校正ゲラ（校正紙）のチェックで最初に確認すべきポイント［全体から部分へ］

2019/10/11 2025/03/13 6分3秒

ゲラを手に取って何気なく誌面を眺めていると、ふと「何か違う……」と感じたことはありませんか。

特に意識していなくても、どこか違和感を覚え、思わず目が留まる。そんな経験を誰もが一度はしたことがあると思います。

原稿やゲラを見た瞬間に、「何かおかしい……」と感じてしまう。その直感的な違和感が、後から細かく確認してみるとやはり正しかった、ということも少なくありません。

この感覚は、校正・校閲の仕事に限らず、編集者やデザイナー、オペレータなど、さまざまな職種の人にも共通しているのかもしれません。また、それぞれの職業ならではの視点で、異なる種類の違和感を覚えることもあるでしょう。

1.「全体」から「部分」へと確認していく

この違和感は、普段からゲラを俯瞰する意識を持っていると自然と養われていくものです。
見方としては、確認範囲を「全体」から「部分」に絞っていく感じです。

たとえば、次のゲラを手に取ったとき。

まずは誌面の外側から見ていきます。

＜チェックポイント＞

❶ 色アミの塗り足し部分が適切か（左右と上部）。
❷ ～ ❺ 誌面の周りを見て適切な余白が確保されているか。余計なものが入り込んでいないか。

次にブロック単位（ここでは段落単位）で見ていきます。

＜チェックポイント＞

❶ ～ ❹
・各段落のアキは均等か。
・行頭・行末は揃っているか。
・行間は均等か。

以上のように誌面を俯瞰し全体から部分へと視野を絞っていきます。

① ページ周り
　　 ↓
② 段落単位
　　 ↓
③ 文単位

と視線を移動させて確認していきます。

余白は「適切な距離感」と考えるとわかりやすいかもしれません。十分な余白がないと、誌面全体のバランスが悪くなり、不自然に感じてしまいます。

① ページ周りの余白

通常の印刷物は、ページ周りに余白を持たせています。この余白が多くても少なくても読みづらくなります。仮にルールでアキの幅が決まっているなら、物差しやゲージなどで測って確認する必要があります。

ただ、デザインとして意図的に文字を誌面いっぱいに大きくし、あえて誌面内に収まらないようにすることでインパクトや迫力感を狙っていることがあります。絶対に余白がないとダメというわけでもありません。

② キャプションと画像とのアキ

画像などにつくキャプション（図版部分に付け加えられた説明文）のアキが不揃いなことも多いです。追加指示で新しく要素が入ってきたとき、既存のものと不揃いになるケースがよくあります。また、画像とキャプションが離れすぎていると、文字が誌面上に浮いているように感じるので、すぐにおかしなことに気づきます。

③ 行間・文字間のアキ

行間や文字間の詰まり過ぎ・開きすぎなどもすぐにわかります。これらは、可読性を考慮して設定されているため「見づらい = 読みづらい」につながるので、大切な確認ポイントです。

フォントと文字サイズの違いは、目が慣れてきたら一目見て違いがわかります。フォントが変わるだけで、誌面の雰囲気がガラッと変わるからです。真っ先に違和感を覚える人も多いかもしれません。

校正物にルールがある場合は、誌面で使用するフォントや文字サイズなどはあらかじめ決められています。そのため、すぐに違いに気づくことも多いです。

ただ、雑誌やカタログなどは、読者を飽きさせないように数年ごとにデザインをリニューアルしていくものです。リニューアルした際の目が慣れないうちは、間違いにも気づきにくいため注意が必要です。

誌面を俯瞰する意識を持っていると、段落の文頭が一字下げになっていない場合、すぐに気づくことができます。文末が揃っていない場合も同様です。このような間違いは、文章を読みながら探していくよりも、先に確認しておいたほうが効率的です。

① 一字下げ

② 一字下げでない

③ 文末が揃っている

④ 文末が揃っていない

最近では、一字下げにしていない文章も多く見られます。一字下げはあくまで形式的なものなので、一字げになっていなくても間違いというわけではありません。

また、文末が揃っていないものでも、文の区切りのいい位置で改行し意図的に文末を揃えていない場合があります。

一方、文末が揃っていなくて、文の区切りも悪いというものは、意図的でない（間違っている）可能性があります。校正では、指摘しておいたほうがいい箇所です。

※文末に関して、Web媒体などはこの限りではありません。Web校正をメインにやられている方は、文末が不揃いであっても、特に違和感が起きることもないはずです。

ゲラを手にしたときにわかる間違いは、レイアウトや体裁のミスが多いです。最初にそのようなわかりやすい間違いを潰しておくと、その後の素読み作業に集中しやすくなります。

素読みの最中に、文章以外の間違いが気になると、集中力が途切れてしまうためです。

校正・校閲の業務は、切り分けできない連続した作業のように思えますが、作業ごとに区切れる部分もあります。すべてのミスを一度に見つけようとするよりも、段階的にチェックするほうが効率的な場面も多いです。

まずは誌面全体を俯瞰し、徐々に細部へと確認範囲を絞りながら、違和感のある箇所がないかをチェックしていくことが大切です。