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差し替え(差し替える)の意味と使い方
校正の場面で使用される差し替えは「文章の差し替え」「図版の差し替え」などとしてよく使われる用語です。
差し替え(差し替える)とはどう意味か?
辞書では次のように定義されています。
■ 差し替える・差し換える・差替える・差換える
1. 他の物と入れかえる。取り替える。
2. 取り替えて別の物を差す。
3. 印刷で、校正の指定に従って、活字を取り替えたり組み替えたりする。
【出典:三省堂 大辞林 第三版】
3の意味から、校正で使われる「差し替え」は、組版のときから使われていた用語であることがわかります。
ただ、辞書の意味を読んでも、いまいちピンとこない方も多いと思います。現在では、活字を取り替えたり組み替えたりすることはほぼないからです。
校正記号表を基準とするなら、文字に対しては「差し替え」よりも「訂正」や「修正」のほうが相応しい表現になります。
「文字を差し替える」とも普通に使いますが、
「文字を訂正する」のほうが自然です。
一般的には、差し替えとなると
文字や単語単位よりも、文章、段落、資料など比較的大きな単位で使われることが多いです。
「コピーを差し替える」
「文章を差し替える」
「資料を差し替える」
また、差し替えは文章だけではなく
図版(画像、イラスト、グラフなど)に対してもよく使われます。そのため、差し替えと聞くと図版をイメージする方も多いかもしれません。
「画像を差し替える」
「表を差し替える」
校正では、「差し替え」と同じような指示として「入れ替え(入れ換え)」の指示があります。
「入れ替える(入れ換える)」と「差し替える」は、辞書によっては同義とされるものもありますが、校正ではニュアンスが違ってきます。
▼ 入れ替えと差し替えの違いは、次のようなイメージになります。
・文字単位の訂正は、以下の記事を参照ください。
1. 文章・段落・ページの差し替え
▼ 差し替えの校正指示
差し替えたい部分を囲み、「サシカエ」もしくは「サシカエル」と指示します。漢字で「差し替え」と書いても大丈夫ですが、カタカナ表記のほうが校正指示であることが伝わります。
1. 文章・段落単位の差し替え
【赤字例1】
「サシカエル」だけでは、何と差し替えるか不明なので、●●の部分に差し替える対象を入れる必要があります。
例えば、
「別紙のコピーにサシカエル」
「※1の文章とサシカエ」 など。
また、差し替える文章が作成中などで後日差し替え予定の場合は、「文章後送」「コピー後送」などと入れておきます。図版なら「図版後送」となります。「画像後送」「イラスト後送」など、図版の種類を述べてもわかりやすいです。
【赤字例2】
差し替えたい範囲を「Ζ」で指示するパターンもよく見られます。差し替え範囲が明確になるのでわかりやすいです。
2. ページ単位での差し替え
【赤字例】
ページが丸々差し替わる場合は、斜線を入れて指示を入れます。全体を丸で囲むより斜線のほうがわかりやすいです。
差し替えの赤字は、ページ上部の目立つ位置に大きめに入れるようにします。基本は、第三者が見やすければどこでもいいわけですが、ページ下部は死角になりやすいので避けたほうがよいです。
2. 図版の差し替えとよくある間違い
1. 図版の差し替え指示
図版の差し替え指示は、基本は文章の差し替え指示と同じです。
ただ、「Ζ」や「斜線」で赤字を入れるよりも、対象となる範囲を囲んで指示を入れるほうがわかりやすいです。
【赤字例】
2. 図版の差し替えでよく起こる間違い
■ 原稿に次のような指示があった場合
【原稿】
【別紙】
・別紙には Ⓐ と Ⓑ の2つの画像があります。
このときの修正結果で、
よくある間違いに以下のようなものがあります。
■ よくある間違い:例1
・画像の差し替え間違い
これは、単純な修正ミスになります。
複数の画像から選んで差し替えるとき、こういう間違いがよく起こります。
ここでは別紙に2つの画像しかありませんが、画像が数十点ある場合もあります。さらに、よく似た画像もあるので、差し替えの場合はパッと見てOKと判断するのではなく、画像の細部まで注意する必要があります。
■ よくある間違い:例2
・差し替えた画像とキャプションが対応しなくなる
【例1】でも同じことが起こっていますが、画像が差し替わったことによって、キャプションと対応しなくなるケースです。
これもよくある間違いです。キャプションの級数が小さいために見逃されることが多いです。
差し替え指示を入れる場合には、
・画像だけ差し替えるのか?
・キャプションも差し替えるのか?
・他に連動している箇所はないか?
を注意する必要があります。
校正する場合、
画像が差し替わっていたら大丈夫ではなく、
差し替わったことによって、どこかに不具合が起こっていないかも確認する必要があります。
以上、画像を例としてあげましたが、差し替わったことによって、何かと対応しなくなる間違いは画像以外でも頻繁に起こりえます。差し替わった箇所だけを確認するだけでは気づけない間違いばかりです。