
正体と並字(ナミジ)について
1:正体とは
正体とは、活字などの書体で、正方形の中におさまるように設計された文字のことをいいます。
【例】
この正体を基準に、長体と平体は成り立っています。
【大辞林 第三版より一部引用】
2:並字とは
並字とは、印刷で特殊でない書体や大きさの活字。一般に明朝体の全角のものをいいます。
校正では、正体と同じような意味で使われます。校正で赤字を入れるときは「ナミ」と書いたりします。
【日本国語大辞典より一部引用】
並字を掘り下げる
校正で並字が使用されるときは、辞書の定義と少し違い「何も書式設定されていない文字」の意味として使われることが多いです。
■ 何も書式設定がされていないとは?
太字・斜体・上付き・下付き・長体・平体などの設定が取れている状態のことです。校正で使用する並字には、辞書にある「明朝体の全角にする」という意味合いは少ないです。
【例】
■ 並字の赤字の入れ方
並字にしたい文字に対して「ナミ」や「ナミ字」と赤字を入れます。
【使用例】
・太字の設定をトルとき
・下付き文字の設定をトルとき
・長体の設定をトルとき
このように「ナミ」は、正体にする意味として使用されることが多く、便利なように思えます。
ですが、長体や平体に対して「ナミ」を使うのは違和感があります。長体や平体に対しては「正体」を用いるのが相応しいです。
また、上付き・下付きに対しても、正体に戻す校正記号がちゃんとあるので、それを用いたほうが適切です。
■ 並字についてまとめると
「ナミ」の赤字は、使い勝手が良く非常に便利なように思えますが、
・意味を知らない人が多い
・人によって使い方の範囲が曖昧
この2つの理由で、校正で使用するのは避けたほうがよいでしょう。
長体と平体について
1:長体とは
長体とは、正体に対し横幅を縮めた文字のことをいいます。主に横組みで使用されます。
【大辞林 第三版より、一部引用】
【例】
100%は「正体」になります。正体の文字を、長細くしたものが長体の文字です。ここでは、80%・50%・30%が長体の文字にあたります。
言い方としては「長体(率)50%」などと言ったりします。長体30%のように、極端に長体をかけすぎると文字が細くなりすぎ、可読性が損なわれるので長体のかけすぎはよくありません。
2:平体とは
平体とは、正体に対し縦幅を縮めた文字のことをいいます。主に縦組みで使用されます。
【大辞林 第三版より、一部引用】
【例】
基本的に長体と同じ考え方です。正体の文字を、平(たいら)にしたものが平体の文字です。
言い方としては「平体(率)50%」などと言ったりします。これも、長体同様、文字が平たくなりすぎると可読性が損なわれるので限度があります。
長体と平体はどんな時に使う?
この「長体」と「平体」は、一般的に文字が指定された範囲に収まらないときに使用します。デザインとして、意図的に長体や平体をかける場合もあります。
1:長体と平体 使用例
ここでは、長体をかけるときの例ですが、平体も考え方は同じです。
▼ グレーのテキストボックス内に文字を収めたい場合
(1)正体だと、3行目の「ています。」がはみ出してしまいます。
こういうときに長体をかけます。
(2)長体をかけたもの。
長体をかけることにより、文字の横幅が狭くなり、グレーの枠内に収めることができます。(1)に比べて文字が細長くなっていることがわかります。これで、長体80%です。
2:長体と平体 応用編
(1)前述の長体80%の文章に、下のような赤字が入った場合。
(2)修正結果は、このようになります。
ちゃんと修正が反映され、何もおかしくないように思えますが、長体の設定が残ったままになっています。
この状態が間違いとはいえませんが、そもそも長体は、文字が指定の範囲内に正体で収まらないから、長体をかけて収めているわけです。
そのため、文章量が減って正体で収まるようであれば、正体に戻してあげるほうが望ましいです。
(3)文章量が減って、スペースが生まれた場合。
(4)長体トルの指示を入れて、正体に戻してあげます。
(5)長体が取られ、正体でキレイに収まりました。
まとめ
(1)ナミ(並字)の校正指示は、次の理由のため使用するのは避けたほうがよい。
・意味を知らない人が多い
・人によって使い方の範囲が曖昧
(2)長体・平体は、基本文字が範囲内に収まらないから使用する。収まるようであれば設定をトル。
長体・平体ともに、正体に戻すほどのスペースが無くても、長体を緩める(長体60%を長体80%にするなど)ことで、少しでも可読性を上げることが望ましいです。