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目 次
グラフの校正ポイント[ミスを防ぐチェック方法を実例解説]
校正・校閲と聞くと、「誤字脱字」や「てにをは」など、日本語の細かなチェックを思い浮かべるかもしれません。しかし、文字情報以外にも確認すべき項目はたくさんあります。その一例が「図版」のチェックです。
図版とは、印刷物に使用される表やグラフ、イラスト、画像、図などの視覚的な要素を指します。図版は、さまざまな媒体で見られるものなので、校正をする機会も多いはずです。
この記事では、図版の一つであるグラフの校正方法について詳しく紹介しています。
▼ 表組のチェックポイントについては次の記事を参照ください。
【記事内のグラフの出典元】
・白黒の棒グラフ/円グラフ
総務省統計局ホームページ「平成30年住宅・土地統計調査 土地集計 結果の概要」を加工して作成
・カラーの棒グラフ
Graph Stock(グラフストック)
グラフの校正ポイント
次のグラフを使って実際に校正ポイントを解説していきたいと思います。
▼ グラフの校正ポイントは大きくわけて次の2つになります。
✔ Checkpoint1
→ グラフ単体での確認
✔ Checkpoint2
→ 誌面内での整合性(本文との整合性)
■ 元の資料と照合する?
校正作業の内容にファクトチェックが含まれる場合は、グラフを元の資料と突き合わせする必要があります。資料は、信用のおける書籍類やサイトで探す場合もあります。また、資料がクライアントの社内資料やまだ公開されていない最新情報などの場合は、クライアントから支給されることになります。
元の資料と照合をする際には、グラフ内の数値だけでなく、軸のタイトルや単位、グラフ全体のタイトル、出典なども忘れずに確認します。
Point① グラフ単体での確認
作業内容にファクトチェックが含まれない場合は、元の資料との照合は省略し、グラフそのものの確認から始めます。
以下は、ファクトチェックをしないグラフの校正方法になります。
1. 軸
■ 軸の確認
軸に関しては、次のポイントをチェックします。
・誤字脱字などがないか
・単位が入っているか、入っている単位が適切であるか
(上のグラフであれば、縦軸の(%)が単位になります)
・単位が年であれば、西暦・和暦が統一されているか
・目盛りの数値の間隔に法則性があるか
(上のグラフでは、すべて20.0刻みで統一されています)
・目盛りの間隔が数値と一致しているか
(上のグラフの軸の数値はすべて20.0刻みです。そのため目盛りが等間隔になっているかを確認します)
その他にも、数値があれば位取りカンマの有り無しのバラつき、小数点がカンマになっているといった間違いがよく見られます。グラフでは文字自体が小さくなりがちなのでカンマやピリオドなどの間違いが特に見落とされやすくなります。
(例) 1000 ↔ 1,000
(例)✕ 50,0 → ○ 50.0
2. 凡例
■ 凡例の確認
凡例については、色・説明文がグラフと対応しているかを確認します。カラーの場合はわかりやすいですが、モノクロの場合は白黒の濃淡や模様で表現されることが多く、注意して見なければ見分けがつかない場合もあります。上のグラフでは、黒色のみと網点模様で区別されています。
また、凡例の順番がグラフの順番と一致しているかにも注意します。上のグラフの凡例では黒が左、網点が右なので、棒グラフも黒が左、網点が右の位置になっています。ここでは棒グラフが2種類しかないのですぐにわかりますが、3つ以上ある場合には注意が必要です。
3. グラフの中
■ グラフの中の確認
グラフには棒グラフ・折れ線グラフなどの種類がありますが、いずれも共通して行うのは、グラフの数値と目盛りが合っているかのチェックです。
たとえばこのグラフであれば、一番左の黒い棒の数値は「76.8」です。軸が20%刻みなので、60%~80%の4分の3よりやや上の位置まで黒い棒が伸びていないといけません。
仮に「80.0%の目盛りより長い」「60.0%の目盛りより短い」などといった場合には申し送りが必要です。
