校正・校閲の単価表(料金表)を作るメリット・作る基準

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校正・校閲の単価表(料金表)を作るメリット・作る基準

どんな仕事でも見積もりを出した貰ったりすることがあると思います。

イレギュラーな作業が多い校正でも見積もりを求められる場面があります。
そんなときに単価表があると結構役立ちます。

見積もりは書面で出さなくても口頭で聞かれることも多いです。

「これぐらいの校正だと、いくらぐらいになりますか?」

この場合、
「やってみないとわからないです」と答えるより、
「概算ですけどこれぐらいです」と答えられるようにしておくほうが、
依頼する側も安心して校正をお願いできます。

1. 単価表(料金表)を作るメリット

単価表を持つメリットととして次のようなことがあげられます。

1. 見積もり作成が容易になる

単価表があると当然ながら校正費の算出が容易になります。また、見積もり算出の基準ができるため、同じような校正物の見積もりに対しても、金額のブレが生じにくくなります。

2. 依頼者側に安心感を与える

単価が決まっていると依頼する側は安心です。この作業を何ページ分したからこの金額になるという根拠がわかるからです。

たまに、見積もり書や請求書に「一式○○円」と書いてあるものも見られますが、一式で出すぐらいなら時間で見積もりを出すほうがよいです。

「この作業にこれだけの時間がかかったので、この金額になります」と示すほうが、一式で出すよりも印象はだいぶ違ってきます。

3. 金額交渉がしやすくなる

「この作業とこの作業をするなら、この金額になります。」
「この作業をなくすと、これだけ安くなります。」
「この2つある原稿を一つの原稿にまとめてもらえると、これだけ安くなります。」

単価表があると依頼する側と依頼される側で、金額に対しての共通の認識ができるので、ボタンの掛け違いも生じにくくなります。

2. 実際の単価表

校正・校閲業務の中心となる「赤字照合」と「素読み」の単価表です。
(※単価は、地域や会社によって適正価格か変わってきます。あくまで参考程度にご覧ください)

 赤字照合

作業内容単位訂正指示量の目安適用基準
A
3個
B
6個
C
9個
赤字照合A4/1P150~200~300~原稿1部に対しての校正
200~300~450~原稿1部+別紙資料が添付されている場合
250~400~600~原稿2部に対しての校正
300~500~750~原稿2部+別紙資料が添付されている場合
350~600~900~上記に該当しない場合(原稿が複数ある、別紙が複数ある等)

※上記単価は基本単価になります。原稿内容・作業内容により変動する場合があります。

 素読み

作業内容単位文字量の目安適用基準
A
400字
B
600字
C
800字
素読みA4/1P600~800~1000~素読みのみ
1000~1200~1400~表記統一の指示書や規程書等がある場合

※上記単価は基本単価になります。原稿内容・作業内容により変動する場合があります。

シンプルな単価表なので、これですべての校正作業の見積もりを出すことはできません。そのため、校正物によっては別に単価表を作成します。

たとえば、
カレンダーの校正なら、
12か月分の玉校正(Wチェック込み)で、10,000円~
六曜や暦が入るなら、15,000円~
その他の情報が入るなら、要相談というようになります。

場合によっては、「○○文字・●●円~」と文字にしなくても、
サンプルとなるゲラを用意して、
これぐらいの文字量なら、■■円~、
これぐらいの赤字が入るなら、▲▲円~、としてもわかりやすいです。

情報量が大きく変わる索引ページなどは、サンプルとなるページを用意しておくと相手側にもわかりやすくなります。価格の基準となるサンプルのゲラを見せて「これぐらいの情報量なら1ページ▲▲▲円~です」とすれば一目で伝わります。

実際に、単価表の代わりにサンプル(ゲラ)を用意している校正会社もあります。依頼する側としては視覚的にわかるので便利です。

3. 不確定要素を除く

あったら便利な単価表ですが、いざ作成しようとなると、

「作業項目がたくさんあって、どこから手を付けていいかわからない……」
「あの場合はどうすればいいんだろう…、この場合はどっちだろう……」

などなど、色々と迷うと思います。

校正する媒体や作業項目は会社や個人によっても様々です。
特に、紙やwebなどたくさんの種類の校正をしている方なら苦労すると思います。

校正は、作業をしてみないとわからない不確定要素も多くあります。
原稿の赤字がたった一つでも複数ページに修正が及ぶ場合があったり、文章の出来(善し悪し)によっても赤字や疑問出しの入る量が変わってきたりします。

起きうるすべての場面を想定して単価表の作成をしようとしたら、A4用紙何枚にも及びます。そのような単価表は作成したとしても、見積もりを出すだけでも大変な作業です。形骸化されるのが目に見えています。

そのため、単価表に掲載する作業項目は、自分の中心となる業務に絞って考えます。
要するに、一番時間の費やしている作業です。

一方、見積もりだからといって曖昧な単価にしていると、見積もり金額と実際に作業に掛かった金額との差が大きくなってしまい、依頼者側に不信感を与えかねません。

単価については、自分の環境にあった適正な単価を見つけることから始めます。

4. 単価表(料金表)を作る基準

・中心となる業務

前述の単価表の例では、「赤字照合」と「素読み」の2つの作業項目に絞って考えています。仮に「素読み」が中心となる業務なら、最初に素読みだけの単価表を作成するとスムーズにいきます。

