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「製作」と「制作」の意味と違い[使い分けの3つのポイント]
「製作」と「制作」は、どちらも「つくる」という意味を持った言葉です。意味が同じだけでなく漢字の見た目も似ているため、使い分けで悩む方も多いと思います。
「使い分けがわからない」「何となくはわかるけれども、はっきりと使い分けを知りたい」という方のために、2つの適切な使い方を紹介します。
「製作」と「制作」の使い分けの3つの基準
まずは次の3つのポイントを頭の中に入れておきましょう。この3つさえ覚えておけば大丈夫です。
1. ニュアンスとして、
「製作」は、実用性や量産性を重視
「制作」は、創造性やオリジナリティを重視
2. イメージ的には、
「製作」は「モノづくり」との結びつきが強い
「制作」は「クリエイティブ」との結びつきが強い
3. 「せいさく」を始める段階で、実体があるかないか
・実体がある →「製作」
・実体がない →「制作」
以上を踏まえて2つの使い分けをより詳しく見ていきたいと思います。
「製作」の意味と例文
製作は、一般に実用的なもの、大量に作るもの、道具や機械を使ってモノや設備を作るときに使用されます。
▼ 製作を使った例文は次のようになります。
・工場で部品を製作する
・図画工作の授業でラジオを製作する。
・学校でロボットの製作に挑戦した。
・机を製作している工場だ。
・この棚を製作するための工具。
どの例文からも、道具や機械を用いて作る様子が想像できます。何らかの素材(実体のあるもの)があって、そこから「作る」という行為に移ります。モノづくりをイメージした場合にもしっくりくると思います。
「制作」の意味と例文
制作は、芸術的なものや創作活動に関係するものを作るときに使用されます。創造性やオリジナリティが求められるものです。
▼ 制作を使った例文は次のようになります。
・環境美化のポスターを制作した。
・絵画や彫刻などの美術品を制作する。
・音楽や小説、エッセイなどを制作する。
・あの企業のロゴを制作した。
・テレビ局で番組の制作に携わっています。
絵画、音楽などの創作活動では、創造力や表現力が求められます。「作る」きっかけは頭の中(実体のないところ)から生み出されます。番組制作も同様に、実体のない企画案から徐々に形として作り上げられるものと考えられます。どの例文からも、クリエイティブなイメージが連想されると思います。
製作と制作?どっちか判断できない場合
「製作」と「制作」は、どちらが正しいか判断できないことがあります。
「私は、自動車の製作に携わっている」
「私は、自動車の制作に携わっている」
自動車だったら「製作」と思われるかもしれませんが、この文を見ただけではどちらの漢字が適切か判断できません。どちらも正しいといえます。
自動車の組み立て工程などに携わる方であれば、道具や機械を使って自動車を作る様子が想像できます。生産性や量産性が重視されるため、「私は、自動車の製作に携わっている」と表記するのが適切です。
一方、自動車の外観や内装のデザインに携わる方であれば、創造力やオリジナリティが重視されるので、「私は、自動車の制作に携わっている」とすることがきます。
同じ自動車メーカーの仕事でも、職種によって使い方が変わってきます。このような場合は、前後の文脈から「製作」と「制作」のどちらが適切か見極めることになります。一文だけを見て、使い方が正しいか間違いかを判断できません。
また現在では、絵や音楽もAIで作ることができます。ある程度AIで生成したものに対して、最終的な仕上げだけに自分が関わるなら、「絵の制作」よりも「絵の製作」とするほうがしっくりきます。
→「私は、この絵をAIで製作した」
ただし、個人によって解釈は変わるので、AIを介して生成したものであっても、自分が何らかのアクションを起こしてAIに生成させたものとし、その過程すべてを含めて自分の創造力や表現力と捉えた場合、「絵の制作」としてもおかしくありません。
→「私は、この絵をAIで制作した」
個人の主観によっても「製作」と「制作」の表記は変わってきます。単純に芸術作品や音楽だから「制作」を使うというわけではありません。
以上のように「製作」と「制作」の使い分けは、文脈やニュアンス、書き手の考え方によって変わることがあります。
仮に文章内に「製作」と「制作」の語が混在している場合でも、表記が揺れているわけではなく、意図的に使い分けられていることもあるので注意が必要です。
製作の例文:再確認
これまでの説明を踏まえ、「製作」を含む例文を読むと文の持つ印象も変わると思います。
・私たちは、この製品を3日間で製作しました。
・海外でパソコンの部品を製作しています。
・隣の工場で自動車の部品を製作しています。
どの例文においても、何か実体のあるもの(素材や部品など)から道具や機械を用いて作っていく「モノづくり」のイメージが連想されます。
制作の例文:再確認
同様に制作の例文を見ていきましょう。
・この映画は、有名な監督が制作したものです。
・私たちは、楽曲を制作するために集まった。
・彼は素晴らしい絵画を制作した。
これらの例文からは、「作る」にあたってクリエイティブな意味合いが含まれていると読み取れます。頭の中の実体のないものを形にしていく(作り上げていく)過程が想像できます。
おわりに
「製作」と「制作」は、どちらも「つくる」という意味を含んでいますが、手段、過程などの違いによって使い分けができます。
文章を書く際には、「製作」と「制作」に含まれるニュアンスを考慮して2つを使い分けていきます。そうすることで、伝えたい意図をより明確に表現することができます。
また文章を読む際も、そういうニュアンスをもっていると解釈することで文の理解がより深まります。