実は間違えてる?誤用しがちなことわざ21選|「情けは人のためならず」の本当の意味・正しい使い方

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実は間違えてる?誤用しがちなことわざ21選|「情けは人のためならず」の本当の意味・正しい使い方

「犬も歩けば棒に当たる」と聞いて、幸運と災難のどちらを思い浮かべるでしょうか。実はこのことわざには、ほぼ正反対の二つの意味が辞書に載っています。

ことわざは、昔の人の知恵や教訓を短い言葉にまとめたものです。長い年月をかけて語り継がれるうちに、意味が逆転したり、新しい解釈が加わったりすることがあります。

国や地域によって受け止め方が異なるもの、後から「続き」が付け加えられたもの、由来に複数の説があるものもあります。さらに、本来の意味とは違う解釈が広まり、誤用とされる使い方のほうがよく知られているものも少なくありません。

この記事では、こうしたことわざをの次の四つに分類して紹介します。
1. 二つの意味があるも
2. 続きや派生表現があるもの
3. 由来に複数の説や意外な背景があるもの
4. 誤解されやすいもの

1. 二つの意味があることわざ

まずは、一つのことわざに二つの意味があり、使う人や文脈によって解釈が分かれる例を紹介します。なかには、正反対とも言えるほど意味が異なるものもあります。

①「犬も歩けば棒に当たる」

<一般的な意味>
→ 出歩いたり行動を起こしたりすると、思いがけない幸運に出会うことがある。

<別の意味>
→ 出しゃばって余計なことをすると、思わぬ災難に遭う。

<背景>
江戸いろはかるたの最初の札として知られています。もとは「棒で打たれる」という災難の意味だったとされます。のちに「棒に当たる」を「よいものに行き当たる」と捉えて、幸運の意味でも使われるようになりました。現在は幸運の意味で使われることが多く、辞書には両方の意味が載っています。

②「転がる石には苔が生えぬ(転石苔を生ぜず)」

<一般的な意味>
→ 職業や住まいを頻繁に変える人は、地位も財産も身につかない。

<別の意味>
→ 活発に動き続ける人は、考え方が古びず、活力を保てる。

<背景>
英語の「A rolling stone gathers no moss」が元になっています。イギリスでは、苔を「長い時間をかけて積み重ねた価値」と捉え、落ち着きのなさを戒める意味で使われてきました。一方、アメリカでは苔を「汚れ」や「停滞」と捉え、変化し続けることを肯定する意味で使われることが多いと言われています。

③「鉄は熱いうちに打て」

<一般的な意味>
→ 人は柔軟な若いうちに鍛えるべきだ。

<別の意味>
→ 物事は、機会を逃さずに実行すべきだ。

<背景>
英語の「Strike while the iron is hot」は、「好機を逃すな」という意味が中心です。日本では「若いうちに鍛えよ」という教育的な意味でもよく使われます。

④「風が吹けば桶屋が儲かる」

<一般的な意味>
→ ある出来事が巡り巡って、思いがけないところに影響を及ぼす。

<別の意味>
→ 可能性の低い因果関係をこじつけたり、当てにならない期待をしたりする。

<背景>
江戸時代の浮世草子などに見える話が由来とされます。「風で砂ぼこりが立つ→目を患う人が増える→目が不自由になった人が増える→(当時、目の不自由な人の職業の一つだった)三味線弾きが増える→三味線に張る猫の皮が必要になる→猫が減る→ネズミが増える→桶がかじられる→桶屋が儲かる」という長い連鎖の話です。もともと理屈の飛躍を面白がる話だったため、こじつけを皮肉る意味でも使われます。

⑤「朱に交われば赤くなる」

<一般的な意味>
→ 悪い人と付き合っていると、自分まで悪い影響を受ける。

<別の意味>
→ 人は付き合う相手や環境によって、よくも悪くも変わる。

<背景>
中国の傅玄(ふげん)という学者の言葉「朱に近づく者は赤く、墨に近づく者は黒し」に由来します。辞書では「善にも悪にも感化される」と説明されることが多く、優れた人のそばでよい影響を受ける場合にも使えます。ただ、実際には悪い影響を戒める文脈で使われるのが一般的です。

