犬が出すのは前足なのに「お手」と言うのはなぜ?

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犬が出すのは前足なのに「お手」と言うのはなぜ?

「お手」という言葉は、「手」に接頭辞の「お」を付けて、語調をやわらげた表現です。「お座り」「お預け」などと同じく犬への指示に使われる言葉で、前足を差し出すよう促す合図です。

ただ、犬は4本の足で歩く動物で、前足も「足」の一つです。それなのに、この合図では「足」ではなく「手」という言葉を使い、「お手」と言います。

この言葉の由来ははっきりとはわかっていませんが、「お手」という表現には、犬の動作を人間の動作になぞらえる見方が表れていると考えられます。

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1.「お手」に見られる人間の動作との重なり

「お手」と言われると、犬は片方の前足を上げ、人の手のひらに載せます。このとき犬の前足は、歩いたり体を支えたりするためではなく、人に差し出すために使われています。その様子は、人が相手に手を差し出すしぐさや、人と人が握手をする動作によく似ています。ここでの前足は、人間の手のような役割を果たしているように見えます。

これに対し、犬が前足と後ろ足で地面を蹴って走っている姿を見て、「手を使って走っている」と感じる人は、ほとんどいないでしょう。この場合の前足は、歩いたり走ったりする役割を担っているため、自然に「足」と捉えられます。

同じ前足でも、動きや役割によって「手」に見えることもあれば、「足」に見えることもあります。「お手」で「手」という言葉が選ばれているのは、前足が人間の手のように使われる場面だからだと考えられます。

2. 動物の前足を「手」と呼ぶ日本語表現

日本語には、犬の「お手」のほかにも、動物の前足を「手」と呼ぶ表現があります。

身近な例が、「猫の手も借りたい」という慣用句です。これは、役に立ちそうもない猫の手さえ借りたいほど、忙しくて人手が足りない状況を表します。この慣用句の「手」には「働き手」という意味が重なっていますが、猫の前足をそのまま「手」と呼んでいる例でもあります。

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また、人のしぐさと重なる例としては、招き猫があります。招き猫は片方の前足を上げた姿をしていて、「右手を上げた招き猫」のように、その前足は「手」と呼ばれます。前足を上げた姿が、人の手招きのしぐさに見立てられているからです。

ほかにも、リスが木の実を抱えて食べる様子を「両手で上手に持っている」と言ったり、猫が前足でおもちゃを押さえる様子を「手で押さえている」と表現したりします。二足歩行をしない動物でも、前足の動きが、物をつかむ、抱える、押さえるといった人間の手の動作と重なるとき、人はその前足をごく自然に「手」と呼びます。

犬の「お手」も、前足を人に差し出す動作が人の手のしぐさと重なるという点で、こうした表現の一つと言えます。

3.「お手」という言葉から感じられる犬への親しみ

「お手」は、人が合図し、犬がそれに応えて前足を差し出すやりとりです。犬の前足を人間の「手」になぞらえる表現からは、人がこうした犬のしぐさに自分たちとの共通点を見いだし、犬を意思の通じ合う身近な存在として捉えている様子がうかがえます。「お手」という言葉には、犬への親しみが込められているように感じられます。

おわりに

「お手」という言葉の由来は、はっきりとはわかっていません。しかし、この言葉には、前足の動きを人間の手の動作に重ね、犬を意思の通じ合う身近な存在として見る感覚が表れているように思えます。

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