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デジタル校正って本当のところどうなの?
結論からいうと、会社や媒体にハマれば使えます。
使えるといっても部分的にですが。
この「部分的」にを、どう捉えるかでデジタル校正の見方は変わってきますが、個人的な感想ではデジタル校正は使えます。
校正する媒体や企業との「相性」もあるので、使えないという人がいても当然だと思います。ただ、デジタル校正に過剰な期待をよせていると必ず失敗します。
● 成功するには、
機械を人間に合わせるのではなく、
機械に人間が合わせることです。
デジタル校正が「苦手な部分」と「得意な部分」を理解して、うまく自社の機能として組み込めるかがカギになります。
そのためには、校正のフローの見直しも必要になってきます。フローの見直しは、校正だけでなく製作側もです。先に「相性」と書きましたが、これはフローの見直しを柔軟に受け入れられる企業風土であるかどうかということです。
導入コストが心配かもしれませんが、うまく活用できれば初期費用などすぐに回収できます。
単純な作業、あらかじめ手順が決まっているもの、量の多いものは、デジタル校正の得意とするところです。そういった作業をデジタル校正に任れば、労力もコストもカットできることは間違いありません。
【※ここでのデジタル校正は、デジタルツールを使用してのデジタル校正のことを言っています】
1.デジタル検版(通称:デジ検)
これは、校正時のパタパタ(あおり校正、めくり合わせ)を機械がやってくれるものです。オンライン校正システムでは、標準で備わっている機能です。
従来、校正者が原稿とゲラを重ね合わせ “パタパタ” と音を立てながら、素早くめくり合わせをして、目に残る残像で、原稿と校正ゲラとの違いを見つけていた作業です。
この作業を機械が担ってくれます。
【関連記事】
≫ 校正のパタパタ(あおり校正)[動画]
下の『Proof Checker PRO』を確認いただけると、デジタル検版の仕組みが分かりやすいかと思います。
【株式会社Too】
≫ デジタル校正ソフトウェア「Proof Checker PRO」
動画で解説されているため、デジタル検版の仕組みをイメージしやすいかと思います。
※個人的に、このProof Checker PROは、ブログUP時点で最も優れたソフトだと思っています。
このソフトでは、修正前のPDFと修正後のPDFを比較しています。
原稿の指示により修正されているところ(修正前のPDFと修正後のPDFの違うカ所)が、赤く点滅するなどして表示されます。
それゆえ、原稿で修正指示が入っていないカ所に赤い点滅表示があれば、オペレータが誤って触ってしまったなど、予期せぬミスがあったことになります。
デジタル検版のおかげで、パタパタ作業をせずに、赤く点滅表示されたところ(修正されたところ)だけを校正すればいいだけになります。これにより、校正者の作業を大幅に省力化できることになります。
▼ メリット
デジタル検版は、修正量が少なく大量にページがあるときに効果を発揮します。
例えば、1ページに2~3カ所程度の赤字で、100ページほどの校正作業(照合+パタパタ作業)でしたら、半日あれば一人で十分できます。
機械がやってくれますので、何百ページあろうとも疲労による集中力の低下もありません。
最終工程の赤字の少なくなった段階でよく用いられています。
▼ デメリット
修正前と修正後の違いが多い場合には不向きです。
例えば、レイアウトが大幅に変更された場合や修正量が多いなどの場合は、修正前のPDFと修正後のPDFの違うカ所が多く、ページ全体が赤く点滅表示されます。
そのため、修正したカ所がどこか分かりづらいので、修正量がたくさんある初校などでは使用されないことが多いです。
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ただし、デジタル検版は、細かなカスタマイズもでき精度もかなり向上してきていますので、いずれは使える場面が増えてくると思います。
2.オンライン校正
オンライン校正では、原稿管理を一元化でき、制作フロー全体を見直して効率化することができます。直接的というよりも、間接的に校正の負荷を軽減してくれます。
オンライン上で原稿作成・確認・進捗管理ができます。上記のデジタル検版機能も付いているものも多いです。
顧客担当が多い、制作にの関与者が多い場合には有効です。制作フロー全体にかかわるので、マンパワーに頼る会社などで相性がよくないかもしれません。
≫ APROOVE(アプルーブ)
≫ Brushup
3.文章校正支援ソフト
文章校正支援ソフトは、無料のソフトから有料のものまで豊富にあります。身近なソフトであるWordにも校閲の支援機能がついています。
校正者やライターなどは、デジタル校正ソフトと聞くと、この手のソフトをイメージする方が多いかもしれません。
文章の誤字脱字・表記ゆれなどは、人の目だけで確認するよりも先にデータ上で潰しておく方が、校正時の負担が軽減されます。そこで、校正支援ソフトが役立ちます。
校正支援ソフトのメリットは、カスタマイズすることによって精度を上げることができることです。
固有名詞やあらかじめ決められている表記ルール、文章の体裁などをソフトに登録しておけば、それらの間違いも高い精度で指摘してくれます。特定の業界に特化している媒体なら、校正支援ソフトの導入は有効です。
1.文章校正支援ツール Just Right!6 Pro
※体験版あり
2.日本語校正支援ソフトPress Term®
