ドラマ校閲ガールを校正者が観た感想と疑問[第1話だけ視聴]

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ドラマ校閲ガールを校正者が観た感想と疑問[第1話だけ視聴]

校閲ガール(第1話)

第1話 地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子「なんで私が校閲に?オシャレ校閲ガールが大暴れ!」

「校閲」の仕事に関わることになった河野悦子(石原さとみ)が、持ち前の探究心でさまざまな騒動を巻き起こす。ファッション誌の編集者を目指して景凡社の採用試験を受けた悦子は、7回目の試験でようやく採用される。意気揚々と出社した悦子だが、配属されたのは文章の誤りなどをチェックする校閲部だった。

【出典:ザテレビジョン】

放送当時を振り返る

校閲ガールは、今から約三年前の2016年10月からの放送でしたが、当時は全く観ることがありませんでした。ですが、年末年始に持て余した時間と第一話が無料だったという単純な理由で、三年以上経った今、このドラマを観たわけです。

放送当時、一応ドラマの存在は知っていましたが、

  • ネット上での現役の校正者からの評判が悪いという噂
  • 放送時期が仕事の繁忙期だったこと
  • そもそもドラマを観る習慣がなかったこと(←これが一番大きな要因)

という理由が重なり観ることはなかったわけです。

今改めて、ネットでドラマの評判を検索してみると、
「石原さとみの洋服がかわいい」
「ファッションの参考になる」
「校閲っていう仕事があったんだ」
などのポジティブな意見が結構あります。

ドラマ終了時から数年経った今でも、校正の求人広告を観ると『あのドラマで有名な~』とか『地味な~』とかの言葉が使われています。意外と校正界隈は、校閲ガールの恩恵にあずかっていて、かなり影響力があったのだと思います。

ドラマを観た感想を先にいうと、

  •  ああいう校正の現場もあってもいいのかなということ
  •  主人公みたいなキャラの校正者も、今後は必要なのかもしれないということ
  •  自分だったら、ああいうキャラの後輩がいたらどう教えるだろうか?

など、いち校正者として実際の仕事に落とし込み色々と考えさせられるドラマでした。

※「校閲ガール」はHuluで観られます。2週間無料トライアルがあるので興味のある方はどうぞ。
Hulu公式サイト「校閲ガール」

ドラマを観た感想とツッコミどころ

1. 新入社員がいきなり校閲部へ

希望と異なる部署への配属はよくあることです。校閲の仕事も新人採用を行なっている会社もあり、新入社員が配属されることは特に問題はありません。

ただネット上で話題になっていたのが、簡単な漢字も知らないという人が校閲者としての適性があるかどうかということです。

正直、今の時代、漢字や言葉の言い回しなどは、後から勉強しても十分挽回できます。それだけデジタルツールが進化しています。要は間違いに対して言葉で説明できなくても、何らかの違和感を抱けるかどうかが校正者としてまず大切な適性です。

主人公の石原さとみの面接時、面接官の一人であった校閲部長の岸谷五朗は、ネクタイピンのくだりで、石原さとみにその適性があることを見抜いたのだと思います。

キラリと光るその洞察力で採用を決めたということは、人事において別に不思議なことではありません。面接や筆記試験でその人の能力など測れないのは人事が一番よく知っています。

また面接の際の発言で、かなり業界の事情もよく知っていたので、今後を見据えた人材として欲しかったのではないかと思いました。

もしかしたら、岸谷五朗自身の後継者にでも育成しようと考えていたのではないかと思ったりもしましたが、第一話だけしか観ていないのでそこは定かではありません。

2. 大御所作家の校閲をいきなり新人に任せるのか?

これは、校閲部長の岸谷五朗が重ね読み(ダブルチェック)すると言っていたので、経験を積ませるという意図があるなら全然問題ないでしょう。

かなり荒っぽい新人教育ですが、実際の校正現場ではもっと雑な新人教育もあるので、このような現場があってもあまりおかしいとは思えません。

3. 編集者が作家のもとへ校閲者を連れて行く

これはよくあります。校閲した人が、一番その内容を詳しく知っていて明確に説明できるわけですから、校閲者が出向くのがむしろ当然かもしれません。

実際に作家専属の校閲者もいるわけで何もおかしなことはないです。校正の現場では、作家だけでなく、クライアントのもとに校正者が行くこともプレゼンすることもあります。

4. 事実確認のためにわざわざ現場まで行く?

この場面は、実際の校閲者からかなりツッコミが入ったところでしょう。ドラマを観ていない当時の自分もこのシーンだけは知っていました。

個人的には、予算と納期、他の案件とのスケジュールの折り合いがつけば、これは問題ないのかなと思います。特に現場に実際に足を運ぶということは、時間の融通の利く新人時代にしかできないことなので、貴重な体験だとも思えます。

仕事の内容は違いますが、自分も実際に現場まで足を運んで校正をした経験が二度あります。他にも、実際にやっている人も知っています。自分の経験からは、この現場まで行くやり方を完全に否定はできないです。

ただ毎回毎回、何か引っかかるたびに逐一現場に行くのは問題でしょう。

余談

【余談】

校閲の指摘に対し、クライアント(このドラマでは作家)が「ママ」と言ったら「ママ」にするのは、業界では当然のことです。黒でもクライアントが白と言ったものは白になりえます。

ですが、校閲の指摘をジャッジする人も人間なので、そのジャッジに間違いはあります。校閲者も赤字を入れ間違うことや疑問出しを書き間違うことがあります。

石原さとみは、そこに疑問を抱き、猪突猛進になってしまったではないかと少し擁護してあげたいところです。

※ドラマをもう一度見直したら、ベストセラー作家の本に誤植があると、回りまわって校閲の責任になるかもしれないという自己保身なだけ(?)のようでした。

5. 一番ビックリしたこと

あの出版社の規模で、校閲部のあの人数(6人ぐらい)は少なすぎです。

もしかして書籍専属の校閲部? それにしても少なすぎです。
校閲は、ほとんど外注してるのかな?
と、色々疑問が湧いてきて驚いたのはこの部分ぐらいだけでした。

まぁドラマだから、あのぐらいの人数がちょうどいいんでしょうけど。

おわりに

あくまで第一話だけ観た感想ですが、ネット上の悪評は単なる噂でしかなかったのかなと思います。

第二話以降は有料だったので観ていませんが、テレビで再放送があれば続きを観てみたいといった感じです。今さらですが。

【追記】
校閲部が地下の暗い部屋にあったり、校閲者が眼鏡を掛けて几帳面な人だったりという古いイメージは、ちょっとやめて欲しいかなと思いました。海外の方が、日本人を忍者や侍とイメージするぐらい滑稽でしかありません。