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句読点の使い方[句点と読点の使用方法を例文で詳しく解説]
「文章を正確に伝える」「読みやすい文章を書く」ために重要な役割を果たすのが句読点です。
単純に、読点はテン、句点はマルとも呼ばれます。
この句読点の使い方には指針となるようなものはあっても、明確な使い方を示すルールはありません。特に読点は入れても入れなくても文意が通じることも多く、使用する人によってバラつきも多いです。
ただ、読点を何となくで使っていては、文章が読みにくくなったり伝えたい内容が読者にずれて伝わったりすることがあります。
今回は、正確に、そして読みやすい文章を書くための句読点の使い方について紹介していきます。
読点(、)の使い方
まずは、読点を打つと読みやすくなる8つの場面を紹介したいと思います。
1.長い主語のあとに打つ
2.長い目的語のあとに打つ
3.「で」がつくときに打つ
4.テンを打たないと、文の意味が誤解されるときに打つ
5.文章の切れ目をはっきりさせたいときに打つ
6.セリフ、引用、感動詞のあとに打つ
7.前後の文の意味が対立的な関係性になるときに打つ
8.並列的に語句を並べて書くときに打つ
以降は、例文を交えて読点を打つタイミングを紹介していきます。読点を打つ前と後で文章の読みやすさがどのように変わるのか考えながら読んでみてください。
1. 長い主語のあとに
▼ 長い主語のあとに打つ
主語が長くなると、どうしても文章に一呼吸がおきにくく、読みにくい文章になります。「主語が長い」と思ったら読点を打つタイミングです。
例1)
✕ ボランティア活動に参加した人の多くは関東からの来訪者だ。
○ ボランティア活動に参加した人の多くは、関東からの来訪者だ。
例2)
✕ 美味しい酒を求めて100か国以上の世界を歩いてきたA氏が日本橋でクラフトビールを販売し始めた。
○ 美味しい酒を求めて、100か国以上の世界を歩いてきたA氏が、日本橋でクラフトビールを販売し始めた。
2. 長い目的語のあとに
▼ 長い目的語のあとに打つ
長い主語のときと似ていますが、目的語が長くなってしまったときも、読点を打つとぐっと文章が読みやすくなります。
例)
✕ 彼は秒速30m以上の風が吹きつける稜線をひたすらに歩き続けた。
○ 彼は秒速30m以上の風が吹きつける稜線を、ひたすらに歩き続けた。
3.「で」がつくときに
▼ 「で」がつくときに打つ
「で」がつくときに読点を打つと文章が読みやすくなります。「で」という言葉は、修飾語が重なるときや、「〜なので」といった理由を説明するときなどによく出てきます。
例)
✕ 彼は、聡明で誠実で誰よりも私に優しかった。
○ 彼は、聡明で、誠実で、誰よりも私に優しかった。
この文の場合、読点を打たないと修飾語が連続していて、読むスピードが早くなってしまうため、修飾語が頭に入ってきません。
そこで「、」を打ち間をおくことで、修飾語がより頭にすっと入ってきます。また読点を打つことで、彼の1つ1つの性格がより強調されるように感じます。強調したいときにも読点は効果的です。
例)
✕ 金曜日は居酒屋に行くサラリーマンが多いので夜は酔っ払いに気を付けたい。
○ 金曜日は居酒屋に行くサラリーマンが多いので、夜は酔っ払いに気を付けたい。
4. テンを打たないと文の意味が誤解されるとき
▼ テンを打たないと文の意味が誤解されるときに打つ
次のAとBの文をそれぞれ読み比べてみてください。どんな違いがあるかわかりますか。
A:私は病後の静養中に、栗本薫のペンネームで書かれた中島梓のSF小説を耽読した。
B:私は、病後の静養中に栗本薫のペンネームで書かれた中島梓のSF小説を、耽読した。
Aは、「私」が病後の静養中に、小説を読んだという意味になります。一方、Bでは「中島梓」が病後の静養中に書いた小説、という意味になります。
「、」の位置によって、「私」と「中島梓」のどちらが静養中だったのか意味が変わってきてしまいます。このように、読点の位置によって文章の意味が変わってしまうケースもあるので注意しましょう。
・他にも点の有る無しによって意味合いが異なる文があります。
例1)
よく晴れた夜、空を仰ぐと、何だか心が落ち着く。
よく晴れた夜空を仰ぐと、何だか心が落ち着く。
例2)
実はその、外でもありません……。
実はその外でもありません……。
5. 文章の切れ目をはっきりさせたいときに
▼ 文章の切れ目をはっきりさせたいときに打つ
次の文は「好き」「飲む」「書く」といった、動詞が多く含まれる長い文章です。こんなときは、動詞を一つの区切りとして読点を打ちます。
迷ったときは20字程度の感覚で読点を打つと、より読みやすくなります。
例)
✕ 好きな喫茶店でコーヒーを飲みながら自分の思いをつらつらとノートに書くことが僕の一番の幸せだ。
