校正記号:移動(イドウ)から起こる間違い
▼ 移動の校正記号
移動の校正記号は次のように表します。
・右方向に移動させたい場合(→)
・下方向に移動させたい場合(↓)
一文字や行全体を移動させたいとき、段落の頭が字下げになっていないときなどに使われます。また、文字だけでなく、イラストや図表などにも移動の校正記号が使われます。校正の現場ではよく使う校正記号の一つです。
校正記号の「トル」と同様、「移動」することによって、
・全体のバランスが悪くなり、レイアウトを再調整する必要が出てくる
・移動したことによって、写真とそのキャプションの位置が離れてしまう
など、様々な不具合が起こることが考えられます。
単純に移動した部分だけでなく、他にも影響してくる可能性があるため、全体への影響も注意しつつ確認していく必要があります。
ここでは、移動に潜む大きな罠をみていきたいと思います。
1. 移動から起こる間違い[文字編]
▼ 文字の例
・スミベタ丸の白抜き数字を例にとって見ていきたいと思います。
・この数字は、次のように「スミベタの丸」と「白の数字」の2つの組み合わせでできています。
(※わかりやすくするため、バックにグレーのアミを敷いています。)
・丸と数字の2つを重ねて作成するわけですが、わかやりやすいように徐々に重ね合わせてみます。
これでできあがりです。
この2つのオブジェクト(丸と数字)を「グループ化」の設定により、1つのオブジェクトとして扱うことができます。
【注意】標準でスミベタ丸の白抜き数字の記号があるなら、これから説明するような事例は発生しません。
ここで、グループ化の設定を忘れていると、以下のような不具合が起こる可能性があります。
1. 『❶あいうえおかきくけこ』を下に移動させたい場合。
2. 下に移動させる校正指示を入れます。
このときに、グループ化の設定がされていないと……
3. 白抜き数字だけが、元の位置に残ってしまうことがあります。
これは、グループ化の設定を忘れ、スミベタの丸と文章だけを選択して移動したために、数字だけが取り残されてしまったということです。数字も選択されていれば、ちゃんと移動されていました。
ここでは、バックにグレーのアミが敷いているので、数字が移動されていないことがすぐにわかりますが、バックに色が何もついていない状態だと……
4. 次のように何も見えません。
5. この場合、次のように「数字を入レル」という赤字だけでは指示不足になります。
「1の数字はどこに行ったんだろう……」と推測する必要が出てきます。
<結果>
ここでは、わかりやすい事例を取りあげましたが、実際はこの白抜き数字が、スミベタの丸の背面に隠れていたり、別の位置に移動していたりすることもあります。単純に元の場所に数字が残っているとは限りません。
『あれ、数字が抜けてる!』と思い、赤字を入れるのではなく、
『数字はどこに消えた?』と、視点を変えることが大切です。
グループ化できているかどうかは、校正では判断できませんが、こういうケースもあるということを覚えておきましょう。図面やイラストなどでもよく起こる現象です。
2. 移動から起こる間違い[イラスト編]
▼ イラストの例
・このような簡単なイラストでも、複数のパーツから成り立っています。
・選択してみると、パーツごとに四角形が表示されています。
これぐらい多くのパーツが使われています。
・このイラストを下方向に移動させたいときに、
グループ化されておらず、頬っぺたを選択し忘れてしまった場合。
・頬っぺただけが元の位置に残されたまま、移動されることになります。
イラストなどはレイアウト変更等で移動されることが多いです。そのときには、漠然と見るのではなく、各パーツにも注意して見る必要があります。
▼ 日本地図の例
日本地図のイラストを移動させたときにもよく起こる間違いがあります。
地図中央の琵琶湖だけが移動されずに、ズレた状態になる間違いです。琵琶湖だけがズレるというケースは、実際に何度も見たことがあります。移動して一部分だけズレるということは、グループ化されていなかったということになります。
おわりに
複数からなるオブジェクトにグループ化の設定がされているかどうかは、校正では判断できません。そのため、イラストなどの移動の場合は、パッと見て移動していると安心するのではなく、めくり合わせ等で細部までしっかり確認する必要があります。