図表(棒グラフ)の校正[校正・校閲の練習問題]
今回は、グラフの部分的な修正でよく起こる間違いを問題にしています。グラフはあらゆる媒体で見られるものです。一度は校正したことがあるという方も多いと思います。
練習問題は、会社概要などで見られる業績の推移を示すグラフを想定しています。修正内容は、古い情報を削除して、最新の情報を追加するというよくあるものです。
非常によく見られる間違いなので、間違いだけでも覚えておけばきっとどこかで役に立つはずです。
1:練習問題 <問題>
▼ 問題
【前回のグラフ】をもとにして、作り変えた【修正結果】があります。
おかしな点を指摘してください。
【前回のグラフ】(2015年~2019年度)
【別紙原稿】
・クライアントから支給された最新のデータ
【修正内容】
・【前回のグラフ】から、「2015年度」を削除して「2020年度」の情報を追加
【修正結果】(2016年~2020年度)
2:練習問題 <解答>
▼ 解答
【解答一覧】
1. 位取りカンマの抜け×4か所(0000 → 0,000)
2. 年度の修正モレ(2017年3月 → 2018年3月)
3. 2020年の棒グラフの高さが足りていない
4. 折れ線グラフの位置 → 解説へ
3:練習問題 <解説>
▼ 解説
一見すると、【前回のグラフ】と【修正結果】の折れ線グラフは、同じ具合で推移しているので問題ないように思えます。棒グラフとの位置関係も変わっていないので、尚更正しいように見えます。
【前回のグラフ】:2016年~2019年
【修正結果】:2016年~2019年
ですが、【前回のグラフ】右側の縦第2軸の目盛りの上限は「150」です。一方、【修正結果】の目盛りは「160」となっています。
【前回のグラフ】 【修正結果】
これは、追加された2020年の一株当たり当期純利益が「159」で、【前回のグラフ】の目盛りの上限である「150」を超えていたため調整したからです。
目盛りの上限を調整したまではよかったですが、それに合わせて2016年~2019年度の折れ線グラフの位置までは調整しなかったために起こった間違いだと想定できます。
※ 1の位取りカンマのヌケの間違いは、右側の目盛りを調整したときに起こった不具合だとも考えられます。
【正しいもの】
おわりに
このグラフの問題で起こる間違いは、部分的な改訂ゆえに起こる間違いだといえます。新規でこのグラフを作成していれば、おそらくこのような間違いは起こらなかった可能性が高いです。
1の位取りカンマの抜けは、右側の縦第2軸の目盛りを調整した際に起こった不具合だと想定でき、2の修正モレは、前回の古い情報を差し替え忘れたせいで起こったものだと考えられます。
3や4の間違いは、グラフの校正時には非常によく見られるものです。グラフは、細かな数値が省略されることが多いので、数値を見るときにアバウトになりがちです。
校正するときは、横の目盛りと対応しているか、目視ではなく、ちゃんと鉛筆で線を引いて確認するのが見落としを防ぐ賢明なやり方です。