○ 好きな喫茶店でコーヒーを飲みながら、自分の思いをつらつらとノートに書くことが、僕の一番の幸せだ。
6. セリフ、引用、感動詞のあとに
▼ セリフ、引用、感動詞のあとに打つ
セリフや感動詞のあとに読点を打てば、読者に「間」が与えられ臨場感をもてます。
A「ねえ聞いてる?」
B「ねえ、聞いてる?」
読点のあるBのほうが呼びかけている感じがあり、実際に話している感覚がより伝わってきます。
A:雪子は、10時半にここにくると言っていた。
B:雪子は、10時半にここにくる、と言っていた。
Bでは、雪子のセリフが視覚的にはっきりしていて読みやすいです。またセリフや強調したい部分には、読点でなく「カッコ」を使って表したほうがわかりやすいときもあります。
7. 前後の文の意味が対立的な関係性になるときに
▼ 前後の文の意味が対立的な関係性になるときに打つ
読点を入れることで「間」が生まれるので、対立関係がより強調されます。
例)
彼はA案に賛成し、彼女はA案に反対した。
8. 並列的に語句を並べて書くときに
▼ 並列的に語句を並べて書くときに打つ
中黒と同じような役割で使用します。ただ前後の文で読点を使用しているのであれば、読点が多くなり見栄えがよくありません。そういう場合は、中黒に置き換えたほうが文章がすきっりして読みやすくなります。
読点 → まつ、すぎ、ひのき、けやきなど
中黒 → まつ・すぎ・ひのき・けやきなど
読点の使い方のポイント
前述の例のように読点の使い方には、ある程度共通認識みたいなルールが存在します。
読者に誤解を招く恐れのある箇所には積極的に点を打つべきですが、それ以外の場合には正解と言えるものがありません。
読点が少なすぎても、文章が読みづらくなります。逆に読点が多すぎても、文章が途切れ途切れな感じがして見栄えが悪くなります。
適度な読点の位置や個数といっても、読み手の感覚にも左右されます。何を基準にして打てばいいか迷うケースもあると思います。
まずは、自分なりに「ここで点を打ったほうがわかりやすいかも」というときは、とりあえず打ってみて前後の文も含めて読み返します。
「あったほうが良かったな」「やっぱりなくてもいいや」と思考錯誤し、その繰り返しによって読点をうまく使えるようになってきます。
句点(。)の使い方
次に句点の使い方について紹介します。句点の使い方は読点の使い方よりも単純です。
1. 句点は必ず文末に打つ
✕ 近年、ファスティングは健康に良いことばかりだ。と言われている。
○ 近年、ファスティングは健康に良いことばかりだ、と言われている。
○ 近年「ファスティングは健康に良いことばかりだ」と言われている。
○ 近年、ファスティングは健康に良いことばかりだと言われている。
✕のように、事実の記述のあとに句点を打つのは誤りです。文が断定で終わるのでうっかり打ってしまうことがあります。
句点は文の終わりを表すものなので、文の途中に打たないように注意します。
2番目や3番目の文のように、文の途中で句点を打つかわりに、「カッコ」や「、」を使用しても読みやすい文章になります。
2. 句点を打つ? 打たない?
1. 三点リーダーで文が終わるときは、原則句点を打ちます。
例) うっかりしていた……。
ただし、打たない文もよく見かけます。
例)うっかりしていた……
この辺りは、文章作成前にあらかじめルール決めしておく必要があります。
2.「見出し」「キャプション」「箇条書き」などには、句点を打ったり打たなかったりすることが多いです。どちらでもいいわけですが、一つの誌面内ではどちらかに統一しておくのが基本です。
3.「?」と「!」のあとには句点を打ちません。あとに文を続けたい場合は、1文字分スペースを空けて文をつなげます。
おわりに
句読点、特に読点は「書く」経験を積み重ねることで、自然と読みやすい打ち方が身についていきます。
今回紹介した句読点の打ち方を踏まえて、使い方を意識しながら文章を書いていると徐々に自分なりの型が出来上がってきます。
大切なことは、文章のリズムが良くなるよう、何度も読み返し推敲していくことです。読み返して、何か文意が頭に入ってこない、どこかでつまずくような場合は、一つの文が長かったり文の切れ目が悪かったりしている可能性があります。
一つの文が長くなるようであれば、読点を入れる、もしくは句点で区切って文を短くするなどの工夫が必要になってきます。
例文の一部は、以下の書籍・サイトから引用いたしました。
・『文章の新教室』_ 佐久間保明:著
・『くぎり符号の使ひ方』_ 文化庁
句読点の使い方は、文化庁のHPにある「くぎり符号の使い方(PDF)」に記載されています。無料でダウンロードできます。やや現代的でない箇所もありますが、句読点の使い方の原則を知るには役立ちます。例文も紹介されているので勉強するには最適です。
▼ くぎり符号の使ひ方
・句点(マル)
・読点(テン)