説しています。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『表現読解国語辞典』(ベネッセ)
・『新明解国語辞典』(三省堂)
・『標準統合辞書』(Microsoft)
・『匂い袋』(Wikipedia)
1.「匂い」と「臭い」の漢字の使い分け
においは、良い・悪い・好ましい・不快など、
嗅覚で感じるものすべてについていいます。
と、嗅覚が刺激されたときに感じるものです。
そのにおいの対象は色々です。
- 花のにおい
- 香水のにおい
- 甘く心地よいにおい
- 汚水のにおい
- 不快なにおい
- 何か腐ったにおい
■ そのときに感じたにおいが、
好ましい場合は「匂い」の漢字が使用されます。
- 花のにおい → 花の匂い
- 香水のにおい → 香水の匂い
- 甘く心地よいにおい → 甘く心地よい匂い
「匂い」の類語である「香り」も好ましいにおいに使用されます。
■ 感じたにおいが、
好ましくない場合は 「臭い」になります。
- 汚水のにおい → 汚水の臭い
- 不快なにおい → 不快な臭い
- 何か腐ったにおい → 何か腐った臭い
「臭(にお)い」は「臭(くさ)い」とも読めます。『臭いものに蓋をする』『面倒臭い』などの言葉のイメージから、嫌なものに対して使用されると連想できます。
「匂い」と「臭い」の漢字のどちらが適切かは、個人の感じ方によって違ってきます。同じ「におい」でも「匂い」が適切と感じる人もいれば、「臭い」のほうがいいと思う人もいます。
ただ「匂い袋」のような固有の名称として確立しているものは、においが自分の好みに合わなくても「臭い袋」とは表記しません。
・匂い袋
※匂い袋とは香料を詰めた布袋のことです。
2.「におい」とひらがなで表記する場合
「におい」のような五感や人の感情は、個人によって様々です。状況によっても感じ方が変わってきます。
たとえば、料理で苦みがあったとして、それが美味しく感じる人もいれば、それが嫌だと感じる人もいます。味が辛いからといって美味しくないともいえません。
雨が降ったあとのにおいも、都会と自然豊かな場面では感じ方が違ってくるはずです。また普段はよく食べるファストフードでも、映画館の中や密閉された空間でそのにおいが漂ってくると不快に感じることがあるかもしれません。
個人の感覚や状況によって使用が左右される漢字は、自分ではこの漢字が適切だと思っていても他人がそれを共感してくれるとは限りません。
1. 好みがわかれるようなにおい
2.「何だろう? このにおいは」というときのにおい
このようなどちらの漢字を選択すればいいか判断がつかない場面は、漢字の使い分けにこだわらず、ひらがなで「におい」と表記するのが適切です。
ひらがなよりもカタカナ表記のほうが文章中では目立つので、カタカナ表記もよくみられます。
たとえば「気になる汗のニオイも~」などはよく見られる文です。汗のにおいも「スポーツでかいた汗のにおい」と「ジメジメした夏にかく汗のにおい」とでは感じ方が違ってきます。必ずしも汗のにおいが不快なものとはいいきれません
「タバコのにおい」の表記も、著者の主張として意図的に「タバコの匂い」と使用しているものは例外として、そうではない文章内に「タバコの匂い」とあるなら、校正においては指摘するのが適切です。
タバコに対してよくないイメージもあります。そこから「臭い」の漢字を連想するかもしれませんが、喫煙者の方への配慮も当然必要なので、中立的な「におい」と表記しておくのが現段階ではベストな選択です。
まとめ ~基準は3つだけ~
1. 良いにおいか嫌なにおいか?
・好ましいにおい →「匂い」
・好ましくないにおい →「臭い」
2. 使い分けが明確か?
・感じ方がわかれる →「におい」
・何のにおいかわからない →「におい」
3. ひらがな表記かカタカナ表記か?
文章中でひらがなの「におい」が目立たない場合や、文字を強調したい場合はカタカナで「ニオイ」と表記します。
「におい」が目立たない場合 →「ニオイ」
文字を目立たせたい場合 →「ニオイ」
※この場合、ひらがなとカタカナの表記揺れに注意しましょう。