「伸びる」と「延びる」の違いは？正しい使い分けを例文解説

「伸びる」と「延びる」の違いは？正しい使い分けを例文解説

「のびる」を漢字で表記する場合、主に使われるのは「伸びる」または「延びる」という字です。この記事ではこれらの漢字の使い分けについて、用例を示しながら解説します。

「伸びる」と「延びる」の意味

『漢字の使い分けときあかし辞典』（円満字二郎、研究社）では、「伸びる」と「延びる」の使い分けについて、以下のようにまとめられています。

伸びる：あるものが長くなる場合、体の一部に関する場合
延びる：あるものの端が先へ移動する場合、広げる場合、時間に関する場合

「伸びる」の解説と用例

伸びる：あるものが長くなる場合、体の一部に関する場合

「伸びる」の「伸」は、にんべん（人）に「申（もうす）」を組み合わせた漢字です。「申」には「まっすぐにのばす」という意味があり、人が体をまっすぐに伸ばす様子が元になっています。このため、身体的な動きや、物理的に長くなる様子を表す際に「伸びる」が使われると理解すれば考えが深まります。

「身長が伸びる」「木の枝が伸びる」というように、そのもの自体が長くなる場合は「伸びる」を使います。『記者ハンドブック 第14版』（共同通信社）にも「縮の対語」との説明があるように、「縮む」の反対の意味の場合は「伸びる」を使うと考えるとわかりやすいです。たとえば、「ゴムが伸びる」「バネが伸びる」なども、縮んだ状態から長くなるため「伸びる」を使います。

「体の一部に関する場合」としては、「腰がまっすぐに伸びている」のように文字通り「伸びる」もののほか、「捜査の手が伸びる」のように比喩的なものもあります。

このほか、「成績が伸びる」「売り上げが伸びる」などのように、「良くなる」「向上する」などと言い換えられる場合も「伸びる」を使います。これについては、「縮んだり折れ曲がったりしているよりも長くなっている方が、ゆとりがあって“よい状態”だと感じられる」（『漢字の使い分けときあかし辞典』）ためだと捉えると、スムーズに理解できるかもしれません。

「延びる」の解説と用例

延びる：あるものの端が先へ移動する場合、広げる場合、時間に関する場合

「延びる」の「延」は、しんにょう（道を行く）に似た「廴（えんにょう）」と、「正」を組み合わせた漢字です。「廴」には「長く歩く」という意味があり、道などが長くまっすぐ続く様子が元になっています。このため、時間や空間が引き延ばされたり、先へ先へと広がっていったりするイメージで使われると捉えるとわかりやすいです。

「道が東に延びる」「郊外に延びるバス路線」といった表現は、「あるものの端が先へ移動する場合」だと考えられるため、「延びる」を使います。「広げる場合」の用例としては、たとえば「クリームが肌によく延びる」などがあります。

ただし、「延びる」を使うケースとして上記の例以上に頻繁に出てくるのは、「時間に関する場合」でしょう。「平均寿命が延びる」のように時間や期間が長くなる場合や、「締め切りが延びる」のように時刻や期限などが当初よりも遅くなる場合は「延びる」を使います。これについては、言い換え表現として「延長する」「順延する」などを想定すれば理解しやすいです。

また、少し特殊な例として「ラーメンがのびる」という表現があります。これは、時間が経つことで麺の食感が悪くなることを指すため、「延びる」が使われるのが一般的です。

おわりに

以上、「伸びる」と「延びる」の使い分けについて説明しました。

覚え方のポイントとして、「内的な力や勢いで大きくなるのが『伸びる』、時間や空間が外へ広がっていくのが『延びる』」とイメージで捉えるのも一つの手です。

ただし、これらの漢字の意味は重なり合う部分もあり、絶対にどちらかが正しいとは言い切れないケースもあります。 たとえば上であげた「クリームが肌によく延びる」については、『明鏡国語辞典』（大修館書店）は「延びる」としていますが、『記者ハンドブック』では「両表記あるもの」としています。どちらの漢字が適切か判断に迷う場合は、無理に漢字にせずひらがなで表記することも検討するとよいでしょう。