素読み校正の勉強方法[校正のパターン化された間違いを知る]

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素読み校正の勉強方法[校正のパターン化された間違いを知る]

校正者は、多くの間違いに触れ経験を積むことで間違いを見つける嗅覚を培っていきます。それにより起こりうる多種多様な間違いにも対処できる力を身につけて行くことができます。

一方でパターン化された予測可能な間違いもあります。知識として持っているだけで誰でも見つけられる間違いです。

パターン化された間違いというのは、

  • このレイアウトだったら、ここに間違いが集中する 
  • こういう作りのものだったら、この間違いが多い
  • この単語が出てきたら、この部分も間違っている可能性が高い

というものです。校正ゲラを見てじっくり考えなくても予測できる間違いです。

校正は一から新鮮な目で見ることも大切ですが、間違いの可能性がある箇所は先に決め打ちで確認しておくことです。あらかじめわかり切った間違いを潰しておくことで、他の間違いに集中できます。

パターン化された間違いの例

次のような、とある一日のスケジュールはよく見られます。

InRed11月号

このスケジュールはファッション誌InRedに掲載されているもので、在宅勤務で働く女性のある一日のスケジュールを紹介したものです。※ページ中央左

InRed11月号
【出典:宝島社 InRed(インレッド)11月号_P.75】

このような一日のスケジュールは、「日程表」「タイムテーブル」「タイムスケジュール」などの表形式にしたものも多く見られます。書籍・雑誌・Webなど、媒体関係なく様々な場面で使用されます。

  • 社内報では、○○支社Aさんの一日のお仕事紹介として
  • 求人サイトでは、営業職の一日のスケジュールとして
  • 旅行雑誌では、観光プランの旅の日程表として
  • 大学の案内パンフでは、先輩の学生生活の一日として

媒体が変わってデザインや見せ方は違っても、起こる間違いはパターン化されてきます。

なぜなら、情報を構成する要素が「時間」と箇条書きにした「行動やタスク」に限定されているからです。自然と起こる間違いも似てきます。

1. 見ていくポイント(時間)

最初に確認するのは「時間の間隔」です。

 校正・校閲のよくある間違い

ここで起こりやすい間違いは次のようなものです。

【間違い例1】

・時間が極端に短い

 校正・校閲のよくある間違い

時間の短いものがあれば、「あれ?」と思うポイントです。基本的に誌面の一部で紹介されるスケジュールで、分刻みのスケジュールを載せることはありません。

時間の間隔が短いものがあれば、その時間内で該当する行動やタスク処理が可能かどうかを考えます。

上の例だと「5分で『身支度と家事』ができるかどうか」です。

[間違い例2]

・時間の間隔がおかしい

[1]
校正・校閲のよくある間違い

[2]
校正・校閲のよくある間違い

[1]の間違いの原因
同じものがダブルのは、コピペして制作しているとよく起こるミスです。コピペしたあとに、時間の部分を修正し忘れたということが考えられます。

[2]の間違いの原因
毎号掲載されるようなものは、前回のデータを流用して作り変えていくことがほとんどです。前号を作り替えていく過程で、この部分を直し忘れた(前回のデータが残ったまま)可能性があります。

[1][2]の例ともに、
単に手入力した際に打ち間違えたということも考えられます。また、支給されたテキストのデータ自体が間違っていたということや、追加の修正指示が入っておかしくなったということなど色々な要因を想定することができます。

ただ、間違いが起こる要因は様々でも
結果として、似たような間違いのパターンに集約されてきます。

2. 見ていくポイント(対義語)

スケジュールでは、対義語の出現率が高くなってきます。

・対義語とは?
 意味が反対となる語・意味が対照的になる語

そのため、対義語の一方が出てきたら対になる語を機械的に探していきます。

たとえば、
手紙の頭語に「拝啓」がくれば、まずは結語に正しいものが入っているか確認(敬具など)するような感じです。

起床 ⇔ 就寝

校正・校閲のよくある間違い

ここでは「起床」から始まり、起床の対義語である「就寝」で終わっています。

他にもセットで出現すべきものがあります。
「出社」から始まったのなら「退社」がどこかに必要です。
逆に「退社」があるなら「出社」も入っていなければいけません。

次の語もどちらか一方が出現すれば、もう一方がセットで出てくるものです。
----------------------
「出勤」なら「退勤」
「出発」なら「到着」
「開始」なら「終了」
「登校」なら「下校」
----------------------

