添削や校正で役立つ読みやすい文章にする10のコツ[例文解説]

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読みやすい文章の書き方の基本[例文で学ぶ10のコツ]

ビジネスメール、案内文書、ブログなど、日常には誰かに読んでもらうために文章を書く場面があふれています。しかし「分かりやすい文章を書こう」という気持ちはあっても、具体的にどのようにすればよいか悩んでいる人が多いのではないでしょうか。

文章のプロである添削者や校正者は、日々様々な文章を読みやすく修正しています。実は、内容を変えなくても、ちょっとした部分を変えるだけで、大きく読みやすさを向上させることも可能です。そこで、どういった点を添削者・校正者が直しているのか、10のポイントとして紹介します。

ぜひ「読みやすい文章を書きたい」「文章が分かりにくいと言われる」という方は、これらのポイントを取り入れ、ご自身で校正されるときの参考にしてください。

1. 作業内容をリストアップする

一つの文に多くの情報を詰め込みすぎると、文の意味が取りづらくなります。基本的に、一つの文では一つのことだけを伝える「一文一義」を心掛け、文をこまめに区切りながら文章を展開していきましょう。目安として、一つの文は長くても80字程度にとどめるのが良いとされています。

<例文>

NG:明日の打ち合わせの開始時間が10:00から11:00に変更になったので、参加メンバーへお伝えいただき、あわせて話し合いたい議題と配布資料があれば、事前にメールで共有することも伝えてください。

OK:明日の打ち合わせの開始時間が10:00から11:00に変更になったので、参加メンバーへお伝えください。あわせて話し合いたい議題と配布資料があれば、事前にメールで共有することも伝えてください。

2. こそあど言葉の使用は最低限にする

「この」「それ」「あれ」などのいわゆる「こそあど言葉」(指示語)は便利な一方で、多用すると文の意味が取りづらくなります。こそあど言葉を使用するのは、それが指す言葉が直前にあるなどで明らかなときだけにするとよいでしょう。

<例文>

NG:自分の趣味はゲームだが、それに没頭することを両親にはとがめられている。それが私の悩みの種だ。

OK:自分の趣味はゲームだが、それに没頭することを両親にはとがめられている。両親の理解が得られないことが私の悩みの種だ。

3. なんでも並列して書かない

複数のものを並列して書きたくなる場面は多いですが、実は並列の表現には慎重になる必要があります。並列して書くときは、並列しているものがすべて同じ働き(同じ品詞、意味合いなど)をするように書かなくてはなりません。

<例文1>

NG安全、環境保全、燃費向上を目指して、新たに開発した自動車を発表します。

「環境を保全する」「燃費を向上する」と、「○○を××する」の形を短縮した熟語で二つが書かれているので、「安全」についても「安全面を強化する」を短縮した「安全面強化」とするなど、意味合いの同じ表現にして並列しなくてはなりません。

OK安全面強化、環境保全、燃費向上を目指して、新たに開発した自動車を発表します。

<例文2>

NG:店員に対する研修の実施表彰制度により、サービス向上に努めています。

「研修」「表彰制度」がそれぞれ「実施する」ものなので、「研修」の後ろにだけ「実施」がつくのはアンバランスな並列です。「実施」の位置を変えることで解決します。

OK:店員に対する研修や表彰制度の実施により、サービス向上に努めています。

4. 作業内容をリストアップする

思いつくままに文を書いたときに、書き出しと終わりが一致せず、おかしな文構造の文を書いてしまうことがあります。宙に浮いてしまっている言葉がないか、校正段階で必ず確認しましょう。文が長くなると特に起こりがちなので注意が必要です。

<例文>

NG:地元密着の当店にしかできない、お客様ご希望の商品を一個から取り寄せすることが可能です。

OK:地元密着の当店にしかできない、お客様ご希望の商品を一個から取り寄せできるサービスを実施しています。

5. 同じような意味をもつ言葉を重複して書かない

「頭痛が痛い」「馬から落馬する」というと笑い話のようですが、このように同じ意味を含む言葉を重複して書いてしまう例は意外と多くあります。重複表現は文が長くなり、読みにくくなる原因なので、避けるようにしましょう。

