文章を先に読むのがダメなわけ[どこから見る?どうやって見る?]
校正は、経験を積むことで見えてくることが多いように思われがちな仕事です。
ですが、経験を積まなくてもわかることも意外と多くあります。校正初心者でも、実践で生かせるテクニックは多いです。
校正者を目指すのであれば、『経験を積めば何とかなる』という漠然とした考えのもとで時間を費やしていくのはスキルアップに効果的とはいえません。どんな仕事でも近道はありませんが、最短距離で目的に辿り着く方法はあります。
この「どこから見て、どうやって見ていく」かも、経験を積んで行けば自分なりのやり方が見えてくるものですが、初心者にも適したやり方があります。
▼ ポイントは2点だけです。
1. ページ周りの確認
2. 各パーツのバランス確認
※パーツ… 画像・イラスト・文字情報(ブロック単位)etc.
面倒な確認作業のように思えますが、慣れると十数秒ぐらいで確認できます。
1と2を確認した後に、文字の細部の確認、素読みへと入ります。文字に専念するためにも、レイアウト的な間違いは先に潰しておくのが効果的です。
1. ページ周りとは版面の外側部分です。柱やノンブルが入るところです。
2. 次に版面内の各パーツのバランスを確認します。
画像やイラスト、文字情報(ブロック単位)などの配置がおかしくないか確認します。具体的には、ズレやパーツ同士のアキです。
以上のことを、初心者のうちから意識して見るクセを付けておくと、次第に意識せずとも誌面全体に目が行くようになります。
校正の仕事は、集中すると特定の部分に意識が集中されがちです。特に、文字情報だけを目で追ってしまう傾向にあります。校正を始めた頃に見方に変な癖がついてしまうと、版面内の文字ばかりに意識が集中することになってしまいます。
どこから見る?どうやって見る?の練習
次の誌面をゲラと想定して見ていきます。ファッション誌「InRed」2月号に掲載しているページです。
各パーツが規則正しくキレイに収まっているので勉強材料としては最適です。
1. ページ周りの確認
まずはページ周りから見ていきます。赤の矢印部分です。
チラシのようなペラ物(1枚物)なら、左右のアキは均等なことが多いです。一方、カタログのようなページの多いものになれば、ノドや小口の関係でアキが均等でないことが多いです。
見るポイント
1. ページ周りに余計な情報が入っていないか
2. 版面内に情報がキチンと収まっているか(版面外にはみ出していないか)
この練習用の誌面ではページ周りに白い罫線があるだけです。ノンブルは隠しノンブルです。
作業方針にもよりますが、柱やノンブルなどの複数ページにわたって共通する部分は、後で通しで確認することが多いです。そのため、細かな内容まで確認しなくて大丈夫ですが、入っているか入っていないかの確認はしておく必要があります。
2. 各パーツのバランス確認
ページ周りを見た後は、版面内の情報をブロック単位で確認していきます。
▼ ブロック単位で見るとは、このような感じです。
実際には、こんなにはっきりとブロック単位で認識することはできません。
あくまでもイメージですので。
▼ 元と比べるとこんな感じです。
見るポイント1
横目線で確認(→)
ブロック単位で見るように意識しながら、横目線でパーツにズレがないか(天地の位置が揃っているか)、パーツ同士のアキがおかしくないか確認していきます。
見るポイント2
縦目線で確認(↓)
横目線と同様です。位置とアキを確認します。
▼ 横目線と縦目線が合わさることで、各パーツの位置が適切か確認できます。
▼ 実際にやると、横と縦の目線を機械的に見ていくのは難しいです。
次のように目線がジグザクになることも多いです。
順を追って説明しましたが、慣れると「ページ周りの確認」も「横や縦の確認」も一気に見られるようになります。かかる時間は誌面の内容に左右されますが、この誌面だと15~20秒ぐらいです。
(※時間はちゃんとストップウォッチで測りました)
一番最初の状態に戻ります。
改めて最初の誌面を見ると、初めて見たときと見え方が違ってきませんか?
一番効率がいい覚え方は、実際に物差しで線を引いて、位置やアキを確認していくことです。手間ですが覚えは断然早いです。
学生の頃、英単語を覚えるときに、目で見て覚えるよりも、手で書いて声に出してその音を耳で聴いて感覚をフルに使ったほうが覚えやすかったと思います。それと同じです。
3. なぜ先に確認するの?
なぜ最初にレイアウト的な確認をするかという理由は次の2点です。
1. 文章を読んでいる途中に、レイアウト的な間違いに気づいてしまうと、そこで一旦手が止められるからです。文字情報に集中するために、最初に簡単な間違いを潰しておきます。
2. 赤字や疑問出し(鉛筆出し)があると、アキの不揃いなどが確認しづらくなってきます。
【例】
・赤枠のアキが不揃いのとき
A. 赤字ありの状態
B. 赤字なしの状態
AとBを見比べてみて、どちらの状態がアキの不揃いを見つけやすいかは一目瞭然です。
4. 予備練習
▼「InRed」2021年3月号(宝島社)のものです。
練習と同じシリーズですので、こちらのほうでも一度試してみてください。
【出典:InRed 2021年3月号(宝島社)】