表現が変わって出現することもあります。
たとえば、
「出勤」なら「電車で職場まで」
「登校」なら「友達と一緒に学校へ」など。

対義語というよりも、行動に対する結果といったほうがわかりやすいかもしれません。
行動があればその結果を探す。結果があれば、それに至った行動があるかを探します。

送る ⇔ 迎える

校正・校閲のよくある間違い

「子どもたちを保育園へ送る」⇔「保育園へお迎え」

この部分を校正的な見方をすれば、
『8:45に子どもたちを保育園へ送る、それが45分かかって、9:30から仕事開始……』
ではなくて、
『8:45に、子どもたちを保育園へ送る』と『送る』の語が出てきた時点で、これとセットになる語を探していきます。

開始 ⇔ 終了

校正・校閲のよくある間違い  

「開始」がくれば「終了」が必要です。
開」も「開」があってこそ成り立つものです。「再開」だけがいきなり出てくることはありません。

その他

校正・校閲のよくある間違い

「朝食作り」「夕食の仕込み」「夕食の準備」なども行動に対しての結果が必要になってきます。
・「朝食作り」⇒「朝食」
・「夕食の仕込み」⇒「夕食の準備」⇒「夕食」

3. 見ていくポイント(必須の項目)

必須の項目

校正・校閲のよくある間違い

仕事の業務の流れなど、人の行動スケジュールを表しているなら必ず食事の時間が必要です。
「出社」から「退社」までの時間だと「朝食」と「夕食」は省略されることもありますが、「昼食」は必ず入ってきます。

不特定多数に向けて発信する媒体なら、「食事」は必須の項目です。見る人によっては「ご飯も食べずに働いているの?」と思われます。

昼食の表現も「クライアントと軽食」「遅めのランチ」や、一時流行った「ランチミーティング」など色々あります。


以上のようにして確認できた項目が青文字部分になります。

校正・校閲のよくある間違い

スケジュールでは、まずパターン化された間違いを機械的に潰していきます。
それから全体を通して確認していきます。

4. その他の見ていくポイント

以下は通常の文章を素読みする際のポイントです。

1.「~たり、~たり」

「たり」は、「見たり聞いたり」など、同じ動作や状態が繰り返し起こるときに使用されます。2つセットで使用されるため「たり」が出てきた時点で、もう一つの「たり」があるかどうかを確認します。文章が長いときや難しい用語が多いときは、うっかり読み流す恐れがあります。

【例文】

「~が、本家からは月々の小遣を貰ってい、その外に又作品が相当な値で売れるところから、自然金廻りがよくなって、時々びっくりするようなハンドバッグを提げていたり、舶来品らしい素敵な靴を穿いていたりした。」

※「たり」が一つでも許容とされることもあるので、完全に間違いというわけではありません。

2. 括弧(かっこ)

括弧は、起こしと閉じの括弧のどちらかが抜けていることがよくあります。特に、長文内に括弧が多用されている場合は起こりやすいです。括弧も2つセットで出現するものなので、起こしの括弧が出てきた時点で、閉じの括弧があるか探ります。

また、括弧類を先に確認しておくと、文の構造や関係性が理解しやすくなるので素読みの際には効果的です。

【例文】文中に括弧がたくさん出てくる例

そうかて、あの人、味善う云わなんだら承知しやはらへんねんしやはらへんねんは、谷崎潤一郎全集 第十九巻中央公論新社2015年6月10日初版発行谷崎潤一郎全集 第十五卷中央公論社1968年1月25日発行ではしやはれへんねん

3. 表記ゆれ

・よくある表記ゆれの例

 ください ⇔ 下さい
 いただく ⇔ 頂く
 取り組み ⇔ 取組み
 固有名詞系など

今では表記ゆれもソフトでできるようになりましたが、人の目で表記ゆれを探す必要があるなら、文章を読んでバラツキがあってから指摘していては遅いです。表記は、バラついているものだという前提で見ていきます。

上の例でいうと、素読みのときに「ください」を見つけた時点で、一旦そこに鉛筆でチェックを入れておきます。そうすることで、バラつきが出てきたときに探す手間が省けます。

表記のバラつきに気づいてから、ページを遡って探していては非常に効率が悪いです。

おわりに

他にも間違いがパターン化されやすいものとして「表組」があります。これも媒体問わず見られるものです。

パターン化するにあたっては普段からの間違いの蓄積が大切です。蓄積して分類していくと、意外と予測できる間違いが多いのに気づくと思います。

このようなことは頭の中に入っているから大丈夫と思うかもしれませんが、言語化して周りと共有することが重要です。全体のスキルアップや、後輩校正者へのノウハウ継承にもつながっていきます。

※記事内で使用している例文は、青空文庫:谷崎潤一郎の『細雪』より使用いたしました。