・適正な単価

単価は、それぞれの置かれている環境(地域・会社)によって異なります。他の会社(人)が使っている単価表をそのまま真似しても上手くいかないこともあります。

単価については、仮の金額を置いてみて調整しながら、適正価格を探していく方法が一番無難なやり方です。そこから基本となる単価を探していきます。

前述の単価表の「赤字照合」では、基本となる単価は中央の「400円」です。

作業内容単位訂正指示量の目安適用基準
A
3個
B
6個
C
9個
赤字照合A4/1P150~200~300~原稿1部に対しての校正
200~300~450~原稿1部+別紙資料が添付されている場合
250~400~600~原稿2部に対しての校正
300~500~750~原稿2部+別紙資料が添付されている場合
350~600~900~上記に該当しない場合(原稿が複数ある、別紙が複数ある等)

「素読み」なら、「800円」が基本となる単価です。

作業内容単位文字量の目安適用基準
A
400字
B
600字
C
800字
素読みA4/1P600~800~1000~素読みのみ
1000~1200~1400~表記統一の指示書や規程書等がある場合

この「400円」と「800円」という基本となる単価さえわかれば、あとはこれを軸にして、作業がこの基準より大変か大変じゃないかで単価の設定をしていきます。

これらの単価は、はじめから一発でわかるわけでもなく、何度も改定した結果この単価に落ち着いていったという感じです。最初からズバリ適正な単価を示さなくても、微調整していけば収束していく値があります。

5. 校正単価を掘り下げる

単価設定は環境によって変わるとしましたが、単価設定のベースを「時間」にしていることは多いです。そのため、おそらく基本となる単価は「400円」や「800円」に近い値に落ち着くのではないかと思います。

赤字照合の基本単価、400円を例にすると。

この400円を、
4倍すると1600円になり、首都圏のアルバイトの時給になります。

素読みの基準単価800円も、
2倍すると1600円になり、首都圏のアルバイトの時給になります。

視点を変えて、時間を軸に賃金を考えると。

首都圏のアルバイトの時給1600円(1時間)の四分の一が400円(15分)なので、
400円は15分の作業時間だとわかります。

仮に校正作業をアルバイトさんにお願いするなら、1ページの校正に掛けていい時間が15分だとわかります。そこから、1ページがこの内容なら○○円で、■■分以内にしないと割に合わないという基準がわかってきます。

基準を持っていると、単価表に落とし込めないイレギュラーな作業に対しても対応できるようになってきます。基準よりも、作業量が軽ければ安い単価設定をし、作業量が重ければ高めの単価を設定するということです。

依頼者側に「だいたいこれぐらいの単価になります」と感覚で伝えるよりも、
「基本となる単価の半分ぐらいの作業量なので、この単価になります」と伝えることができます。

[補足]
校正作業では、しばしば見積もり時の想定よりも作業量が増えることがあります。実際に作業をしてみて、事前の見積もりと著しく金額に開きが出てくるようであれば、その段階ですぐに確認しておくことです。

作業後に、この作業もやったからこの分の料金も追加でお願いしますというのは話がこじれる元です。

6. 単価表作成でNGなこと

・NG1 単価がコロコロ変わる

見積もりを出すたびに、単価が二転三転するのはよくないので、単価表の運用前にはちゃんとシミュレーションしておく必要があります。設定した単価を下げることは周りから容易に受け入れられますが、単価を上げるとなると周りに渋い顔をされるはずです。

・NG2 作り込み過ぎない

単価表をいざ作成するとなると気合が入りすぎて、細部にまでこだわりがちになります。ですが、最初から作り込み過ぎると必ず失敗します。まずは簡単なものから作成して、必要に応じて作り替えていくほうが賢明です。

校正の仕事においてはイレギュラーな作業も多いため、単価表に落とし込めないものもあります。単価が想定できない(もしくは複雑)な作業は、時間給で算出するのも一つの手です。

7. 単価表の簡易版

前述した単価表の簡易版です。このような簡易版でも持っていると便利です。

 赤字照合

作業内容単位訂正指示量単価適用基準
赤字照合
   
A4/1P
   
標準400原稿が一種類のみの場合
多め600
標準800原稿が複数、別紙が複数添付されている場合
多め1200

 素読み

作業内容単位文字量の目安単価適用基準
素読みA4/1P600字800素読みのみ

おわりに

単価表の作成で一番面倒なのが、最初の単価設定だと思います。作業項目は洗い出していくだけなので、それほど難しい作業ではないはずです。

単価表は簡単なものでも持っていると、校正費に対しての意識も高まるので、たとえ単価表を使わないという環境でも効果はあります。

単価表から校正費用の値ごろ感がつかめてくると『これぐらいのボリュームだとこの金額が妥当かな』という感覚も養えます。また、『この時間で、これぐらいの作業量をこなさないと割に合わない』という考えも芽生えてきます。

何よりも一番大きな効果は、根拠となる単価があってそれに基づいて見積もりを算出しているということです。これは信頼につながります。特に、新規のクライアントなどには安心されます。