ただし、グラフの長さを数値に合わせればいいとは限らないので注意しましょう。グラフの長さが正しく、数値のほうが間違っている可能性もあります。ファクトチェックをする案件であれば、どちらが正しいか判断できますが、ファクトチェックが含まれない案件の場合は判断できないこともあります。
そうした場合はどちらか一方に赤字を入れるのではなく、クライアントや現場の責任者に確認するのが適切です。
グラフの種類によっては次の点も確認が必要です。
・棒グラフ:棒の幅が統一されているか
・折れ線グラフ:折れ線の太さ、実線・破線などが統一されているか
・円グラフ、帯グラフ:割合のグラフの場合、合計が100%になるか
なお、割合の合計については、四捨五入等の関係でぴったり100%にならないこともあります。「合計は必ずしも100%とならない場合がある」といった注記がされているグラフを見たことがあるかもしれません。誌面内にそうした注記がない場合は、「割合の合計が100%になりませんがOKでしょうか?」などと念のためにアラートを出しておきましょう。
例として、次のグラフの数値は小数点以下を切り捨てにしたものです。
数値の合計は、70% + 15% +14% = 99%になります。このような場合、注記がなければアラートを出します。
4. タイトル
■ タイトルの確認
タイトルがグラフの内容に合致しているかを確認します。タイトルの確認は、軸や凡例等を一通りチェックし終わったタイミングが適切です。グラフの内容を把握できているので、タイトルと対応しているかどうかがすぐにわかります。
また、似たようなグラフが複数ある場合は、タイトルの入れ間違いが起こりやすいです。たとえば、以下の図1と図2のようなよく似たグラフでは注意が必要です。グラフの細部までしっかりと確認して判断する必要があります。
図1 平日にメディアを利用する平均時間の推移
図2 平日にメディアを利用する平均時間(年齢別)
図1も図2も縦軸は同じですが横軸が違っています。図1の横軸は「西暦」、図2は「年代」が入っています。そこからタイトルと一致しているかどうか判断します。
Point② 誌面内での整合性
これまではグラフ単体を見た際の校正でしたが、以下は誌面内での整合性の確認ポイントです。
1. 本文との対応
❶ 本文中にグラフの内容に関する記述がある場合は、グラフと一致しているか確認します。数値はもちろん、項目名(上のグラフであれば「自営業主」「農林・漁業業主」など)も照合の対象になります。
そのほか、「最も多いのは○○である」「近年上昇傾向にある」「○○と□□は2倍以上の差がある」といった記述についても、グラフから読み取れる内容であればチェックします。校閲的な視点が必要になります。
❷ 上のグラフは「図1-3」なので、誌面内の他のグラフを見て通し番号になっているか確認します。グラフの追加や削除によって、番号が通らなくなるという間違いもよく起こります。
また、本文中に「(図1-3参照)」などの文言があれば、本文の内容と図1-3とが合致しているか判断しないといけません。
2. グラフが複数ある場合
紙面内にグラフが複数ある場合は、グラフ同士の体裁が合っているかも確認します。既存のグラフと新規で追加されたグラフの体裁が違っていることはよくあります。
グラフは必ずしも同一ページに入るわけではないので、誌面全体を通して他のグラフと体裁が合っているかの確認も必要になってきます。
確認する項目としては、タイトルや出典の位置、グラフの色、文字の大きさ、フォントなどがあげられます。一度にまとめてチェックするのではなく、「タイトルの位置」「グラフの色」「フォント」というように要素に分解して一つずつチェックしていくと間違いにも気づきやすくなります。
おわりに
グラフは、なんとなく眺めるだけではチェック漏れが起こりやすいものです。そのため、「単位」「目盛り」「色」「文字の装飾」「罫線」などの要素ごとにわけて、一つひとつ確認していくとよいでしょう。
また、グラフ内の文字は小さくなりがちで情報量も多いです。確認できた箇所はマーカーなどで塗りつぶすなどの工夫をすると、見落としを防ぎやすくなります。