「最近」「近頃」「この頃」の微妙な意味の違いをスッキリ解説【言葉の使い分け】

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「最近」「近頃」「この頃」の微妙な違いを正しく使い分ける

最近、何が流行ってんの?」
近頃、暖かくなったね」
この頃、なんか気分がいいんだよね」

「最近」「近頃」「この頃」は、どれも『現在に近い時期』を表す言葉です。日常会話では同じ意味として使われることが多いですが、それぞれに微妙なニュアンスの違いや、適した使用場面があります。

ほとんど同じ意味として扱われることもありますが、実際の会話や文章では、それぞれが持つ固有のニュアンスによって使い分けられています。

この記事では、辞書の定義をもとに、3つの言葉の意味の微妙な違いと使い分けのポイントをわかりやすく解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・『新明解国語辞典』(三省堂)
・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『大辞林』(三省堂)
・『明鏡国語辞典』(大修館書店)
・『広辞苑』(岩波書店)
・『類語大辞典』(講談社)
・『Weblio国語辞典』

・『コトバンク』

1.「最近」- 最も広く使える言葉

最近」は、3つの言葉の中で最も一般的で、場面を選ばず幅広く使える言葉です。

辞書での主な意味
「最近」は、現在からそう遠くない過去のある時点、またはそこから現在までの期間を指す言葉です。3つの中で最も一般的で、幅広い場面で使われます。

特徴①:時間的な柔軟性が高い
「最近」が指す期間は、話題や文脈によって数日前から数十年以上まで大きく変わります。数日前から数年、場合によっては数十年単位まで指すこともあります。

<例>
『最近、寝不足だ』(数日〜数週間)
『最近の若者は〜』(数年〜十数年)
『最近の宇宙論では、加速膨張が定説となっている』(学術的な文脈では数十年単位)

このように、比較対象や話題によって指す期間が伸び縮みするのが「最近」の大きな特徴です。

特徴②:中立的・客観的な響き
「最近」は、「近頃」「この頃」よりも話し手の感情をあまり含めず、事実を客観的に述べたいときに適しています。そのため、ニュースやビジネス文書、学術論文など、客観性が求められる場面やフォーマルな場面で頻繁に使われます。

2.「近頃」- 世の中を眺める、少し改まった表現

近頃」は、「最近」とほぼ同じ意味ですが、世の中の風潮や変化について、少し距離を置いた視点から述べるときに使われることが多い言葉です。

辞書での主な意味
「近頃」は、現在に近い過去から今までの間を指し、「最近」とほぼ同じ意味を持ちます。ただし、やや改まった響きがあり、時代や世の中の変化に対する感慨や評価を込めて使われることが多い表現です。

特徴①:世の中を少し引いた視点で語る
「最近」が事実をそのまま示すのに対し、「近頃」は「昔と比べて、近頃は〜なものだなぁ」といった、話し手の感慨や批評的なニュアンスを含むことが多いのが特徴です。社会の出来事や時代の流れを少し離れた場所から眺めるような感覚があります。

たとえば、『近頃の子どもは外で遊ばなくなった』といった文では、昔と比べて変わったものだという話し手の感慨や嘆きのニュアンスが含まれます。一方、『最近の子どもは外で遊ばなくなった』という文では、より客観的な事実の指摘として受け取られます。

特徴②:やや改まった印象を与える
「近頃」は、「最近」よりも少し文語的で落ち着いた響きを持つため、コラムやエッセイ、スピーチなどで使うと、文章全体に落ち着いた印象を与えることができます。

3.「この頃」- 話し手の「実感」を伝える言葉

この頃」は、現在を含む、ごく近い期間を指す言葉です。話し手の「実感」や「身の回りの変化」を伝えるのに適した言葉です。

辞書での主な意味
「この頃」は、現在にきわめて近い時点を指します。「近頃」とほぼ同義ですが、より話し手のいる「今」に焦点が当たります。

特徴①:「この」が示す、時間的・心理的な近さ
指示語の「この」が付くことで、時間的にも心理的にも「話し手に最も近い範囲」を指す表現になっています。そのため、自分自身の体調や気分、ごく身近な環境の変化について語る際にぴったりです。

<例>
『この頃、よく眠れる』
『この頃、仕事が楽しい』

特徴②:主観的で身近な話題に
「この頃」は、体調や気分、個人的な状況といった、話し手の「主観」が中心となる話題と非常に相性が良い言葉です。「最近」を使うよりも、「この頃」と言うことで、「今、自分が身近に感じていること」という肌感覚がより強く伝わります。親しい間柄での会話や日記など、私的な文脈で自然に使われます。

4.「最近」「近頃」「この頃」の言葉の使い分け比較

視点・距離感
最 近:中立・客観的。事実をそのまま示す
近 頃:少し引いた視点。世の中を眺める感慨的・批評的なニュアンス
この頃:話し手自身の視点。身の回りに向けた主観的なニュアンス

使用場面
最 近:幅広く使える(ビジネス、ニュース、日常会話)
近 頃:やや改まった文脈(スピーチ、コラム、落ち着いた会話)
この頃:話し言葉・私的な文章(日常会話、手紙、日記)

適した話題
最 近:業務報告、社会の出来事など全般
近 頃:業界の動向、時代の変化、世代論
この頃:自分の体調や気分、身の回りの変化

おわりに

「最近」「近頃」「この頃」、3つの言葉の違いを簡単にまとめると次のようになります。

・迷ったら「最近」→ 最も汎用性が高く、どんな場面でも使えます
・世の中を少し引いて語るなら「近頃」→ 感慨や評価を込めたいときに適しています
・自分の身近な実感を話すなら「この頃」→ 主観的な変化を伝えたいときに向いています

これらの意図を意識して、文脈に応じてより的確で自然な表現になるように3つを使い分けましょう。