文章の校正:5つの基本的な見方[文字に意識を集中させるコツ]
文章の校正と一口に言っても、企業や媒体によってルールややり方は様々です。一つの企業内でも案件によってチェックすべきポイントや項目数は異なる場合がほとんどです。
ただ、どんな案件にも共通する校正の基本的な型となるものがあります。文章の読み方、原稿の赤字の確認などに共通する見方です。
近年では、校正支援ツールやAIでの校正も進んでいますが、仮にそれらで校正をするにしても、最終的な判断は人の目でするため基本的な見方に変わりはなく活かされます。
以下、5つの基本的な校正の見方を紹介していきます。どれも一度は耳にしたことがあるものだと思います。誰に教わったわけでもなく実践している方も多いはずです。行きつく先は皆同じということかもしれません。
1. 一文字ずつ見る
「一文字一文字、入念に見る」とは校正ではよく言われる言葉です。
簡単なことのように思えますが、日本語の文章を目にしたとき、見慣れた単語があれば一目見ただけで頭に入ってきます。そのせいで一文字一文字でなく、数文字単位の塊として文字を捉えてしまいます。
文字を意味のある一つの塊として認識した場合、最初と最後の文字には意識が行きますが、中間部分に対しては注意がおろそかになることがあります。
見慣れた単語であればあるほどこのようなことは顕著に起こります。また、忙しいときや体調の悪いときには、自分ではちゃんと見ているつもりでも、実際には見れていないことが多々起こります。
上の例では「コンプライアンス」が「コンポライアンス」となっていますが、一文字一文字注意して見ないとこのような誤りにも気づけなくなります。また、最初は意識して一文字一文字見ていても、集中力が途切れてくると徐々に見る範囲が広がってしまうこともあります。
こういった文字の流し読みを防ぐために、ペンの先を使って一文字一文字、文字をなぞるように見ていきます。ペン先に目線の方向を合わせることで余計な目線の動きをなくします。原稿の赤字を確認する際や、複数のものを見比べるときには有効な手段です。
何かを集中して見ようとするとき、無意識に指先を使って確認することがあります。意識と指先が合わさって、視線の先への注意力が高まります。
指先を使って対象を確認する行為は、人が何かを注意して見るときに何気に行う動作です。ペン先に意識を向けて一文字一文字確認する動作もこれと同じです。
文章を見る際、ペン先を使い一文字ずつ目で追うのが誤りを見つける効果的な見方です。ペン先を利用して一文字に対しての集中力を高めましょう。
2. 一行ずつ見る
人間の視野は思う以上に広いものです。今この文を読んでいる時点でも、数行先の文字も視野の端に捉えていると思います。
この視野の端に入った文字が読み間違いを誘発することがあります。また、一行読み飛ばしてしまうミスもあります。
そこで集中すべき行に定規を当てて、余計な情報を遮断します。
定規で後ろの行を隠し、今読んでいる行にだけ意識を集中させるようにします。
もし定規がなければ、紙などを使って隠しても大丈夫です。急ぎの仕事や集中力が続かないときには視点が散漫になりがちです。余計な情報は遮断して目の前のことにだけ注意を向けましょう。
3. 一単語ずつチェックを付ける
熟語の確認、固有名詞の確認、年月日の確認、事実確認(ファクトチェック)などのときに役立ちます。
意味や表記などに誤りがないかを確認した際には、単語の右上に小さくレ点でチェックを付けておきます。あまり目立ちすぎると見直しの際に邪魔になるので、自分でわかる程度で大丈夫です。レ点でなくても、わかりやすいものであれば、線を引いたり丸をしたりするなどでも構いません。
■チェックの例
単語や表記だけに限らず、確認をしたものには必ずチェックを残すようにします。作業の痕跡を残すことで、確認した箇所と未確認の箇所が一目瞭然となります。見直しをする際にチェックがあるとないとでは、断然に確認の精度が違ってきます。
また、複数人で校正を手分けして行っている現場なら、チェックのルールを共有しておくことで、万一自分が見落としたときでも他の誰かが気づいてくれることもあります。
4. 一項目ずつ見る
文章の校正では確認すべき項目が多くあります。中には、表やグラフなどが入る場合もあり確認項目はさらに増えます。その際に気をつけたいのが複数の項目を一気にチェックしないことです。
一度にすべてを確認したほうが早いと思うかもしれませんが、そこに品質が伴わなければ校正をしたとは言えません。ただ単に文章を読んだだけです。
複数のことを同時に行うと注意力が分散されるため、自分ではできているつもりでも実際にはできていないケースがほとんどです。身近な例で言うと歩きスマホと同じです。
『急がば回れ』ということわざがありますが、校正作業もこれと同じで、あれもこれも同時にやるより、一つ一つ確認したほうが結局は安全で効率的です。
たとえば、通し番号のある見出しなら、番号だけを通しで確認し内容については別で確認するようにします。
番号も内容も複数の要素を同時に確認すると、抜け漏れが起こりやすくなります。そのため一回の通読だけで終わらせようとは考えず、項目別に確認するようにしましょう。そのほうが確実に精度は上がります。
5. 一か所に記憶を集中させない
校正では文章の様々な要素についてチェックをしていきますが、できるだけ頭に余計な負荷をかけないようにすることです。頭で覚えなくてもいい情報は、積極的にメモや付箋などの外部記憶装置に残します。自分の頭は校正作業だけに専念させましょう。
メモをする項目は、作業手順、イレギュラーなこと、後から通しで確認するような項目です。
<例>
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・見出し(の確認)
・目次(の確認)
・ノンブル(の確認)
・QR(リンク先確認)
:
:
ーーーーーーーーー
※( )内は補足です。
内容は箇条書きで簡潔にしておきます。丁寧に書くに越したことはないですが、自分でわかるようにしておけば大丈夫です。
校正の仕事だけに限ったことではありませんが、自分の頭に頼り切るのはよくありません。頭に記憶したことは、時間が経てば当然ながら抜け漏れが起こりやすくなります。たとえ確認項目が少しであっても、自分の頭を過信せずに、常にメモに残すという意識が大切です。
長時間の作業、業務量が多い状況では集中力が低下し続けます。頭で覚えておくには限界があるため、自分の記憶の補助となるものを積極的に使いましょう。
おわりに
以上、校正の基本的な見方を5つ紹介しました。
すべてに共通することは、文字に対してどう向き合うか、過信をなくすためにはどうすればいいか、そのためにどういった手段が取られるかを考えた結果ということです。
どれも基本的なことなので、どんな案件や仕事にも応用が利きます。ぜひ参考にしてみてください。