※体験版あり
3.AI editor(AI・機械学習の技術を活用した文章校閲ソリューション)
※動画解説あり
【関連記事】≫ 校正の無料ツールの比較結果[適切な使い方とおすすめ紹介]
4.自動組版
自動組版はデジタル校正の部類ではないですが、これにより校正作業の大幅な負荷軽減になっているという点で紹介したいと思います。
自動組版は、DTPをやられている方ならほぼ皆さんご存じだと思います。校正者でも耳にしたことがある人も多いと思います。それほど、広く知られており導入している会社も多いです。
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自動組版は、大量の商品情報を、多数のページに掲載するのに向いています。あらかじめ、DTPで誌面のレイアウトやフォーマットを細かく設定しておくと、指定された箇所にデータ(情報)を一瞬で全ページに流し込んでくれます。
▼ メリット
DTP作業の効率化はもちろん、人の手が介在しないので、コピペミスや思わぬところを削除してしまったということはありません。
校正者がすべきことは、ちゃんと情報が流し込まれているかどうか確認をするだけです。テキストでしたら、文頭と文末だけの確認になります。実際には、文頭文末だけとはいきませんが、かなりの時間が削減できます。
全ての媒体が自動組版で製作すればいいのかというとそうでもなく、便利なものには制約もあります。
▼ デメリット
所定の位置に、所定の情報を入れるため、あらかじめレイアウトやフォーマットを細かく決めておかなくてはいけません。途中からのデザイン変更や、ファーマットにない情報の追加などは基本出来ません。もちろん情報量も制限されます。
修正は、大元の情報が集約されたデータベースの情報を修正します。その修正された情報を、また一から流し込み、校正し直すということになります。
5.索引(INDEX)
カタログや教科書などの巻末によく見られる、50音順や品名順などの索引です。索引は、厚めのカタログなどでは必須の情報になります。ページ数が多くなるにつれ、索引の情報量も増えていきます。
例えば、索引に掲載したい情報を「商品名」と「金額」と「ページ数」とします。
商品名に「A」、金額に「B」、ページ数に「C」というような具合で、DTP側でページ作成時にスタイルを充てておきます(実際には、A、B、Cではありませんが)。
ページ作成後に、「A」と「B」と「C」の情報を抜き出すという指示をします。
そうすれば、作成した全ページから「商品名」と「金額」と「ページ数」だけを抜き出すことが出来ます。
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抜き出す精度は100%ではありませんが、かなり高い精度の索引データができあがります。
そこから、作成したデータをExcelにします。そのExcelデータを校正が見やすいように、ページ順に情報をソートしたり、列の並びを変えたりして加工します。
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手順の説明は大分簡略化しましたが、InDesignでスタイルを充てて、任意の情報を抜き出すというやり方でデータを作成し、そのデータをExcel化することで、校正に3日かかる分量のものでも、1日程度でできたりします。
6.カレンダーの校正
カレンダーは、玉(日付)のマスターデータを作ります。マスターをもとに製作するため、これが間違っていると、これを基に作ったもの全てが間違いになります。
そのため、このマスターデータは、何重にも校正します。情報はフルに載せます。六曜や曜日の日本語表記、英語表記なども必要に応じて作成します。最近では、カレンダーの玉のデータを瞬間で作成できる専用のソフトもあります。
こちらは、カレンダーの業務量にもよりますが、数が少なければマスターデータを作成する必要はないかもしれません。
毎年5件以上カレンダーの製作や校正をしているというのでしたら、製作管理者と相談して、カレンダー作成の際に使う玉のマスターデータを作り、それをもとにして作成した方が、効率も品質もよくなります。
特に、カレンダー製作時期は、集中しますので事前に準備できるものはしておいたほうがあとあと楽できます。
▼ Digital Works Co. ≫ AutomaticDiary
動画解説:youtube ≫ https://youtu.be/lBUfij53QDI
【2019年のカレンダー製作について】
この年のカレンダー製作は、関与者の頭をもっとも悩ませたかもしれません。結果的に、GWは10連休となりましたが、 祝日の未定日がなかなか決まらなかったからです。
納期との兼ね合いで、祝日に関しては、独自のルールで作成した会社も多くあると思います。
そのため、2019年のカレンダーをいくつか見比べてみたら、GWの祝日表記が揺れているのに気づくと思います。
参照≫ 全国カレンダー出版協同組合連合会
デジタル校正の知識は校正にも必要
デジタル校正は、
・効率化
・コスト圧縮
・スピード対応
・ヒューマンエラーの除去
・校正の負荷軽減
などのニーズから生まれたものです。
実際の運用は、校正者でなく製作サイドになる確率が高いです。
ですが、『校正作業のどの工程をデジタルツールで置き換えられるか?』は、現場の校正者が一番よく理解していることです。
そのため、これからの校正者は『機械で何が出来るのか? 何が出来ないのか?』を知り、製作全体の効率化にも努めてゆくべきでしょう。