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校正で見落としがちなちょっとした間違い[一度知ると気になる誤り]
校正では、様々な間違いがあります。一口に間違いと言っても、致命的ですぐに修正すべきもの、状況によっては流してしまう些細なものもあります。中には、経験を積んだベテランの校正者であっても、文章を読むことばかりに集中していると、かなりの確率で見落としてしまう間違いも存在します。
そのようなものに文字の強調や装飾範囲の間違いがあります。文字の強調や装飾とは、太字や下線、斜体、色、上付きなどです。一部の文字を目立たせたい場合によく使用します。
文字の強調や装飾は、任意の箇所に付けるため、自動で行われることはなく手作業でする必要があります。そのせいで間違いも起こりやすくなります。
現段階ではAIや校正ツールでも見つけることは困難で、校正者の目だけが頼りになります。
この記事では、文字の強調や装飾の際によく起こる間違いを紹介しています。簡単なちょっとした間違いばかりですが、うかっりしていると見落としがちなものばかりです。
1. 太字に関する間違い
まずは強調指示の中でも使用頻度の高い太字に関する間違いです。次の例文の太字の箇所に注意して、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
<例文1>
<解答>
1. “ チャールズ・モンロー・シュルツ ”の最後の「ツ」が太字になっていない
2. “『ピーナッツ』”の前のカッコが太字になっていない
1も2もよくある間違いです。間違いの原因は、強調範囲を選択する際に誤ったことが原因です。この手の間違いは、ほぼ強調したい語の前後に集中するのが特徴です。
間違いへの対処として、1については、“ チャールズ・モンロー・シュルツ ”の最後の「ツ」を太字にする赤字を入れることになります。
2についての修正方法は、2つのパターンが考えられます。
A 『ピーナッツ』←すべて太字にする
B 『ピーナッツ』←カッコの中の文字のみ太字にする
AとBでは、カッコが太字になっているかどうかわかりづらいですが、次のようにフォントによっては見た目が大きく違ってきます。
AとBのうち、Aが選択される可能性は高いですが、二重カギカッコに限って言えば、太字にすると線がつぶれてしまうことがあります。そのため見た目を考慮してBが選択される可能性もあります。
<例文2>
<解答>
“(税込み)”の前のカッコまで太字になっています。一般に「税込」の文字は、強調するほどの情報ではないので、この例では太字の設定を取るのが適切です。
この例のように文字が小さくてわかりづらいこともあるので、太字の前後は要注意です。誤ったまま掲載されていることも珍しくありません。不幸中の幸いなのか、この手の間違いは、そのまま誌面に掲載されていたとしても誰にも気付かれないことがほとんどです。
<例文3>
<解答>
この文では、「品質の安定」と「生産性の向上」の2つは並列に扱われています。そのため、「品質の安定」だけでなく「生産性の向上」も太字にするのが適切です。
上記の例文1~3では、太字の箇所だけに注意しているので誤りも発見しやすいですが、実際の校正作業においては、太字だけでなく様々な箇所を確認する必要があります。
太字は、フォントによって明確に区別がつくもの、区別がつきづらいものがあります。文章を読むことだけに集中していると、間違っていても気づけないことも多いです。
そのため、通常の校正作業とは別軸で確認するのが効果的です。強調範囲の前後に注意さえしていれば、大抵は見つけられる間違いです。
2. 色に関する間違い
色に関する間違いも、考え方は太字と同じです。ただ色の範囲の間違いは、太字よりもわかりやすいものばかりです。唯一の注意点は、誌面に多くの色を使っている場合には、見落とされやすいので注意しましょう。
※間違い箇所は、太字の例文とすべて同じです。
<例文1>
<例文2>
<例文3>
3. 下線に関する間違い
続いては下線に関する間違いです。
※間違い箇所は、太字の例文とすべて同じです。
<例文1>
<例文2>
<例文3>
▼ 一つの誌面内に下線の種類が複数使用されている場合は、下線の種類にも注意しましょう。
4. 斜体に関する間違い
斜体は、主に欧文で使用されます。日本語の文章でも使われますが、視認性を損なう恐れがあるため注意が必要です。欧文の場合、斜体は注釈・出典などでもよく使用されます。その際は、文字サイズが小さいので注意しましょう。
次の例文の斜体の箇所に注意して、おかしいと思われる箇所を考えてみてください。
<例文>
<解答>
一つめの「PEANUTS Cafe」の“ e ”だけが斜体になっていない間違いは、一見するとわかりづらいように思えますが、実際の誌面で見ると文字が重なっているように見えるので、案外すぐにわかります。
<強調指示の組み合わせ>
文字の強調は、一つだけでなく組み合わせて使用されることもあります。どちらか一方に注意していると、もう一方が見落とされやすいので注意しましょう。
・斜体+下線の例
<日本語の斜体の視認性>
日本語での斜体の使用も珍しくありませんが、視認性はいいとは言えません。
・斜体
・正体
5. 上付きに関する間違い
例文は上付きに関しての間違いですが、下付きでも同様の間違いが起こりえます。
<例文>
<解答>
これも設定範囲を間違えたために起こった間違いですが、文章を目で追うと違和感が起こるのですぐにわかります。
正) 誤)
6. 書体に関する間違い
書体に関する間違いです。書体に注意して、次の例文の間違いを考えてみてください。
<例文1>
<解答>
この間違いは、見出しのみ書体を変えようとして、勢い余って本文の先頭まで設定してしまったというものです。太字と同様に書体によっては、この間違いも気づきづらいので注意が必要です。
<例文2>
<解答>
この間違い例は、設定範囲の間違いというよりも、文の追加により起こることが大半です。一見するとすぐわかりそうでも、文章を読むのに集中していると気づきづらいので注意しましょう。
7. 文字の大きさに関する間違い
文字の大きさの間違いは、キャッチコピーや見出しなどでよく見られます。
通常:今回の議題は、品質の安定と生産性の向上の2つです。
強調:今回の議題は、品質の安定と生産性の向上の2つです。
このように文の一部を強調したいときに文字を大きくすることがあります。この間違いの特徴は、意図的にそうしているのか間違いなのか判断できないことです。
<例文1>
この2つの例の場合、どちらでもおかしくありません。校正者には、どちらが正しいか判断できない領域です。
<例文2>
次の文は特定の単語を強調するために大きくしたものです。キャッチコピーなどでよく見られる形式です。
この文だけを見ると、おかしな箇所がわかりづらいかもしれません。
ただ、もう一つ文を加えると違和感が明確になると思います。
<解答>
致命的な間違いとは言えませんが、校正では指摘しておきたい箇所です。ただ最終段階の校正では、指摘しても流されるかもしれません。
<適切な例>
おわりに
以上、校正で見落としがちなちょっとした間違いを紹介しました。
この手の間違いを見つけるのに校正の経験値は関係ありません。こういう間違いがあるということを知っておけば役に立つ場面がきっと来るはずです。
間違いを効果的に見つけるポイントは、文章を読む作業とは別の視点で確認することです。校正では、色々と確認すべき項目があります。見る項目を絞ってピンポイントで間違いを探していくことで、効果的に間違いを発見することができます。
※例文作成にあたっては、Wikipedia「スヌーピー」を参考にしています。