校正の基本:文字間が広がる・詰まる現象[文字の間隔がおかしいときの原因]
文字間とは、文字と文字との間隔のことを言います。標準の状態を基準にして「広い」「狭い」と表現します。校正では、標準の状態を「字送りベタ」とも呼びます。
▼ 文字間のアキの具体例
1. 標準(字送りベタ)
2. 文字間が広い
3. 文字間が狭い
以上を踏まえ、次の例文の気になる箇所を探してみてください。
<例文>
<おかしい箇所>
一目見て4行目の文字間がおかしいと気付いたと思います。
他に比べて文字間が広くなっています。
実際の校正作業で、このような文字間のものを目にしたら「赤字を入れないと!」と思うかもしれませんが、まずはなぜ文字間が広くなったのか、その原因を考える必要があります。
文字間が広くなっている原因は、大抵は前後の行にヒントがあります。
ここでは後ろの英単語「Tractatus Theologico-Politicus」が原因です。
この「Tractatus Theologico-Politicus」を一行に収めようと調整したがゆえに、4行目の文字間が広がったと考えられます。
このようになった経緯を以下に説明します。
(1)は何も調整せずに文章を流し込んだだけの状態です。
(1)標準の状態
この状態から「Tractatus Theologico-Politicus」が分かれないように調整したものが(2)になります。
(2)調整した結果
英単語が行をまたがるのを嫌い、4行目の『“Tractatus Theologico-』を5行目に送ったため、4行目の文字数が少なくなり字間に影響が出たと考えられます。
1文字や2文字程度の調整なら見た目にも影響しませんが、文字数が多くなるとどこかに不具合が起こる可能性があります。これは、英単語だけでなく長い固有名詞などの泣き別れの調整の際にも注意が必要です。
ただし、他の行の文字数を調整して文字間のアキを目立たなくさせることはできます。
では、どうして常にこのようにしないのか?というと、文字間の微調整は面倒な作業だからです。調整する箇所が多いと非常に手間がかかり、作業者のオペレータなどには敬遠される作業です。
さらに他にも厄介なことがあります。
たとえば、文字間を調整したものに対して赤字が入った場合。
赤字の修正によって今度は別の箇所の英単語が分かれることがあります。
せっかく英単語を一行で収めたのに、今度は別の箇所の単語が二行にまたがってしまっています。何かを調整したがゆえに、他のどこかに不具合が出てくることは珍しくありません。
この例では英単語がすぐ近くにあるのでわかりやすいですが、そうでないと見つけるのが困難です。
では、文字間のアキはどの程度まで許されるのかという疑問がわくかもしれませんが、これは個人の主観となるため答えはありません。判断基準は、クライアントや媒体の責任者にゆだねられます。
そのため文字間に違和感があれば、赤字でなく疑問出しで対処するのが適切です。もしくは、前述した理由により、英単語を一行にすることを優先し多少の見た目を犠牲にしたと判断し、そのまま何も指摘しないこともあります。
文字間が詰まる現象
文字間の広がりとは逆のパターンです。先の例では、4行目の英単語を5行目に追いやりましたが、逆に5行目の英語を4行目に追い込んだ場合には、次のように文字間が詰まりすぎる状態になります。
文字間の間違い
文字間がおかしいと思われる行の前後を見ても、文字間が広がる原因がない場合は単純な間違いです。この場合は赤字を入れて対処するのが適切です。
おわりに
文字間が広がる、文字間が詰まる現象は、単純なミスではなく意図的に何かを調整したがゆえに起こった場合も考えられます。疑問出しや赤字を入れる前に、まずは原因を探って対処しましょう。
※記事内の例文はWikipedia「ウィトゲンシュタイン」の一部を改変したものです。