[誤解やトラブルを避ける]校正の仕事を受けるときに確認すべきこと

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[誤解やトラブルを避ける]校正の仕事を受けるときに確認すべきこと

校正の仕事をする際には、正社員や契約社員、アルバイトとして特定の企業で働くこともあれば、フリーランス(業務委託)や派遣で複数の企業の依頼を受けて仕事をする場合もあると思います。

仕事探しや、実際に仕事を引き受ける際に重要なのが、校正依頼者(※)の考えている校正が具体的にどのようなものかを事前にしっかりと確認しておくことです。

なぜなら、依頼者によって校正の作業内容が大きく異なることがあるからです。作業内容を確認しないまま仕事を引き受けてしまうと、誤解やトラブルを招く原因となりかねません。

(※ここでの「依頼者」には、クライアントや社内制作者など校正物を手配する人のことを指しています)

この記事では、校正の作業内容の確認、すり合わせの必要性について、わかりやすく説明していきます。

1. 紙ベースなのかデジタルツールを使用するのか

以前は出力した校正紙で作業するのが当たり前でしたが、近年では、デジタル化やAIの浸透、コスト削減のために、校正のペーパーレス化、データでのやり取りが進んでいます。PDFなどのデータ上で校正をし、データで納品することを標準としている企業も増えています。

ツールとしてはWordGoogleドキュメント、PDF を利用することが多いです。校正作業においても、WordGoogleドキュメントでの校閲機能、PDFのコメント機能を利用して赤入れや疑問出しをすることが一般的になりつつあります。

そのような中で、紙ベースの経験しかない校正者は、データで校正することに戸惑ったり時間がかかったりすることも考えられます。

逆も同様で、アナログな作業が根強く残る企業も依然とあり、紙ベースの校正が当たり前となっている制作環境もあります。普段からデジタルベースで校正をしている校正者にとっては、効率の悪さがストレスになるかもしれません。

そのため校正作業が紙ベースなのかデジタルツールも併用しているのか、前もって作業環境を確認するようにしましょう。

2. 校正に付随する業務

派遣やアルバイトの求人で校正者を募集している場合、校正作業のほかに原稿整理、簡単な入力作業、ファイリング、電話の取り次ぎなどが含まれているケースがあります。この場合、応募者が実際の作業内容をよく確認しないままに採用されると、「校正以外の仕事がこんなに多いとは聞いていない……」「校正に集中できない……」などのトラブルになりかねません。

校正以外の付随業務を行うことも構わないという場合であっても、校正以外の業務が多すぎたり電話が頻繁にかかってきたりするとメイン業務の校正にも支障が出てきます。

特に電話対応は強制的に仕事が止められるので、頻度が多いと校正業務と同時に行うのが負担になる恐れもあります。

そのため校正の仕事に応募する際、もしくは面接の際には、校正作業のほかに付随する業務があるかどうか、あればどれくらいの割合なのかを確認することが重要です。

3. 依頼者による「校正」に対する認識の違い

一般的に校正とは、校正紙と原稿とを照合するなどして誤りを正し、体裁を整えることを言います。しかし、依頼者によって校正の作業内容にバラつきがあるのが実情です。校正に対する共通の認識はあっても、企業や媒体、個人によって詳細は違ってくるため、状況に応じて対応していく必要があります。

たとえば、素読み校正の際に参考資料やインターネットで調べながら、ファクトチェックもしてほしいと考えている依頼者もいます。また、文章を加筆修正してよりよいものにするリライト業務も校正の一環としてとらえている依頼者も存在します。

そのため依頼者の言う「校正」とは具体的にどのような内容で、何をどこまでやればいいのか、依頼者と校正者の間ですり合わせることが大切になってきます。

同じ企業内であっても担当者、職種が違えば校正の捉え方も違ってきます。個々の依頼者によって作業内容を逐一確認するのが賢明です。

Web記事の校正ではリライトまで求められるケースが多く、仮にリライトを校正の一部と考えている依頼者から素読み校正を依頼されたとします。

校正者は一般的な素読み校正をすればいいと認識し、誤字脱字のチェックや表記統一、整合性の確認をして納品します。すると依頼者から「なぜリライトされていないのか?」と指摘され、やり直しを求められることが考えられます。

このような事態を避けるためにも、仕事を受ける前に依頼者が求める作業内容を明確にしておく必要があります。

事前に作業内容を詰めることは依頼する側の務めですが、その辺りがあやふやになっていることは意外と多いです。事情の一つとして、依頼者が校正の仕事内容を理解しておらず、他の校正者はこうやってくれたから今回も同じようにやってくれるだろうという考えを持っていることがあげられます。

特に初めての仕事の場合は、依頼者が当たり前と思っていて言語化していないことがないか作業内容を深堀りしていく必要があります。依頼者にとっては当然の知識なため、校正者なら知っているだろうと思い込んでいることは多いです。

校正に対する認識は人によって違う、という考えでやり取りをしましょう。

4. 校正のルールは様々

企業によって校正のルールが異なることはしばしばあります。たとえば、印刷会社の校正でいうと、原稿通りに文字や図版が組まれているかをチェックする校正作業に加えて、印刷に関する不備がないかも確認することがあります。

具体的には、トンボの位置塗り足しの有無折り加工パンチ穴判型などの確認です。雑誌や書籍などの文字情報をメインとした校正を行ってきた方は、このような用語はあまり聞きなれないかもしれません。Web校正専門の方は何のことかさっぱりわからないと思います。

印刷会社の校正になると、こうした体裁の確認作業もあるということを頭に入れておく必要があります。

職場環境が違えば、校正のやり方やルールも変わってくることを留意しておきましょう。

5. 特殊な校正のケース

◎ パッケージ(袋や箱)の校正

普段見慣れているお菓子の袋や商品の箱などを手掛ける会社の校正では、一般的な文字校正とは校正の観点が異なります。

文字や画像、イラストなどが指示通りに反映されているかを確認するだけではなく、実際に袋や箱としてできあがったときの文字の位置やデザインの見え方がおかしくないかもチェックします。サイズを定規で測ったり、校正紙を切り取って袋や箱になるように組み立て、実物をつくって確認したりすることもあります。

◎ フォーマットの校正

伝票や領収書、封筒といったビジネスフォーム(事務処理用に用いられる書式の決まった帳票)の校正では、フォーマットの確認作業が発生します。

たとえば、伝票の切り取りミシン目、複写させたい部分とさせたくない部分の位置、封筒の窓(宛先の見える部分)の位置や大きさ、糊代サイズの確認などを行います。

◎ 医療・美容系の校正

化粧品や医薬品のパッケージ、医療・美容系の記事を校正する場合、薬機法(旧:薬事法)の知識が求められるケースがあります。校正者は薬機法にも精通しているものだと当然のように思っている依頼者も存在するので、そうした知識が必要なのかどうかも事前確認が必要です。

このように、企業や媒体によっては、専門知識が必要だったり、仕上がりの体裁確認が校正作業の中で大きな比重を占めていたりする場合があります。

おわりに

依頼者と校正者が、校正の作業内容のすり合わせを行うことは、円滑な作業やトラブルの防止につながるとともに、お互いの信頼関係の構築にもつながります。仮に依頼者から作業内容・範囲を提示されなかった場合には、校正者のほうから必ず確認するようにしましょう。

また同じ依頼者であっても、媒体が違えば作業内容も異なり、確認のポイントも変わるということは多々あります。何も言われなかったからいつも通りやればいいではなく、念のための確認が必要です。依頼者側がうっかり伝え漏れていることもあるので注意しましょう。