文章校正で注意すべき典型的なミス|文法・語句・ファクトの整合性の練習問題

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文章校正で注意すべき典型的なミス|文法・語句・ファクトの整合性の練習問題

以下の文章【A】~【C】の中には、校正の観点から指摘を出すべきポイントが含まれています。いくつ見つけることができるか、校正してみてください。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

日本大百科全書(ニッポニカ)、デジタル大辞泉、共同通信ニュース用語解説 「レアメタル」
・共同通信ニュース用語解説 「オープンAI」
・デジタル大辞泉 「大規模言語モデル」
・日経クロステック「『一夜にして世界が変わった』生成AI巡る技術競争が勃発」
・日本大百科全書(ニッポニカ)、デジタル大辞泉 「花言葉」
・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクジュソウ」

【文章A】主述のねじれ・語句の誤用

レアメタルとは、産出量が少ないが、工業的に有用とされる金属のことをレアメタルという。バナジウムやコバルト、ヘリウム、ニッケルなどがある。特定の国や地域に遍在しているものが多く、日本でははほとんどすべてを輸入に依存している。リチウムイオン電池や半導体の生産にも不可欠であるため、今後ますます需要が減少していくことが予想され、安定的な確保が課題となっている。

間違い箇所

レアメタルとは、産出量が少ないが、工業的に有用とされる金属のことをレアメタルという。バナジウムやコバルト、ヘリウム、ニッケルなどがある。特定の国や地域に遍在しているものが多く、日本ではほとんどすべてを輸入に依存している。リチウムイオン電池や半導体の生産にも不可欠であるため、今後ますます需要が減少していくことが予想され、安定的な確保が課題となっている。

解説

①主述のねじれ
「レアメタルとは~レアメタルという」となっており、主語と述語が対応していません。

②「ヘリウム」はレアメタルの例として不適切
「ヘリウム」は「希ガス」と呼ばれる気体であり、金属ではないので、レアメタルには含まれないと判断できます。

③「遍在」→「偏在」
「遍在」=広くどこにでも存在すること ですが、直前に「特定の国や地域」とあることから、ここは「偏在」=偏って存在すること のほうが適切です。いずれも読みが「へんざい」で、字の形も似ているので、特に間違いやすい語のひとつです。

④「日本ではは」の「は」が連続
ひらがなやカタカナが連続する箇所は脱字や衍字(不必要な字)が生じやすいので、1文字ずつ注意して読みましょう。

⑤「減少」→「増大」など
前後の文脈より、ここは需要が「減る」のではなく「増える」が自然です。

【文章B】ファクトと表記を同時に確認する

2022年11月、アメリカのOpenAI社が対話型AI「ChatGPT」を発表した。ChatGPTは人間のような自然な対話ができることが話題となって、2ヵ月後の1月には日本のユーザー数が1億人を突破した。このような自然な対話を可能にしているのは、「大規模言語モデル」という技術である。大規模言語モデルには、チャットGTPに使われている「GPT」(ジーピーティー)シリーズのほか、グーグル社の「BERT」(ラマ)、メタ社の「LLaMa」(バート)などがある。

間違い箇所

2022年11月、アメリカのOpenAI社が対話型AI「ChatGPT」を発表した。ChatGPTは人間のような自然な対話ができることが話題となって、2ヵ月後の1月には日本のユーザー数が1億人を突破した。このような自然な対話を可能にしているのは、「大規模言語モデル」という技術である。大規模言語モデルには、チャットGTPに使われている「GPT」(ジーピーティー)シリーズのほか、グーグル社の「BERT」(ラマ)、メタ社の「LLaMa」(バート)などがある。

解説

①「2023年」1月
前の文の「2022年」から年が変わるので、明記したほうがよいでしょう。今回の例文では直前に「2ヵ月後」とあるため、翌2023年だと読み取ることができますが、そうした記載がない場合は誤読されるおそれもあります。

②「日本のユーザー数」→「世界のユーザー数」
日本の総人口が1億人強なので、日本のユーザーだけで1億人を超えるというのは多すぎると考えられます。ファクトチェック不要の案件であっても、常識的に考えて明らかにおかしい数字にはアラートを出しましょう。

③「チャットGTP」→「ChatGPT」
多出にそろえて「チャット」→「Chat」とすることに気を取られて、後半が「GTP」となっていることを見落とさなかったでしょうか。近接して複数の間違いがある場合、1つを見つけると他のものを見落としがちになるので、油断しないことが大切です。

④「BERT」(ラマ)・「LLaMa」(バート)→「BERT」(バート)・「LLaMa」(ラマ)
かっこ内の読みの表記が入れ替わっています。アルファベットであっても英語読みであるとは限りませんが、「どう見てもそうは読めないのではないか」と思われるときは疑ってみる必要があります。

【文章C】文章だけではない記号のミス

「花言葉」をご存じでしょうか。バラは「愛情」、ユリは「純潔などが有名ですが、実は世界共通で定められているものではなく、国によって異なるものも多いです。たとえば、早春に黄色い花をつけるフクジュソウは日本では正月を祝う飾りとして用いられ、花言葉は「しあわせを招く」とされます。しかし西洋ではこの花は不吉なものとされ、花言葉は「悲しき思い出」です。花言葉はこのように、歴史や文化的背景などと密接な関係を持つ奥深いものなのです。

間違い箇所

「花言葉」をご存じでしょうか。バラは「愛情」、ユリは「純潔などが有名ですが、実は世界共通で定められているものではなく、国によって異なるものも多いです。たとえば、早春に黄色い花をつけるフクジュソウは日本では正月を祝う飾りとして用いられ、花言葉は「しあわせを招く」とされます。しかし西洋ではこの花は不吉なものとされ、花言葉は「悲しき思い出」です。花言葉はこのように、歴史や文化的背景などと密接な関係を持つ奥深いものなのです。

解説

①「純潔 →「純潔」
起こしのかぎかっこのみになっています。直前に「バラは『愛情』」とあるので、そちらにそろえる形で閉じるかぎかっこを入れるのがよいでしょう。

おわりに

【A】【B】の文章には校正として指摘すべき点が複数ありましたが、【C】で必ず指摘すべき点は1か所のみでした。

実際の校正作業では、指摘すべき点の総数や、そもそも指摘すべき点があるのかどうかは分かりません。ただし、校正者としてはある程度の間違いは必ずあるという前提で読むので、出た指摘の数が極端に少ないと不安になります。自分の見落としを疑って【C】の文章を何度も読み直した人は、校正者の素質があるかもしれません。