「行程」と「工程」の意味と違い

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「行程」と「工程」の意味と違い

行程と工程は、どちらも同じような場面で使用されます。そのため使い方で迷うこともあると思います。

何となく意味を理解している方も多いと思いますが、明確に使い分けを知っておくと、

「目標達成までの行程」と「目標達成までの工程」はどちらの漢字が適切か?
「行程表」と「工程表」の違いは?

などの疑問にも簡単に答えられます。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・デジタル大辞泉_小学館
・コトバンク
・weblio国語辞典
・新明解国語辞典(第七版)_三省堂

1.「行程」と「工程」に共通する「程」

まずは、両方に共通する「程」の漢字の意味を理解しておきましょう。

「程」には次の意味があります。

1. 物事をはかる基準。決まり。度合い。
2. ある範囲を一定の長さ・分量で一区切りずつにしたもの。また、道のり。道筋。

この意味のうち、「道のり/道筋/ある範囲を一定の長さ・分量で一区切りずつにしたもの」という部分がポイントです。

2.「行程」の意味

 行程と工程の違い

「行」の漢字には、「すすむ」「おこなう」「たび(旅)」「みち(道)」などの意味があります。

この「行」と「程」が組み合わさることで、道のりや旅行などの日程、目的地までの距離のことを表します。

<例文>

• 徒歩で約1時間の行程です。
• 東京から京都までは新幹線で2時間ほどの行程です。

また行程は、比喩的に目標に達するまでの経過する段階や手順という意味も表します。ビジネスシーンでよく耳にする「ロードマップ」は、「行程表」と同じ意味になります。

たとえば、「プロジェクトの行程表」は、全体の進捗状況を把握するもので、そのプロジェクトや各タスクを管理するためのものになります。各タスクの詳細までを記載するものではありません。

<例文>

• この行程に従って進めてください。
• 予算が出なければ、行程表を見直す必要があります。

行程でイメージするのは、大局全体です。

行程の意味のおさらい

1. 目的地へ行くまでの距離。道のり。
2.(比喩的に)ある目標に達するまでの過程。里程。道程。「行程表(=ロードマップ)」
3. 旅行などの日程。

【出典:小学館_デジタル大辞泉】

ちなみに、「行程」は「スケジュール」と混同されがちですが違うものです。

前述したように「行程」は、ある目的に達するまでの距離や予定のことです。物事に対して大局的な視点を持ちます。一方、「スケジュール」は、時間や順序に基づいた予定や計画のことです。

旅行でたとえるなら、
行程はどこからどこまで移動するか、どんな観光地や宿泊施設を利用するかなどを指すのに対し、スケジュールは何時に出発して何時に到着するか、どれくらい滞在するかなどを指します。

旅の行程をさらに細かく詰めたものを、スケジュールと考えることができます。

3.「工程」の意味

行程と工程の違い

「工」の漢字には、「物をつくる」や「しごと」といった意味があります。

「工」と「程」が組み合わさることで、ある目標を達成するために行われる具体的な作業や手順のことを指します。工程は、行程内の作業を具体化し、仕事や作業を進める上での詳細な指針となります。

たとえば、工事や製品の製造現場であれば、何かを作る際の順序や詳細な手順が「工程」です。

<例文>

• この製品は複雑な工程で作られています。

工程でイメージするのは、部分細部です。

工程の意味

• 仕事や作業を進めていく順序・段階。また、その進みぐあい。

【出典:小学館_デジタル大辞泉】

4.「行程」と「工程」の比較

行程と工程は、どちらも「物事を進めていく順序・段階」という意味を含みますが、両者の大きな違いは視点にあります。

行程は、物事の全体的な流れを見て、
工程は、物事を細かく分けた段階を見ます。

端的にいえば、次のようになります。
行程は、全体・大局
工程は、部分・細部

自動車の製造から販売までを5つの段階にわけた場合。

1. 部品の製造
2. 部品の組み立て
3. 車の塗装
4. 車の検査
5. 車の販売

この場合、「1.部品の製造 ~ 5.車の販売」までの全体的な流れが行程であり、1~5の各項目の具体的な作業や手順が工程となります。

5.「行程」と「工程」の例文

前述した「行程」と「工程」の違いを念頭において、以下の例文をみていきましょう。言葉の意味を理解して例文を読むと、その言葉の持つ意味がよりわかりやすくなります。

<行程の例文>  ※大局・全体のイメージ

• 私がこのプロジェクトの行程表を作成しました。
• 京都から大阪までの行程は、新幹線で約1時間です。
• 今回の出張の行程は非常にハードです。
• 旅行会社から行程表が送られてきました。
行程を変更する必要があります。

<工程の例文>  ※部分・詳細のイメージ

• 工事の工程管理を担当します。
• 工事の工程が遅れています。
工程表に従って作業を進めてください。
• この工程では品質チェックが必要です。
工程の改善に取り組んでいます。

おわりに

この記事の冒頭で紹介した、
「目標達成までの行程」と「目標達成までの工程」は、目標という大きな視点で達成への過程を捉えているので、「行程」が相応しいといえます。 

「行程表」と「工程表」では、全体の流れをまとめたものか、各段階の手順をまとめたものかといった違いがあります。

「行程」と「工程」の言葉を正しく理解し、適切に使うことで、意図を的確に伝えることができます。文脈にそった適切な使い方を心掛けましょう。

行程と工程の違い  行程と工程の違い