
トル(トルツメ)・トルアキ(トルママ)
「トル」は校正記号の中でも、TOP5にあげられるぐらいよく使用するものです。
そんなよく使う「トル」ですが、
「トル」と似たものに、
・トルツメ
・トルアキ
・トルママ
などがあります。
初心者の方は、混乱するかもしれませんが、
・トル =トルツメ
・トルアキ=トルママ
なので、実質2つしかありません。
■「トル」と「トルツメ」は、取って詰めるという指示です。
■「トルアキ」と「トルママ」は、取ってそのままにしておくという指示です。
校正記号表の本則は「トル」と「トルアキ」にあります。
「トルツメ」と「トルママ」は許容です。
あくまでJISの印刷校正記号の基準ですので、どの校正指示を使うのかは自由です。ただ、複数の校正者で作業している場合などは必ず校正記号は統一するようにしましょう。
今回は、この単純な「トル」から起こる色々な事例を紹介したいと思います。
トルから起こる色々な事例
(1)取ったあとの前後の文が繋がらない
修正後↓
東京をには、渋谷とか道玄坂附近とか云われても
これは、よくある間違いです。取ったあとの仕上がりをイメージ出来ていない典型的な例です。
トルもそうですが、文字を挿入するときも同様で、前後の文はもちろん、取ったあとの文全体の流れも意識するようにしましょう。
(2)トル範囲があいまい
「谷や」の後ろの「、(読点)」の一部に赤字がかかっています。赤字を入れる側からすれば、読点は気にならないのかもしれませんが、校正側からすれば判断に迷うところですので範囲は明確に指示しましょう。
(3)トルことによって全体のバランスが崩れる
修正後↓
ここは、編集やデザイナーの職域かもしれませんが、段組の行数が左右で違うと、誌面全体のバランスが悪くなります。また、余計な空白スペースがあると、その部分が浮いて見えて違和感を抱きます。
文章を取った分だけ、新しく文章を足すのか、左の段から数行送り込んで調整するのかは、責任者しか判断出来ませんが、「何かおかしい」ということに対して、校正者としてアラートを出すのは自然なことです。
(4)絶対にやってはいけない「トル」
「メトシトリンカプセル」を「トルシトリンカプセル」に修正したい場合。
※トルシトリンカプセルは、骨粗鬆症・骨軟化症の改善に効果のあるお薬
上記の例は、絶対にやってはいけない赤字の入れ方です。
この場合、赤字の入れ方を工夫しましょう。
例えば、
"「メト」を「トル」に正ス " などのように文章で修正指示を入れてあげた方が無難です。
(5)二重線のトルは見落としやすい
トルやトルツメ以外にも削除指示として、二重の消し線を使用しているのを見かけます。
赤字を入れる側は、簡単なので便利ですが、その赤字を見る側にとっては、分かりづらいのでおススメしません。
下のような感じです。他のカ所に赤字が入っていると、埋もれて益々見落としやすくなります。
下のように、赤字を見る側にも分かりやすいように、二重の消し線だけでなく、明確に指示を入れた方がよいです。
おわりに
※文章中の校正記号は『JIS Z 8208:2007(印刷校正記号)』を参考にしています。
※校正記号の例文は、青空文庫:谷崎潤一郎の『細雪』の一文を使用させていただきました。
・校正記号のまとめ ≫ 使いたい赤字を五十音検索
【関連記事】
≫ 校正の基礎から勉強:クイズで学ぶ校正記号‼
≫ 校正記号:よく使う基本的なもの