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「および・ならびに」「または・もしくは」の意味と使い分け解説
接続詞の「および」「ならびに」「または」「もしくは」は、複数の物事を並列的につなぐ役割があります。これらの接続詞は、一般的な文章や書籍、ビジネス文書、さらに法律・公的文書など、さまざまな場面で使用されます。
この記事では、「および」「ならびに」「または」「もしくは」の意味や使い分け方を具体例を交えてわかりやすく解説しています。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・公用文作成の考え方(建議)_文化審議会
・新明解国語辞典_三省堂
・広辞苑_岩波書店
・記者ハンドブック 第14版_共同通信社
1.「および・ならびに」の意味と例文
<意味>
「および」「ならびに」は、いずれも「そして」の意味合いで、複数の物事を結び付けたり、同時に採り上げたりするときに使用される接続詞です。「~と~」という意味合いで使用します。
したがって次のような関係になります。
AおよびB = AならびにB = AとB
「AおよびB」「AならびにB」は、
「AとBの両方」「AとBはいずれも」という意味です。
犬および猫 = 犬ならびに猫 = 犬と猫
<例文>
「住所」と「氏名」を記入してください。
「住所」および「氏名」を記入してください。
「住所」ならびに「氏名」を記入してください。
3つともすべて同じ意味です。
少し補足してわかりやすくすれば次のようになります。
「住所」と「氏名」の2つを記入してください。
「住所」および「氏名」の2つを記入してください。
「住所」ならびに「氏名」の2つを記入してください。
3つ以上の物事をつなげるときは、最後の物事の前に「および(ならびに)」を入れ、他は「、」でつなぎます。
3つ →「A、BおよびC」
「A、BならびにC」
4つ →「A、B、CおよびD」
「A、B、CならびにD」
採り上げる個数が増えても意味は変わらず、「列挙したものすべて」という意味になります。
<表記について>
「および」「ならびに」は、漢字表記では「及び」「並びに」となります。一般的な文章では平仮名を使用し、法令・公用文では、主に漢字が使用されます。
ただし、これはあくまでも基本的なルールなため、最終的な判断基準は媒体のルールや読み手のことを考え、漢字か平仮名を適宜選択していく必要があります。またその際には、一つの文章内で漢字と平仮名が混在しないように注意しましょう。
2.「または・もしくは」の意味と例文
<意味>
「または」「もしくは」は、いずれも「どちらか一方」の意味合いで、複数の物事を選択的につなげるときに使用される接続詞です。「~か~」という意味で使用します。
したがって次のような関係になります。
AまたはB = AもしくはB = AかB
「AまたはB」「AもしくはB」は、
「AかBのどちらか一方」「AとBのいずれか一つ」という意味です。
犬または猫 = 犬もしくは猫 = 犬か猫
<例文>
「はい」か「いいえ」でお答えください。
「はい」または「いいえ」でお答えください。
「はい」もしくは「いいえ」でお答えください。
3つともすべて同じ意味です。
わかりやすく少し補足すれば、次のようになります。
「はい」か「いいえ」のいずれかでお答えください。
「はい」または「いいえ」のいずれかでお答えください。
「はい」もしくは「いいえ」のいずれかでお答えください。
3つ以上の物事をつなげるときは、最後の物事の前に「または(もしくは)」を入れ、他は「、」でつなぎます(※「および・ならびに」と同様です)。
3つ →「A、BまたはC」
「A、BもしくはC」
4つ →「A、B、CまたはD」
「A、B、CもしくはD」
個数が増えても意味は同じで、「列挙したもののどれか一つ」という意味になります。
<表記について>
「または」「もしくは」は、漢字表記では「又は」「若しくは」となります。一般的な文章では平仮名を使用し、法令・公用文では、主に漢字が使用されます。これらも「および」や「ならびに」と同様に読み手のことを考慮して使い分けましょう。
3. 「および・ならびに」「または・もしくは」の同時使用のルール
一つの文で「および」と「ならびに」、「または」と「もしくは」を同時に使用する場合には、使用ルールがあるので注意しましょう。このルールは法令・公用文でよく見られるものです。
3-1.「および」と「ならびに」を同時に使う
「および」「ならびに」を一つの文で使用する場合、大きいくくりには「ならびに」を、小さいくくりには「および」を使います。
たとえば、「AおよびB」と「CおよびD」をつなげたい場合には「ならびに」を使います。
❌「AならびにBおよびCならびにD」とはしません。
このルールの基準は、それぞれの語の結び付きの強さの段階が関係します。1段階目の結び付き(①)には「および」を、2段階目の結び付き(②)には「ならびに」を使用します。
<例文>
・東京および横浜ならびに大阪および神戸は日本の主要都市である。…(A)
・東京、横浜、大阪および神戸は日本の主要都市である。…(B)
AとBの文はほぼ同じような意味になりますが、Aの文はその構造からさらに読み取れる情報があります。
<AとBの文の違い>
まずBの文は単純に主要都市を並べただけのものです。一方、Aの文は、「東京と横浜」は関東圏のカテゴリーとして、「大阪と神戸」は関西圏のカテゴリーとして、4つの都市の中でも関係性のより強いものを「および」でつないでいます。結びつきの強さを強調したい(考慮する)場合には、このような書き方をします。
一般的な文章や簡潔に述べる必要があるビジネスシーンではあまり使用しませんが、物事の背景に潜む微妙なニュアンスまでも正確に言葉で記す必要がある法令・公用文では、このような書き方が使用されます。
3-2.「または」と「もしくは」を同時に使う
「または」「もしくは」を一つの文で使用する場合、大きいくくりには「または」を、小さいくくりには「もしくは」を使います(※基本的な考え方は、前述の「および・ならびに」と同じです)。
「AもしくはB」と「CもしくはD」をつなげたい場合には「または」を使います。
❌「AまたはBもしくはCまたはD」とはしません。
1段階目の結び付き(①)には「もしくは」を、2段階目の結び付き(②)には「または」を使います。言い換えると、「もしくは」は小さい選択肢をつなげるときに、「または」は大きい選択肢をつなげるときに使います。
<例文>
・英語もしくは独語または数学もしくは理科を選択し受験する。…(A)
・英語、独語、数学もしくは理科を選択し受験する。…(B)
Aの文では、文系科目の「英語と独語」、理系科目の「数学と理科」というように結びつきの強いものを「もしくは」でつないでいます。
AとBの文の意味は、結論だけを見れば、4教科のうちから1教科を選択するということになり、同じように思えますが選択の過程が違ってきます。
<AとBの文の違い>
Bの文は、単純に4教科のうちから1教科を選択するということです。一方、Aの文の選択の過程は次のようになります(※独語を選択するとした場合)。
まず、「英語もしくは独語」か「数学もしくは理科」の大きな選択肢からどちらか一方を選ぶ。
次に、「英語」か「独語」の小さな選択肢からどちらか一つを選ぶ。
結果、「独語」を選択する。
このような流れで選択を行います。
おわりに
「および・ならびに」「または・もしくは」は、いずれも複数の物事を並列的につなぐ接続詞です。日常生活やビジネスシーンでもよく使用されます。それぞれの意味や使い方を正しく理解して使用しましょう。
・犬と猫 = 犬および猫 = 犬ならびに猫
・犬か猫 = 犬または猫 = 犬もしくは猫