「下りる」と「降りる」の意味と違い[使い分けのポイント解説]

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「下りる」と「降りる」の意味と違い[使い分けのポイント解説]

「おりる」を漢字で書き表す場合、主に「下りる」か「降りる」が使われます。ただ、「下降」「降下」といった熟語があるように、似た意味で使われることも多く、使い分けが難しい語のひとつです。

この記事では、「下りる」と「降りる」の使い分けについて、考え方を示しながら解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

『新明解国語辞典(三省堂)
『広辞苑』(小学館)
・『漢字の使い分けときあかし辞典』(研究社)

「下りる」と「降りる」の違いを比較

「下りる」と「降りる」のうち、より広く使うことができるのは「下りる」です。「階段を下りる」「幕が下りる」のように、上から下に移動することを幅広く表現できます。こうした物理的な移動だけでなく、「肩の荷が下りる」といった比喩表現の場合にも使えます。

それに比べると、「降りる」は使える場面がやや限定されます。対義語を考えてみるとイメージしやすいでしょう。

広辞苑』では、「降」は「乗」「登」の対になる場合に使うことが多いとされています。「電車に乗る」の対義語としての「電車から降りる」などがわかりやすい例です。

 ・「」vs「」「

 ・「電車から降りる」vs「電車に乗る

明鏡国語辞典』は、「」は「一歩一歩足を運ぶ普通の移動」に、「」は「急速な下降移動」に使う傾向があるとしています。

たとえば、前述の「階段をおりる」は一歩一歩足を運んでいるので「下りる」を使いますが、「エレベーターでおりる」の場合は急速に移動しているので「降りる」を使うことが多いです。

そのほかに「降りる」と表記される場合としては、「地位や役割から退く」意味を表すときがあります。「主役を降りる」「総裁候補から降りる」などといった場合は、「降りる」を使います。

まとめ

以上の説明をまとめると、次のようになります。

・「下りる」は、物理的に「おりる」場合/比喩的に「おりる」場合のいずれにも広く使える

・「降りる」が使えるのは、一部の用法に限られる。「乗」「登」の対義語である場合/「急速な下降移動」を表す場合/地位や役割から退く場合 など。

ただし、上記の使い分けは厳密な線引きは難しく、いずれの表記でもかまわないというケースも多いです。たとえば「船からおりる」は「船に乗る」の対義語なので、上の原則に従うなら「降りる」となりますが、『明鏡国語辞典』では「下船」を踏まえて「下りる」とも表記できるとされています。

漢字の使い分けときあかし辞典(円満字二郎、研究社)でも、「まぎらわしく感じる場合は、一般性の高い《》を使っておくのが無難」と説明されています。

「基本的には『下りる』を使うが、一定の条件に当てはまる場合は『降りる』も使える。迷うときは『下りる』にする」と考えれば、誤りにはならないと言えるでしょう。