丸かっこ(パーレン)と句点(マル)の位置関係
丸かっこ(パーレン)は、文章内でもっともよく使用される括弧です。語句などの補足説明や、小見出しの番号「(1)」をくくるときなどにも使用されます。用途は多岐にわたります。
絶対に正しいという使用方法や表記の仕方はありませんが、ある程度ルール化されている部分もあります。
この記事では、文末に丸かっこが来た場合の句点の位置関係について紹介したいと思います。
▼ 文末の丸かっこと句点の組み合わせは次の通りです。
1.( ) 句点を入れない
2.( )。 句点をかっこの後ろに入れる
3.( 。) 句点をかっこの前に入れる
どの表記が適切か、場面に応じた使い方を紹介していきます。
結論だけ知りたいという方は、最後の【まとめ】をご覧ください
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・日本エディタースクール出版部『日本語表記ルールブック 第2版』
・文部省教科書局調査課国語調査室『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』
・文化審議会『公用文作成の考え方(建議)』
・共同通信社『記者ハンドブック 第14版』
※記事内の太字の例文は「記者ハンドブック 第14版」「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」『公用文作成の考え方(建議)』からの引用になります。
表記ルール①:基本形
▼ 文末の丸かっこと句点の組み合わせパターンは次の通りです。
A
B
C
一般的な文章では、AとBのパターンでほぼ対応できます。
A
B
Cの形式は主に公用文で使用されます。公用文では、原則として文の終止には句点を入れるとされます。そのため、かっこ内であっても文の形式で終わっていれば内側に句点を入れます。※詳細は表記ルール②参照
C
公用文とは、国家や公共団体などが出す文書や法令などの文章。官公庁あての文書や銀行、会社などの発行する正式文書などをいう場合もある。
【出典:精選版 日本国語大辞典】
▼ AとBの使い分け
文末の丸かっこと句点の位置については、内容によって位置を使い分けることができます。
一般にパーレン内の補足説明が前の文に付属してる場合は、閉じの丸かっこの後に句点を入れるAの形にします。一方、補足説明が前の文から独立してる場合はBの形にします。
次のイメージで考えるとわかりやすいです。
A.文末に来たかっこの内容が前の文の部分的補足なら、丸かっこの後ろに句点を入れる。
1. 文の一部を補足する(下の例文参照)
2. 前の文のみ補足する
かっこの内容と前の文がワンセットになる感じです。
今月の消費者物価指数上昇率は0・5%(速報値)。
B.文末に来たかっこ内の内容が前の文全体を補足する場合、もしくは前の文から独立している場合は、丸かっこの前に句点を入れる。たとえば文章全体の注釈、筆者名、クレジットなどの場合です。
1. 文全体を補足、もしくは独立した関係にある(下の例文参照)
2. 複数の文を補足、もしくは独立した関係にある
3. 段落全体を補足、もしくは独立した関係にある
手記の全文は次の通り。(原文のまま)
表記ルール②:公用文
公用文では、原則としてかっこ内の文に対しても句点を入れるとされています。
これには、1946年に当時の文部省が作成した「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」が影響しています。かなり前の資料ですが、現在でも文章作成において踏襲されている部分が多くあります。
この文書では、「附記的な一節を全部カッコでかこむ場合には、もちろんその中にマルが入る」とされています。(※附記とは、 注意書きや備考などのことをいいます)
それには応永三年云々の識語がある。(この識語のことについては後に詳しく述べる。)
公用文だから文の終わりすべてに句点を入れるというわけでもありません。句点を打たない例もあります。
「文の終止でカッコをへだててうつことがある」とされています。
このことは、すでに第三章で説明した(五七頁参照)。
最近では、2022年1月に文化審議会国語分科会が建議した「公用文作成の考え方(建議)」の中で、かっこの中で文が終わる場合は句点を入れることを原則としつつも、「一般の社会生活においては、括弧内の句点を省略することが多い。解説・広報等では、そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、括弧内の句点を省略することがある。」と補足されています。
文末の丸かっこと句点の関係については、公用文作成の考え方(建議)の「句読点や括弧の使い方」の項目で次のように説明されています。
■ 文末にある括弧と句点の関係を使い分ける
1. 文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。
例)
当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。
2. さらに、二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。
例)
当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)
3. なお、一般の社会生活においては、括弧内の句点を省略することが多い。解説・広報等では、そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、括弧内の句点を省略することがある。
例)
年内にも再開を予定しています(日程は未定です)。
【出典:公用文作成の考え方(建議)】
1や2のように公用文では、原則として文の終わりに句点が打たれます。2や3は一般的な文章でも見られますが、1のような「 。)。 」で終わる形は公用文独特です。一般的な文章では、見た目の問題もあって避けられる傾向にあります。
表記ルール③:その他
最後に「記者ハンドブック 第14版」から、その他の使用例を紹介したいと思います。
「座談会、対談記事の情景描写などで、段落の終わりのときは丸かっこの前に、文中のときは後に句点を打つ」とされています。
1. 段落の終わりのとき
例)
○○氏 政府の責任は重大だ。(一同うなずく)
2. 文中のとき
例)
…それは初耳です(と身を乗り出す)。ぜひ聞きたい。
この場合の使い分けは、単純に「段落の終わり」か「文中」かで考えたほうがわかりやすいです。
表記のまとめ
▼ 文末の丸かっこ(パーレン)と句点(マル)の表記方法
・基本パターン
A
B
C
A.文末のかっこ内の補足説明が前の文に付属している場合は、閉じのかっこの後ろに句点を入れる。
例)
B.文末のかっこ内の説明が、前の文全体を補足する場合、もしくは前の文から独立している場合は、丸かっこの前に句点を入れる。※文章全体の注釈、筆者名、クレジットなど
例)
C.
公用文の場合は、かっこ内であっても文で終わる場合は原則句点を入れる(※詳細は表記ルール②参照)
D.「座談会、対談記事の情景描写などで、段落の終わりのときは丸かっこの前に、文中のときは後に句点を打つ」
・段落の終わり
例)そのことを言ったら怒られたんですよ。 (笑)
・文中
例)そのことを言ったら怒られたんですよ (笑)。でもね、あとでちゃんと謝りましたから。
表記に関しては、こうあるべきという絶対的なルールは存在しません。企業や媒体、個人によって使用方法は違ってきます。仮に公用文の表記を一般的な文章に使用したとしても何も問題ありません。
大切なことは、あらかじめ表記の方針を立てて、一つの記事や1冊の本の中でバラつきがでないようにすることです。
「日本語表記ルールブック」
(日本エディタースクール)
「記者ハンドブック 14版」
(一般社団法人共同通信社)