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校正の依頼を受けるとき・納品するときの確認ポイント[仕事の受け渡しでの確認事項]
「校正をしてください」と依頼された場合、どのような作業をすればよいでしょうか。「校正」と一言で言っても、誤字脱字、日本語表現、事実関係、体裁など、確認する点は多岐にわたり、クライアントがその中のどれを希望しているのかも案件によって異なります。
クライアントのイメージと校正した納品物との間に食い違いを生じさせないために、また仕事として受ける以上、あまりにも割に合わない条件での受注を避けるためにも、依頼を受ける際は作業の内容や予算などについてすり合わせる必要があります。
この記事では、そうした受注時のポイントについて、納品時の留意点とあわせて解説します。
▼以下の流れで、それぞれのポイントを見ていきたいと思います。
1. 校正の依頼を受けるときのポイント
① 予算・納期
↓
② 作業内容
↓
③ 納品の形式
2. 納品時のポイント
① 作業に漏れがないかを確認
↓
② 納品物に不備がないかを確認
↓
③ 請求のタイミングの確認
1. 校正の依頼を受けるときのポイント
① 予算・納期
仕事を打診された際は、まず予算を確認することをおすすめします。「校正 相場」で検索してみるとよくわかりますが、校正の料金は文字単価0.1円未満から数十円のものまで、かなりの幅があります。またページ単価で換算する場合や、イラストや表などの単価設定が難しいものは時間で換算するといったこともあります。
内容の難易度や作業量などによって適切な料金は変わるので、どの程度が妥当であるか一律に決めることは難しいですが、自分が受注してもよいと考える金額とクライアント側の予算があまりにかけ離れている場合、割に合わない仕事になる可能性が高いです。
まずはクライアント側が想定している予算を確認し、問題なく受けられそう、あるいは交渉の余地がありそうな場合のみ受注に向けて話を進めるようにすると、自分にとってもクライアントにとっても時間の節約になります。
予算の話になると言いづらいという方もいると思いますが、労働に対して適正な価格を受け取るのは当然のことなので臆せず交渉しましょう。
予算の次に重要なのが納期(スケジュール)です。ページ数や文字数などのボリュームを確認し、他の案件が入っていればそちらとの兼ね合いも含めて、受けられるかどうか検討しましょう。
② 作業内容
作業内容については、たとえば「素読みと事実確認(ファクトチェック)をしてほしい」というように、クライアント側から希望を提示されることがあります。
この場合は指示に沿った作業をすればよいですが、事実確認が含まれるときは、着手前に以下のようなポイントを確認しておきます。
・固有名詞や数値中心でよいか、因果関係などの周辺情報までチェックする必要があるか
・インターネットで調べられる範囲でよいか、書籍等の資料も参照する必要があるか。資料を参照する場合、クライアント側から提供されるか、自分で入手する必要があるか
・事実確認が必要な部分の分量(約○か所/約○ページ/全体にわたって多数 など)
事実確認の密度や分量によって作業時間は大幅に異なってくるため、前述の予算や納期も加味して検討する必要があります。予算や納期の見積もりを大きくオーバーしそうなときは、作業を始める前にクライアントに連絡し、作業量を減らす、あるいは締め切りを延ばすなど対応を相談しましょう。
クライアント側から作業内容の希望が提示されなければ、必ず校正者のほうから確認します。その際、クライアントが校正についてどの程度理解しているかに留意が必要です。
特にウェブ記事の校正案件など、クライアントが出版社ではない場合、校正を依頼することに慣れていない可能性があります。「校正」が具体的にどのような作業なのかを把握していないケースもあるので、「チェックするのは誤字脱字・日本語表現・内容の整合性・体裁でよろしいでしょうか?」というように、チェックポイントを具体的に示すとクライアント側が判断しやすくなります。なお、ここですり合わせた作業内容は、簡単な箇条書きでよいのでメモとして残しておくと、納品前のチェックリストとして役立ちます。
③ 納品の形式
どのような形式で納品するかについても事前に確認が必要です。主な形式としては以下のようなものがあります。
① 出力したゲラに手書きで指摘を書き込み、それを郵送等で納品する
② 出力したゲラに手書きで指摘を書き込み、それをスキャンしてPDFの形で納品する
③ PDFにコメント機能などを使って書き込む
④ ワード原稿を直接編集する
クライアントが出版社であれば、特に言及がなければ①の形だと考えてよいでしょう。ウェブコンテンツの校正では、ゲラという形にはせずテキストデータのみを校正する④の形が多く見られます。
なお、④のワード原稿を直接編集する形式の場合、作業内容に関して特に丁寧な確認が必要です。クライアント側が、よりよい表現に修正したり、情報が不足する部分について調べて補ったりするリライト作業まで校正に含まれると考えているケースがあるためです。
作業範囲の認識が食い違っていると、予算的に割に合わなかったり、納品後のクレームの原因となったりする恐れもあるため、「校正の作業範囲は原則として疑問やアラートを出すところまで」である旨を事前に伝えましょう。
2. 校正物の納品時のポイント
① 作業に漏れがないかを確認
納品前には最終チェックとして、依頼された作業を漏れなく行っているか確認します。このとき、前述の通り作業内容をメモに残してあれば、チェックリストとして役立ちます。メールのやり取り等を逐一見直していると、手間がかかり見落とす恐れもあるので、作業に関するポイントはひとつのメモにまとめておくのが効率的です。
② 納品物に不備がないかを確認
現物を送る場合は、封をする前にノンブルが通っているかの最終確認をするとよいです。資料や申し送り等があれば、それも忘れないように同封します。クライアントからの預かりものは、受け取った時点で点数を書き記しておき、納品時にも受け取ったときの点数と相違がないか確認します。
スキャンデータで納品する際は、ページが抜けていないか、端が切れていないかなどを確認しましょう。特に家庭用のスキャナーだと、業務用スキャナーと比べて紙送りのミスなどが起きやすいため、納品物として不備がないか注意が必要です。スキャンしたときに誌面の端が切れる場合は、少し縮小してスキャンするとよいです。
誌面の端が切れると、書き込んだ赤字や申し送りの指示も切れて読めなくなる恐れがあります。あらかじめスキャンして送るとわかっている場合は、誌面の端に文字を書くのは避けるようにしましょう。
③ 請求のタイミングの確認
実作業に集中していると忘れがちですが、報酬が支払われて初めて仕事が完了したと言えます。
クラウドソーシングであれば、クライアントの検収が終わった時点で支払いが確定するケースが多いです。そうしたサービスを介さずにクライアントと直接やり取りしている場合は、納品後に請求書の作成・送付が必要になることがあります。
請求と支払いのタイミングは、当月末払い、月末締め翌月末払いなど、会社によって異なります。初めて仕事をするクライアントには、どのタイミングで請求書を出せばよいか確認しておくとよいです。
なお、請求書のフォーマットはクライアント側から指定がなければ自由です。ウェブ上でも無料のテンプレートが多数公開されているので、使いやすいものを選びましょう。
【参考サイト>請求書の無料エクセルテンプレート(弥生株式会社)】
おわりに
以上、校正案件の受け渡し・納品時の留意点を解説しました。特に初めて仕事をするクライアントの場合、相手のバックグラウンドや仕事のスタイルがわからないことが多いです。小さなほころび大きな問題になるかもしれません。
やり取りの中で得られる情報を総合的に考慮して、クライアントの希望に沿ったものを納品できるように心がけましょう。