四字熟語一覧[校正をするなら覚えておきたいよく使われる・間違いやすいもの]
文章から誤字やおかしな表現を見つけるには、漢字や熟語などさまざまな知識が必要です。特に「四字熟語」は書き手が間違いやすいので、注意深く校正しなければいけません。
四字熟語は、漢字4字で構成される熟語です。「以心伝心」「有言実行」など、古くから一まとまりで慣用的に用いられる言葉を指します。
日常会話の中で使う機会は少なく、どちらかと言えば文章で使うことが多いため、漢字の誤りなどが起こりやすいポイントといえます。
手書きの原稿でもミスが生じやすいですが、パソコンの変換ミスも多いので、校正中に四字熟語が出てきたら、正しい表記になっているか、意味がその文章に適しているか確認する必要があります。
覚えておきたい四字熟語一覧
以下は文章中でよく見られる、漢字を間違いやすい四字熟語を中心にピックアップしたものです。
読み方、意味、簡単な用例のほか、間違いやすい漢字の例も紹介しますので、ぜひ四字熟語力のアップにお役立てください。
※「注意 」は、間違いやすい表記を表しています。
あ行
□ 暗中模索(あんちゅうもさく)
意味:手掛かりのないまま、あれこれとやってみること。
例文:暗中模索で進めるしかない
□ 意気衝天(いきしょうてん)
意味:意気込みや元気が、この上なく盛んな状態。
例文:意気衝天の勢い
注意【意気昇天】
□ 異口同音(いくどうおん)
意味:多くの人がみな口をそろえて、同じことを言うこと。また、みんなの意見が一致すること。
例文:異口同音に賛成する
注意【異句同音】
□ 意志薄弱(いしはくじゃく)
意味:意志が弱くて決断することができなかったり、物事を我慢する気持ちが弱かったりするさま。
例文:彼は意志薄弱な人だ
注意【意思薄弱】
□ 一言居士(いちげんこじ)
意味:何事にも、必ず何かひとこと言わなければ気が済まないこと。
例文:父は一言居士な性格だ
□ 一日千秋(いちじつせんしゅう)
意味:非常に待ち遠しいこと。ある物事や人に「早く来てほしい」と願う気持ちが非常に強いこと。
例文:一日千秋の思いで待つ
□ 一陽来復(いちようらいふく)
意味:冬が終わり春が来ること。また、悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。
例文:一陽来復の兆し
□ 一挙両得(いっきょりょうとく)
意味:一つの行為で、同時に二つの利益が得られること。
例文:まさに一挙両得の政策だ
□ 一視同仁(いっしどうじん)
意味:すべてを平等に慈しみ差別しないこと。だれかれの区別なく同じように人と接すること。
例文:一視同仁の心をもつ
注意【一視同人】
□ 一心同体(いっしんどうたい)
意味:二人、または多くの人が心を一つにして、あたかも一人の人間のように固く結びつくこと。
例文:社員が一心同体となる
□ 意味深長(いみしんちょう)
意味:人の言動や詩文などの表現に、非常に深い趣きや含蓄があるさま。
例文:意味深長な笑みを浮かべた
注意【意味慎重】
□ 因果応報(いんがおうほう)
意味:人は良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
例文:因果応報と思ってあきらめる
□ 紆余曲折(うよきょくせつ)
意味:道や川などが曲がりくねること。また、種々込み入っていて複雑なこと。
例文:紆余曲折を経てまとまった
□ 汚名返上(おめいへんじょう)
意味:新たな成果を挙げて、悪い評判をしりぞけること。
例文:彼は汚名返上に成功した
注意【汚名挽回】
□ 温故知新(おんこちしん)
意味:前に学んだことや昔の事柄をもう一度調べたり考えたりして、新たな道理や知識を見出し、自分のものとすること。
例文:温故知新の精神を大切にする
注意【温古知新】
か行
□ 我田引水(がでんいんすい)
意味:他人のことを考えず、自分に都合が良いように言ったり行動したりすること。
例文:我田引水と思われるような行動を慎む
□ 画竜点睛(がりょうてんせい)
意味:物事を成し遂げるために重要な最後の仕上げのこと。
例文:この絵は画竜点睛を欠いている
注意【画竜点晴】
□ 勧善懲悪(かんぜんちょうあく)
意味:芝居や読み物などの創作における「善人が最後に栄え、悪人がこらしめられて滅びる」という筋書きのこと。
例文:この漫画は勧善懲悪だ
□ 危機一髪(ききいっぱつ)
意味:髪の毛一本ほどのごくわずかな差で、危機に陥りそうな危ない状態のこと。