2. 続きや派生表現があることわざ

次に、元のことわざに後から続きが付け加えられたり、元の言葉をもじった言い回しが生まれたりした例を紹介します。

①「井の中の蛙大海を知らず」

<一般的な意味>
→ 狭い世界にいて、広い世界を知らないこと。

<派生した言い回し>
「されど空の深さ(青さ)を知る」と続くとも言われます。この場合、狭い世界にいるからこそ一つのことを深く知っている、という肯定的な意味になります。

<背景>
元になったのは中国の古典『荘子』で、視野の狭さを批判する言葉です。続きの部分は日本で後から付け加えられたと考えられていますが、いつ誰が言い始めたのかははっきりしていません。

②「百聞は一見に如かず」

<一般的な意味>
→ 人から何度も聞くより、一度自分の目で見るほうが確かでよくわかる。

<派生した言い回し>
「百見は一考に如かず、百考は一行に如かず」などと続くと言われます。見るだけでなく、自分で考え、さらに行動することが大切だという意味になります。

<背景>
出典は中国の歴史書『漢書』です。続きの部分は後世に付け加えられたもので、出どころははっきりしていません。

③「出る杭は打たれる」

<一般的な意味>
→ 才能があって目立つ人は、周囲から妬まれたり妨害されたりする。

<派生した言い回し>
「出過ぎた杭は打たれない」と続けて使われることがあります。中途半端に目立つと叩かれるが、突き抜ければ誰も手を出せなくなる、という意味です。

<背景>
「出過ぎた杭は打たれない」は、ことわざの本来の続きではありません。「出る杭は打たれる」を逆手に取った表現として、後から生まれたものです。

④「石橋を叩いて渡る」

<一般的な意味>
→ 用心の上にも用心を重ねて、慎重に物事を進める。

<派生した言い回し>
「石橋を叩いても渡らない」「石橋を叩いて壊す」という言い回しがあります。前者は慎重すぎていつまでも行動に移せないこと、後者は用心しすぎてかえって物事を台無しにすることを表します。

<背景>
どちらも元の言葉を逆手に取り、用心しすぎることを皮肉る派生表現です。「出過ぎた杭は打たれない」と同じく、元のことわざを下敷きにして後から生まれました。

⑤「桃栗三年柿八年」

<一般的な意味>
→ 物事が実を結ぶまでには、それぞれ相応の年月がかかる。

<派生した言い回し>
「柚子は九年の花盛り」「梅は酸い酸い十三年」「梨の大馬鹿十八年」など、さまざまな続きが伝わっています。

<背景>
「桃栗三年柿八年」までは広く定着していますが、その先は地域や時代によって異なり、決まった一つの続きがあるわけではありません。

⑥「善は急げ」

<一般的な意味>
→ よいと思ったことは、ためらわずすぐに実行したほうがよい。

<派生した言い回し>
「善は急げ、悪は延べよ」と対にして言うことがあります。悪いことは先延ばしにすれば、その間に思い直してやめられる、という意味です。

<背景>
「善は急げ」だけで使われることが多いため、後半の「悪は延べよ」はあまり知られていません。

3. 由来に複数の説や意外な背景があることわざ

ここからは、意味そのものは一つでも、由来に複数の説があるものや、語の成り立ち・背景が意外なものを紹介します。

①「一富士二鷹三茄子」

<意味>
→ 初夢に見ると縁起がよいものを、順に並べた言葉。

<由来の説>
・徳川家康ゆかりの説:駿河(今の静岡県)の富士山、家康が好んだ鷹狩り、家康が好んだ初物の茄子を並べたもの
・駿河の「高いもの」を並べた説:富士山、愛鷹山、初物の茄子の値段
・縁起を担いだ語呂合わせの説:富士は「無事」、鷹は「高い」、茄子は「成す」に通じる

<背景>
どれか一つに断定できる決め手はなく、現在も複数の説が並んで伝えられています。

<意味>
→ 身近なことほど、かえって気づきにくい。

<背景>
この「灯台」は、海辺の灯台ではなく、昔の室内の照明具です。油を入れた皿を台に載せて火をともすもので、周囲は照らしても、台の真下は暗くなりました。現在は海の灯台を思い浮かべる人が多く、言葉が本来指していたものとイメージにずれが生じています。

