図表(円グラフ)の校正[校正・校閲向け練習問題]
今回は、円グラフでよく見られる間違いを練習問題にしています。円グラフはあらゆる媒体で見られるものです。一度は校正したことがあるという方も多いと思います。
グラフでは予期せぬ間違いが起こりやすいので、全体をくまなく確認する必要があります。
1:練習問題 <問題>
▼ 問題
【円グラフ作成用のデータ】をもとにして、作成した【制作物】があります。
おかしな点を指摘してください。
【円グラフ作成用のデータ】
次のデータから、ABO式血液型割合の円グラフを作成。
ただし、Rh式は「+」と「-」をひとつにまとめる。
・日本のABO・Rh式血液型割合(人口比)
A+ | 39.80% |
B+ | 19.90% |
AB+ | 9.90% |
O+ | 29.90% |
A− | 0.20% |
B− | 0.10% |
AB− | 0.05% |
O− | 0.15% |
【出典元:Wikipedia Blood type distribution by country】
【制作物】
2:練習問題 <解答>
▼ 解答
1.「B」と「O」が逆になっている
2.グラフ内の数値の合計が「100.1%」になっている
3.円グラフの面積が数値と対応していない
3:練習問題 <解説>
▼ 解説
■ 1.「B」と「O」が逆になっている
・Bの合計:20%
B+ | 19.90% |
B− | 0.10% |
・Oの合計:30.05%
(グラフでは、「30.1%」となっているため小数第2位で四捨五入していることがわかります)
O+ | 29.90% |
O− | 0.15% |
【赤字を入れるときの注意点】
【例1】のように、数値を入れ替えてしまうと、
・ グラフ内の数値が、時計回りで降順にならない
・「B」と「O」のグラフの面積も修正することになる
この2つの理由で、赤字を入れるのは血液型のほうにするのが適切です(【例2】参照)。
【例1】
【例2】
■ 2.グラフ内の数値の合計が「100.1%」になっている
この0.1の誤差の原因は、元データのRh式「+」と「-」を合計する際、小数第2位を四捨五入したためです。
A+ | 39.80% |
B+ | 19.90% |
AB+ | 9.90% |
O+ | 29.90% |
A− | 0.20% |
B− | 0.10% |
AB− | 0.05% |
O− | 0.15% |
「AB− 0.05%」と「O− 0.15%」の2か所の「0.05」が「0.1」に繰り上がったため、誤差が生じたというわけです。
ただ、合計の数値が100を超えてしまうのは、特に間違いともいえません。
小数点以下を切り上げ/切り捨てしたことによって、数値の合計が100を越えたり割ったりしているグラフはよく見かけます。
これは、数値を丸め込むことによって、読み手にわかりやすくするという意図があります。
この場合、次のような注意書きをすることもあります。
『 構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない。』
【出典元:厚生労働省HP】
数値を丸め込んだ場合も誤差が生じる場合も、その旨の注意書きをしておくほうが望ましいですが、特に決まりがあるというわけではありません。
ただ、数値を丸め込むことによって、意図せずとも、読み手の印象を操作してしまうケースがあるので注意が必要です。
あくまで例ですが、
「49%」と「51%」の2つに数値がわかれていた場合、
「50%」と「50%」に数値を丸め込むと印象がガラリと変わります。
結果として問題の2の正解は、各社・各媒体のルールによるということになります。ただ、数値を調整するよりも、注意書きを明記しておくほうが賢明です。
■ 3.円グラフの面積が数値と対応していない
この手の間違いは、追加で修正したときによく起こるものです。
・左が誤り、右が正しいものです。
グラフの面積が違うと見た目の印象が、かなり変わってきます。特に【誤】の「Aの40%」は、数値以上のインパクトを受けてしまいます。
おわりに
円グラフは、数値で示すよりも読み手にイメージが伝わりやすいので、媒体限らず色々な場面で見られます。ですが、間違いがあれば、読み手に誤解を与えるインパクトも大きいです。
円グラフを校正する際は、分度器さえあれば微妙な面積の違いもすぐにわかります。グラフ関係の校正を頻繁にするというなら、持っておきたい文具の一つです。