例文:危機一髪のところで難を逃れる
注意【危機一発】
□ 起死回生(きしかいせい)
意味:滅びかけているものや絶望的な状態のものを、立ち直らせること。
例文:起死回生の策を講じる
□ 疑心暗鬼(ぎしんあんき)
意味:疑う気持ちによって何でもないことを恐ろしく感じたり、怪しく感じたりすること。
例文:すっかり疑心暗鬼に陥ってしまった
□ 旧態依然(きゅうたいいぜん)
意味:元のままで変化や進歩のないさま。
例文:旧態依然とした生活ぶり」
□ 玉石混交(ぎょくせきこんこう)
意味:良いものと悪いもの、優れたものと劣ったものが入り混じっていること。
例文:あの店の商品は玉石混交だった
注意【玉石混合】
□ 軽挙妄動(けいきょもうどう)
意味:軽はずみに何も考えずに行動すること。
例文:軽挙妄動を慎む
□ 乾坤一擲(けんこんいってき)
意味:運を天にまかせて、のるかそるかの大勝負をすること。
例文:乾坤一擲の試みをしなければならなくなった
□ 権謀術数(けんぼうじゅっすう)
意味:巧みに人をあざむく策略のこと。
例文:権謀術数をめぐらす
□ 厚顔無恥(こうがんむち)
意味:厚かましく、恥知らずなさま。
例文:そんなことを言うなんて厚顔無恥だ
□ 巧言令色(こうげんれいしょく)
意味:口先だけでうまいことを言ったり、うわべだけ愛想良くとりつくろったりすること。
例文:巧言令色に騙されてはいけない
□ 荒唐無稽(こうとうむけい)
意味:言説などがでたらめでよりどころがないさま。
例文:まるで荒唐無稽な筋書きだ
□ 古色蒼然(こしょくそうぜん)
意味:ひどく古びたさま。また、古めかしく趣きのあるさま。
例文:古色蒼然としたお寺
□ 五里霧中(ごりむちゅう)
意味:物事の様子や手掛かりがつかめず、方針や見込みが立たず困った状態。
例文:五里霧中の現状を打破したい
注意【五里夢中】
□ 言語道断(ごんごどうだん)
意味:言葉に表せないほど、あまりにもひどいこと。
例文:言語道断な行い
注意【言語同断】
さ行
□ 才気煥発(さいきかんぱつ)
意味:すぐれた才能が外にあふれ出ること。
例文:才気煥発な人だ
注意【才気換発】
□ 四分五裂(しぶんごれつ)
意味:ばらばらになってしまうこと。まとまりのあるものが秩序を失い、乱れること。
例文:党内が四分五裂している
□ 主客転倒(しゅかくてんとう)
意味:主と客の力関係が逆になること。物事の軽重・本末などを取り違えること。
例文:主客転倒した議論
□ 首尾一貫(しゅびいっかん)
意味:方針や考え方などが始めから終わりまで変わらないで、筋が通っていること。
例文:首尾一貫した論理
□ 枝葉末節(しようまっせつ)
意味:まったく重要でない些末な部分・取るに足らない部分。
例文:枝葉末節にこだわりすぎては進まない
□ 心機一転(しんきいってん)
意味:気持ちがすっかり変わること。
例文:引っ越しして心機一転する
注意【心気一転】
□ 針小棒大(しんしょうぼうだい)
意味:どうでもいいような些細なことを大げさに誇張して表現すること。
例文:広告は針小棒大になりがちだ
□ 新進気鋭(しんしんきえい)
意味:その分野に新たに参入した者が非常に気力盛んであるさま。将来が有望であるさま。
例文:新進気鋭のスタートアップ企業
□ 青天白日(せいてんはくじつ)
意味:よく晴れわたった青空と日の光。転じて、潔白で後ろ暗いことのないこと。
例文:青天白日の身となる
注意【晴天白日】
□ 責任転嫁(せきにんてんか)
意味:自分が引き受けなければならない任務・責務を、他になすりつけること。
例文:責任転嫁する人
□ 絶体絶命(ぜったいぜつめい)
意味:困難・危険から、どうしても逃れられないさま。追いつめられ、切羽詰まったさま。
例文:絶体絶命の窮地
注意【絶対絶命】
□ 戦々恐々(せんせんきょうきょう)
意味:おそれて、びくびくするさま。
例文:戦々恐々として待つ
注意【戦々競々】
□ 千篇一律(せんぺんいちりつ)
意味:作られた多くの文章や芸術作品などが、どれも同じ調子や体裁で変わりばえしないこと。
例文:千篇一律な映画だ
た行
□ 大言壮語(たいげんそうご)
意味:おおげさに言うこと。できそうにもないことや威勢のいいことを言うこと。
例文:必ず勝つと大言壮語する
□ 大山鳴動(たいざんめいどう)
意味:騒ぎだけ大きくて、結果は意外に小さいこと。
例文:大騒ぎしたが大山鳴動だった
注意【泰山鳴動】
□ 泰然自若(たいぜんじじゃく)
意味:落ち着いていて、どんなことにも動じないさま。
