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文章を添削する目的と手順[基本フローとチェックポイントを実例解説]
校正や校閲ではない「添削」は、ただ文章を正すだけでなく、その文章を書いた人の文章力向上につなげる必要のある高度な技術です。テキストを介したコミュニケーションが多くなった今、「添削力」はビジネスパーソンにとって非常に重要なスキルになっています。部下の営業資料や顧客へのメールなどを日常的に添削している方も多いことでしょう。
しかしながら、「添削」とは何なのか、どうやればいいのか、体系的に学ぶ機会は少なく、自己流でやっている人も多いことと思います。この記事では、添削の基本的な考え方、テクニックを実例を交えてご紹介します。
(本記事ではビジネスの場面における「添削」を中心に紹介しますが、基本的な考え方はあらゆる文章の添削に応用することができます。)
添削とは?その目的と校正や校閲との違い
1. 添削のゴールは「書き手の成長」にある
校正や校閲と「添削」の決定的な違いはそのゴールにあります。校正や校閲の場合は、文章から不備を除き、文章を整えることをゴールにします。
しかし添削の場合は、文章を整えて終わりではありません。その文章の書き手が、次からは自力で整った文章が書けるようにすることがゴールです。
校正・校閲では、朱入れした原稿などで実施結果をフィードバックすればよいのですが、添削の場合は実施結果に加えて、次はどのような点を意識して文章を書くべきか、「講評」をフィードバックしなくてはなりません。
2. 添削では文章の内容自体も評価をしなくてはならない
校正や校閲の場合は、あくまで書き手の書いた文章内容を是とする前提で、それが読み手によりスムーズに伝わるよう文章を整えていきます。
一方で添削の場合は、文章内容そのものの妥当性を評価する必要があります。「そもそもこのテーマで書くことが適切なのか」「このテーマに対して、この具体例をあげるのは適切なのか」など、文章内容そのものの是非について、時には指摘をしなくてはなりません。
添削の基本フロー
添削を行うときに非常に重要なことは、体裁や表記面のチェック(いわゆる校正・校閲の視点で見るチェック)と、内容面のチェック(添削ならではの視点で見るチェック)を同時並行で行わないことです。
二つの視点で同時に見ていこうとすると、どうしても見落としが出てしまうため、一方のチェックを終えてからもう一方のチェックを行うようにします。
オススメは、先に体裁や表記面のチェックを一通り行い、文章をきれいに整えたうえで、より大きな視点である内容面のチェックに進む順番です。
添削のチェックポイントと実例
下記は、新入社員のAさんが書いた、自社で行うイベントを顧客に案内するためのメールです。この文章を例に「添削」の基本テクニックを紹介していきます。
まずは、どのように添削するか考えてみてください。
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1. 体裁や表記面のチェックをする
まずは誤字・脱字や、文法的な誤りなどを確認していきます。誤りとはいえなくとも、変えたほうがベターであるという部分も積極的に指摘しましょう。あくまでも、添削のゴールは書き手の成長にあるからです。
「例」の文章では、下記の点について指摘を入れる必要があります。
●誤字:授賞されたユーザー ⇒ 受賞されたユーザー
※賞を「授ける」のが「授賞」で、賞を「受ける」のが「受賞」
●誤りとは言えないものの直したほうがよい:「させていただく」の多用
※「させていただく」には「相手の許可を得て奏する」というニュアンスがある。
たとえば授賞式の開催は、特に読み手の許可を取ったものではないので「開催いたします」でよい。
2. 内容面のチェックをする
文章が一通りきれいに整ったら、内容面の確認に進みます。内容面の確認は、たとえば次のような点で行うとよいでしょう。
① 目的に沿った構成になっているか
たとえば「例」の文章は顧客へのメールであり、送付する目的は「近日開催するイベント(オンライン授賞式)を視聴してもらう」ことであると言えます。
しかし現状の文章では、最後まで読まなければ何を伝えたいメールなのかが分かりません。読み手の何かしらの行動を喚起したい目的の文章では、できるだけ早い段階で、読み手にしてほしいことを明確に述べることが重要です。
② 適切な具体例を出すことができているか
また、今回の文章の例では、受賞者以外にもオンライン授賞式の視聴を促すための仕掛けとして「ミニセミナー」を開催するわけですから、「視聴してみようかな」と読み手の興味喚起をするために、セミナーの内容を具体例として少し示したほうがよいと思われます。
このように、目的に即して具体例をあげられているか、テーマにあった適切な具体例を選べているかというのも、添削における重要なチェックポイントになります。
③ よい「まとめ」を入れられているか
文章のまとめの部分には、今一度自分の伝えたかったことを相手に念押しする役割があります。
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3. 講評をフィードバックする
添削を終えたら、書き手に結果をフィードバックしますが、初めに述べたように添削のゴールは「書き手の成長」にあるので、ただ朱入れした結果だけを戻してもあまり意味がありません。
なぜ誤りなのか、どこに違和感があるのか、どう修正するとよいのか等、「講評」をできるだけ詳しくフィードバックするようにしましょう。このとき「なんとなく変な気がする」といった主観的な講評に留まってしまうと、書き手は根本的な問題点を理解できず、ときには添削結果を不満に感じることもあります。
添削者は、自分の感じた違和感がどういうものかきちんと言語化し、説明する必要があります。
また、自分の文章を直されることに慣れていない人も多くいます。相手との信頼関係があまり築けていないうちは、修正すべき箇所だけをフィードバックしていくと、必要以上に落ち込ませたり、反発を生んだりすることもあります。初めに良い点をあげてから、修正点をフィードバックしていく等、伝え方にも配慮が求められます。
添削のチェックポイントのまとめ
「添削の基本フロー」で紹介した順に、添削においてチェックすべき項目をまとめました。
■ 体裁や表記面のチェック
・誤字・脱字はないか
・文頭と文末の呼応におかしなところはないか(主語と述語、能動と受動など)
・敬語の使い方は正しいか
・接続詞の使い方は正しいか(たとえば「なので」は文の初めには使えない。「だから」「したがって」などを使う。)
・同じような文末が続き、単調になっていないか
■ 内容面のチェック
・テーマに適した文章になっているか
・目的に即した構成になっているか(読み手に知ってほしいこと、してほしいことが早い段階で明確に書けているか)
・客観的な事実と、自身の意見・感想の混同はないか
・テーマに適した具体例をあげることができているか
おわりに
「添削」には、自身が文章を読んで感じたことを的確に言語化し、相手にフィードバックしなければならない難しさがあります。しかし、この記事で紹介したフローや基本的なチェックポイントに則って進めていけば、あまり経験がなくても、重要なポイントをおさえた添削ができるはずです。あとは場数を踏みながら、ご自身の「添削」力を高めてみてください。