<例文>

NG:回収された衣類は、再び工業用の素材などに再生されます。

OK:回収された衣類は、工業用の素材などに再生されます。

6. 修飾語と、それがかかる言葉は近づける

修飾語と、それがかかる言葉(被修飾語)は、距離が離れると意味を取りづらくなります。読み手は、書かれた順に前から意味を理解していきますので、修飾語は、それがかかる言葉の直前にあるのが理想です。

<例文>

NG:当店では気軽に本格的なイタリアンを、リーズナブルな価格でお楽しみいただけます。

OK:当店では本格的なイタリアンを、リーズナブルな価格で気軽にお楽しみいただけます。

7. ひらがなと漢字の割合を7:3に近づける

下記のNGの文章を見るとわかるように、文章の中で漢字の割合が多くなると、かたく読みにくい印象を与えます。一般に、ひらがなと漢字の理想的な割合は7:3と言われています。「為」「事」「時」「等」といった言葉をひらがなに直したり、漢語を和語に変えたりすることで、漢字の割合を調整するとよいでしょう。

<例文>

NG:電車の遅延時は念の為携帯から連絡を入れる等、顧客に配慮した行動を宜しくお願い致します。

OK:電車が遅れたときは念のため携帯から連絡を入れるなど、顧客に配慮した行動をよろしくお願いいたします。

8. カタカナ語を多用しすぎない

日本語にうまく訳せない外来語を、カタカナ表記でそのまま使うことは一般的ですが、中には日本語で同じ意味を表す単語があるにも関わらず、わざわざカタカナ語を多用している文章もあります。カタカナ語の多用は、読み手が一つ一つ意味を考える必要があるうえ、内容が薄い印象を与えることもあるのでおすすめしません。

<例文>

NG:弊社のサービスは、発注から支払いまでの業務をワンストップでコーディネートできる画期的なソリューションです。

OK:弊社のサービスは、発注から支払いまでの業務を一元的に管理できる、画期的なものです。

9. 接続詞は正しい接続関係を表すように使う

接続詞には文と文をつなぎながら、その関係性を表す働きがあります。接続詞が表す文と文の関係性には、次のようなものがあります。

具体例を挙げる:たとえば
因果関係を示す:なぜなら、だから、したがって
対比を示す:しかし、ところで、一方
言い換えを表す:つまり、要するに
同様の内容の累加を表す:また、加えて、さらに

しかし、中には接続詞が表す因果関係と、実際の内容が逆になっていたり、対比なのに「また」でつなげられていたりと、接続詞が正しく使われていないケースは多いです。

読み手は接続詞を手掛かりに文章の構造や内容を予測して読むため、接続詞の使い方が誤っていると大いに混乱を招きます。

<例文>

NG:当店のサンドイッチに使用する野菜は、すべて契約農場で有機栽培されたものを使用しています。また、レタスも群馬県と長野県の契約農場から直送されたものを使用しています。

OK:当店のサンドイッチに使用する野菜は、すべて契約農場で有機栽培されたものを使用しています。例えば、レタスは群馬県と長野県の契約農場から直送されたものを使用しています。

10. 余計な表現はできる限り削る

言葉を多く使って書くほど丁寧で伝わりやすいと考えている人がいますが、実際には逆で、余計な表現をできる限りなくしたほうが、伝えたいことをまっすぐ伝えることができます。削っても意味の変わらない表現は、徹底的に削る意識を持ちましょう。

<例文>

NGこのように考えると、読書の量と学力には相関関係があると言えるのではないだろうか。

OKこう考えると、読書の量と学力には相関関係があると言える。

おわりに

以上、文章の読みやすさを向上するコツを10にまとめて紹介しました。

いずれも意識するだけですぐにできるものばかりです。ぜひ文章を書く際に取り入れてみてください。きっと文章の読みやすさが上がるはずです。