③「急がば回れ」

<意味>
→ 急いでいるときほど、危険な近道より確実な遠回りを選ぶほうが、結果的に早く目的を果たせる。

<背景>
室町時代の宗長の歌「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」が由来とされます。琵琶湖を船で渡る矢橋の渡しは近道でしたが、強風で船が遅れたり、危険な目に遭ったりすることがありました。そのため、瀬田の唐橋を渡る陸路のほうが確実だと詠んだものです。

【参考】「FURUSATO」(公益社団法人 ふるさと回帰・移住交流推進機構)
https://www.furusato-web.jp/topics/p47435/

④「嘘も方便」

<意味>
→ 嘘をつくのはよくないが、目的を果たすためには必要な場合もある。

<背景>
「方便」は仏教の言葉です。仏が人々を悟りに導くために、相手に応じて用いる手段を指します。法華経には、燃える家から子どもたちを連れ出すために、父親が「外に欲しがっていた車がある」と言って誘い出す話があります。本来は、自分の都合のために嘘を正当化する言葉ではありません。背景にあるのは、相手を救い、よい方向に導くための手段という考え方です。

⑤「早起きは三文の徳」

<意味>
→ 早起きをすると、何かしらよいことがある。

<背景>
「三文」はごくわずかな金額を表します。大きな利益ではなく、わずかでも得がある、というニュアンスの言葉です。「徳」はここでは「得」と同じく利益の意味で、「三文の得」と書かれることもあります。

⑥「弘法(に)も筆の誤り」

<意味>
→ その道に優れた人でも、ときには失敗することがある。

<背景>
書の名人として知られる弘法大師(空海)が、応天門の額を書いたとき、「応」の字の点を一つ書き落としたという逸話が由来とされます。

⑦「ミイラ取りがミイラになる」

<意味>
→ 人を連れ戻しに行った者が、そのまま先方にとどまってしまうこと。また、相手を説得しに行った者が、逆に相手に説得されてしまうこと。

<背景>
昔は、ミイラが薬として珍重されていました。ミイラを取りに行った人が現地で倒れ、自分がミイラになってしまったという話が由来とされます。

⑧「馬子にも衣装」

<意味>
→ どのような人でも、立派な衣服を身につければ、それなりに立派に見える。

<背景>
「馬子」は「孫」ではなく、馬を引いて人や荷物を運ぶことを仕事にしていた人を指します。「孫にも衣装」と書くのは誤りです。また、身内以外の人に使うと失礼にあたるため、注意が必要です。

4. 誤解されやすいことわざ

最後に、説が分かれているのではなく、本来の意味と誤った解釈が並んで広まっている例を紹介します。

①「情けは人のためならず」

<誤解されやすい意味>
→ 人に情けをかけると、その人を甘やかすことになり、本人のためにならない。

<本来の意味>
→ 人に親切にすれば、巡り巡って自分によい報いが返ってくる。

<背景>
「人のためならず」は「人のためではない(自分のためである)」という意味で、「人のためにならない」ではありません。文化庁の平成22年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味を選んだ人が45.8%、誤った意味を選んだ人が45.7%と、ほぼ同じ割合になりました。

【参考】「国語に関する世論調査」(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html

②「可愛い子には旅をさせよ」

<誤解されやすい意味>
→ 子どもに旅行をさせて、見聞を広めさせるとよい。

<本来の意味>
→ 子どもが可愛いなら、甘やかさずに世の中の苦労を経験させるべきだ。

<背景>
昔の旅は危険でつらいもので、「旅」は「苦労」の比喩として使われていました。ただし、苦痛を与えること自体を勧めているわけではありません。主眼は、親元を離れて世の中を知り、自立する経験をさせることにあります。

おわりに

ことわざは、先人の知恵を短い言葉に凝縮したものです。ただ、その意味は決して一つに固まったものではありません。時代とともに意味が逆転したり、国によって受け止め方が異なったり、後から続きが付け加えられたりと、言葉は使われ続けるなかで少しずつ姿を変えてきました。

大切なのは、自分の覚えている意味が唯一の正解だと思い込まないことです。相手が別の意味で受け取る可能性を意識していれば、思わぬ誤解やすれ違いを防ぐことにもつながります。