
校正・校閲の未経験者が着実にスキルアップしていくコツ
校正の未経験者が、実務に入ったときに覚えることは山のようにあります。やり始めたばかりだと何が何だかわからず、
「この作業は何のためにやっているんだろう?」
「これでいいんだろうか?」
などなど、色んな疑問が湧いてくると思います。
でも、やがて教わったことの一つ一つが繋がっていき、全体像が見えてくるようになってきます。最初の内はムダだと思える作業でも、後々活かされる場面が必ずやって来ます。
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実務で培っていくスキルも、仕事への取り組み方へのちょっとした「コツ」を学ぶだけで、伸び率も変わってきます。
校正のスキルアップをしていくコツは3つ
スキルアップするためのコツの前に、基本中の基本として
「教わったこと」「自分が見落としてしまったもの」「自分で気づいたこと」「上司や先輩からのアドバイス」は、常にメモを取っておくということが大前提です。これは、学ぶ人の姿勢としては当然です。
それを踏まえて、スキルアップをしていくためには次の3つだけです。
1. 間違いのパターンを見つける
2. 間違いを推測する
3. 他の校正者の赤字や疑問出しを見る(←ココが一番重要)
1:間違いのパターンを見つける
これには、数をこなしていくのが一番の近道です。どんな仕事でもそうですが、数をこなして色んな間違いに触れていくことで見えてくることがあります。
最初の段階から失敗を恐れて、時間をかけ慎重にビクビクやっていても、将来を考えれば立派な校正者になるのは難しいです。
数をこなして、たくさんの間違いに触れていくことが大切です。そうすると、間違いにはある程度パターンがあることに気づきます。
書籍、雑誌、カタログ、パンフレット、Webなどの媒体ごとに起こりやすい間違いもあります。一方で、媒体に関係なく起こる間違いもあります。
そのパターンを見つけ出して類型化し、身に付けられるかが〝 最初の大きなカギ ″です。
間違いとその原因を一対一の関係で覚えていては、一人前の校正者になるには相当な時間が必要です。そのために、振り返り用のメモをいつも取っておくことが重要になってきます。
例えば、
原稿に「トル」「イドウ」「イレカエ」などの赤字がある場合、指示は違ってもその赤字によって引き起こされる間違いは似ています。そういう間違いを、頭の中でパターン化して覚えていく必要があります。
2:間違いを推測する
校正のスピードで伸び悩んでいる人は、これができていない人が多いように思えます。単純に間違いを見つけるのは、正しい研修を受けていたら誰にでもできるものです。
正しい校正経験を積んでゆけば、原稿の赤字を見ただけで「ここが間違っているかもしれない」と、ゲラを見る前からわかることも結構あります。また、「こういう誌面の作りだとこういう間違いが起こりやすい」なども次第にわかってきます。
それは、どんな間違いが起こるかをいつも推測しながら校正しているから養われていくものです。
【考えるポイントとして】
・ここに赤字が入った。この赤字の内容と連動している個所がないか
・ここが間違っている。おそらく、あそこも間違っているかも
・ページが入れ替わった。じゃあ、ここやあそこにも影響してくる
など、推測をたてながら校正していきます。
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常に考えながら、思考を張り巡らせて推測力を高めていきます。そうやって、最初のうちに推測する力を身に付けて、どこまで視野を広げられるかが校正者として重要になってきます。
最初は大変ですが、慣れていくと当たり前のように考えることができるようになります。原稿の赤字を見ただけで、ある程度起こりうる間違いは推測できるようになります。
3:他の校正者の赤字や疑問出しを見る
「間違いのパターンを見つける」と「間違いを推測する」は自分の努力次第です。ですが、この「他の校正者の赤字や疑問出しを見る」だけは、他の校正者の力を借りなければなりません。
しかもここが一番重要です。
数をこなすにも、自分だけではどうしても限界があります。また、自分だけの推測では自己流に陥りがちです。
”人は、自ら経験した範囲内でしか思考できない” という言葉もあります。
そんなとき、他の校正者が入れた赤字や疑問出しを見ることは、考え方を広げる最も効果的な方法です。見ると言ってもただ漠然と見ていてはダメです。
【考えるポイントとして】
・どういう経緯で、こういう赤字や疑問を入れたのか?
・自分だったら、この間違いを見つけられたか?
・見つけるためには、どうすればいいのか?
・他に同じような間違いがあるか?
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など、色々な角度から自分なりに考察していくことで視野が広がっていきます。
自分の視点だけではどうしても限界がきます。他者の視点も取り入れ熟考することで、スキルアップに繋がっていきます。
これは、校正を始めた頃で早ければ早いほどいいです。ある程度、自分の視点が確立されてからでは、他者の視点を受け入れにくくなってきます。
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時間があれば、他の校正者と一つの赤字からどんな間違いが起こりえるのかを、ブレインストーミングの要領で意見を出し合うのもいいかもしれません。
おわりに
1.間違いのパターンを見つける
2.間違いを推測する
3.他の校正者の赤字や疑問出しを見る
(1)と(2)は、常に考えておかなければいけません。そのため、間違いを常にノートに蓄積しいくことです。時間があるときにそれを眺め続けていれば、いずれハッキリとわかってくるようになります。
(3)は環境にもよりますが、上司や先輩にお願いするのが一番いいかもしれません。また、一定期間保管してある校正のゲラを借りて、他の校正者の赤字や疑問出しに目を通し、参考になるものをメモして蓄積していくのも効果的です。
いずれも地道な努力ではありますが、スキルアップには効果的で、一番近道な方法です。