例文:泰然自若として騒がない
□ 大同小異(だいどうしょうい)
意味:だいたいは同じだが、細かい点に違いのあること。似たりよったり。
例文:大同小異な意見
□ 単刀直入(たんとうちょくにゅう)
意味:前置きなしに、いきなり本題に入り要点をつくさま。
例文:単刀直入に話を切り出す
注意【短刀直入】
□ 朝令暮改(ちょうれいぼかい)
意味:命令や政令などが頻繁に変更されて、一定しないこと。
例文:朝令暮改で申し訳ない
□ 適材適所(てきざいてきしょ)
意味:その人の能力・性質によくあてはまる地位や任務を与えること。
例文:適材適所の人事
注意【適才適所】
□ 天衣無縫(てんいむほう)
意味:物事に技巧などの形跡がなく自然なさま。
例文:天衣無縫な傑作だ
注意【天意無縫】
□ 天空海闊(てんくうかいかつ)
意味:大空と海が広々としていること。転じて、度量が大きく、こだわりのないこと。
例文:天空海闊な好青年
注意【天空開闊】
□ 当意即妙(とういそくみょう)
意味:即座に、場に適した機転を利かせること。
例文:当意即妙な対応をする
□ 同工異曲(どうこういきょく)
意味:音楽や詩文などで、その技量が同じでも味わいや趣きがまちまちであること。転じて、見た目は異なるが、内容は似たり寄ったりであること。
例文:最近の曲はどれも同工異曲だ
注意【同巧異曲】
□ 東奔西走(とうほんせいそう)
意味:仕事や用事のため、東へ西へとあちこち忙しく走り回ること。
例文:資金集めに東奔西走する
な行
□ 内憂外患(ないゆうがいかん)
意味:内にも外にも憂慮すべき問題が多いこと。
例文:内憂外患を抱える会社
□ 二束三文(にそくさんもん)
意味:売値が非常に安いこと。いくら売っても、もうけが出ないほどの安値で売ること。
例文:二束三文の品
注意【二足三文】
□ 日進月歩(にっしんげっぽ)
意味:日に日に、絶えず進歩すること。進歩の度合いが急速であること。
例文:日進月歩の先端技術
注意【日新月歩】
は行
□ 不倶戴天(ふぐたいてん)
意味:同じ天の下には生かしておかないという意味で、それほど恨みや憎しみが深いこと。
例文:不倶戴天の敵
□ 不偏不党(ふへんふとう)
意味:いずれの主義や党派にも加わらないこと。偏ることなく、公正・中立の立場をとること。
例文:不偏不党の立場を貫く
□ 付和雷同(ふわらいどう)
意味:自分にしっかりとした考えがなく、他人の言動にすぐ同調すること。
例文:多数派に付和雷同する
注意【不和雷同】
□ 粉骨砕身(ふんこつさいしん)
意味:力の限り努力すること。また、骨身を惜しまず一生懸命に働くこと。
例文:会社のために粉骨砕身する
注意【粉骨細心】
□ 平身低頭(へいしんていとう)
意味:ひたすら恐縮したり、ひたすら謝ったりすること。
例文:平身低頭して謝る
注意【平身底頭】
ま・や行
□ 無我夢中(むがむちゅう)
意味:ある事にすっかり心を奪われて、我を忘れてしまうさま。
例文:無我夢中で逃げ切った
注意【無我無中】
□ 無味乾燥(むみかんそう)
意味:なんの面白みも味わいもないさま。
例文:無味乾燥な文章
□ 満場一致(まんじょういっち)
意味:その場所にいる全員の意見が一つになること。だれも異議がないこと。
例文:満場一致で可決された
注意【万場一致】
□ 羊頭狗肉(ようとうくにく)
意味:見かけと実際の内容が一致しないこと。
例文:産地偽装は羊頭狗肉だ
その他の間違いやすい四字熟語
ことわざ・故事的な意味はないですが、漢字の覚え違いや変換ミスを起こしやすい四字熟語です。
おわりに
四字熟語はたくさんあって、意味や誤りやすい漢字まですべて覚えるのは大変です。
試験で出題されるなら別ですが、校正をするにあたっては完璧に覚えるというよりも、文章中で見かけたときに「たしかこれは間違えやすいものだったな……」という気づきレベルで覚えておけば十分です。
前述した四字熟語一覧で「注意 」がついているものは、特に気を付けておきたいところです。
大切なことは、「気づく → 辞書で調べる → 覚える」を繰り返して記憶に定着させていくことです。
記事作成にあたっては、日本エディタースクール出版部『標準 校正必携 第8版』を参考にしています。四字熟語だけでなく誤りやすい文例など多数記載されています。
校正者だけでなく、文章を書く方にも役立つ一冊です。ぜひ一度手に取ってみることをおすすめします。
「標準 校正必携」
(日本エディタースクール)
> 標準 校正必携