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「荒い」と「粗い」の意味と違い[使い分けのポイント解説]
「あらい」という語を漢字で表記する場合、主に「荒い」または「粗い」という漢字が使われます。どちらも似たような意味を持つため、使い分けで迷う場面も多いかと思います。
この記事では「荒い」と「粗い」の意味や違い、使い分けについて解説します。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)
・『広辞苑』(岩波書店)
・『角川新国語辞典』(KADOKAWA)
・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『goo辞書』>https://dictionary.goo.ne.jp/
1.「荒い」の意味と使い方
「荒い」の意味
「荒い」は、動きや勢いが激しいとき、性格や言動が乱暴であるとき、一般に想定される基準よりも度をこしているときに使用されます。「荒い」には、「荒々しい」という言葉と同様に、激しい、乱暴、あらっぽいというニュアンスが含まれます。
「荒い」の使い方・例文
波風が荒い → 波や風の動き・勢いが激しい
運転が荒い → 乱暴な運転
気性が荒い → あらっぽい性格
金遣いが荒い → お金の使い方が度をこしている
人使いが荒い → 人の扱いが乱暴、度をこしている
鼻息が荒い という表現もありますが、これは実際に鼻息が激しい場合にも使用しますが、主に慣用的表現として『強気で威勢がよい』『意気込みが激しい』様子を指す場合に使います。
「波が荒い」
「気性の荒い犬と熊」
「荒い」の特徴としては、言葉に何らかの動作、行動を伴うことです。また、それによって好ましくない影響を及ぼす印象を与えます。簡単に言うと「荒い」には、よくない印象やネガティブなイメージが伴います。
2.「粗い」の意味と使い方
「粗い」の意味
「粗い」は、ざらざらしてなめらかでない、細かくない、すき間が目立つ、大雑把である場合に使用されます。具体的には、物の表面がなめらかでなく見た目や質感がざらざらしているとき、物の作りや仕上げが丁寧でないとき、物事の細かいところまで配慮が行き届いていないときに使用されます。
「粗い」は、人や物の状態(形や性質がどのようであるか)に関して使われます。また「粗い」は、「荒い」と違って、激しさや乱暴などのニュアンスはありません。「荒い」には何らかの動作、行動が伴うのに対し、「粗い」は見た目や物事の結果について述べるため、動作、行動を伴いません。
「粗い」の使い方・例文
目の粗い網 → 網目が大きい。すきまが大きい
編み目が粗い → すきまの目立つ状態。細かくない
布地が粗い → 布地の表面がざらざらしている
手ざわりが粗い布 → なめらかでない。すべすべしていない
粒の粗い塩 → 粒が大きく細かくない。密でなくまばらである
画像の解像度が粗い→ 解像度が細かくない。画像の品質が低い
仕事が粗い → 仕事の仕上がりが大雑把、細部にわたって丁寧に仕上げられていない
粗い計画 → 十分に練られていない計画、細部にまで神経が行き届いていない計画
「目の粗いザル」
「ガーゼの手触りが粗い」
以上のように「粗い」は状態のことを指し、そのものを見たときや触れたとき、感じたときの様子を表します。
3.「荒い」と「粗い」の3つの特徴
前述した「荒い」と「粗い」の意味に加えて、以下の3つの特徴も覚えておくと、より両者の理解を深めることができます。
特徴 ①
動作、行動を伴うか?
前述したように「荒い」の言葉に含まれる、激しい、乱暴、あらっぽい、度をこしているといった様子から、「荒い」には何らかの動作、行動が伺えます。それゆえ「荒い」が使用される文には、動きのある様子を伴うのが特徴です。
一方「粗い」は、人や物事の状態(形や性質がどのようであるか)に関して使われます。単にそのもののありさまを表すため、動きのない状態に使われます。
「荒い」と「粗い」には、「動」と「静」の様子を表す対照的な特徴があります。
特徴 ②
対義語に置き換えて意味が通じるか?
「荒い」と「粗い」のどっちの漢字を使えばいいか判断が難しい場合は、対義語に置き換えるとわかりやすくなります。
「荒い」の対義語 ⇒ 穏やか … 動きが静かで落ち着いている状態であること
「粗い」の対義語 ⇒ 細かい … 非常に小さく、細部まで丁寧であること
「波があらい」「解像度があらい」、
どっちの漢字を使えばいいかわからない……
→ 対義語に置き換えてみる
「波があらい」 → ◯ 波が穏やか or ✕ 波が細かい
⇒ 穏やかは「荒い」の対義語なので、「波が荒い」が正解となります。
「解像度があらい」 → ✕ 解像度が穏やか or ◯ 解像度が細かい
⇒ 細かいは「粗い」の対義語なので、「解像度が粗い」となります。
特徴 ③
好ましくない内容か、好ましい内容か?
「荒い」の言葉は、好ましくない物事に対して使用されることが多く、「○○が荒い」「荒い○○」とした場合、大抵よくない感情や結果が想定されます。
一方「粗い」は、単純に状態や事実だけを示すため、好ましい内容で使用されることも少なくありません。
たとえば、
「この料理には、粒の粗い塩のほうが合う。」
「このザルは目が細かすぎるので、もっと目の粗いものをください。」
「最初は、目の粗いサンドペーパーで磨いたほうがいい。」
おわりに
以上、「荒い」と「粗い」の意味や違いについて紹介しました。
「荒い」と「粗い」の違いは、両者の言葉の持つニュアンスを理解しておくと使い分けで迷うこともありません。前述した3つの特徴もあわせて意味の理解を深めるのにお役立てください。