現代最強のアナログチェック法「指差し確認」【見たつもりを防ぐシンプルな方法】

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現代最強のアナログチェック法「指差し確認」【見たつもりを防ぐシンプルな方法】

確認したはずの書類に間違いが残っていた。しっかりと画面を見たはずなのに設定が違っていた。ちゃんとメールの宛先を確認したつもりなのに、別の相手を選んでいた。

こうしたミスは、注意力が足りないから起こるとは限りません。多くの場合、確認が頭の中だけで終わり、「何を見て、何と比べ、どのように判断したのか」がはっきりしないまま作業を進めてしまうことが原因です。

仕事のデジタル化が進んでも、書類やPCの画面を見て、内容が正しいかどうかを判断するのは人間です。情報が多く、画面が次々と切り替わる環境では、対象が目に入っただけで「確認した」と思い込みやすくなります。

この「見たつもり」を防ぐシンプルな方法が、指差し確認です。

確認する対象を指で示すと、何となく見る状態から、確認すべき一点に意識を向けやすくなります。指差し確認は、紙にも画面にも使える、シンプルな確認方法です。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

「職場のあんぜんサイト:指差呼称」(厚生労働省)
「指差呼称のエラー防止効果の室内実験による検証」(鉄道総合技術研究所)
「指差しによる視線の焦点化」(鉄道総合技術研究所)
「鉄道総合技術研究所「指差喚呼のメカニズム」(鉄道総合技術研究所)

1. 指差し確認とは

指差し確認」とは、確認する対象を指で示し、その位置や状態を意識して確かめる方法です。対象を指しながら、「信号、よし」「電源、切、よし」のように声を出す方法は「指差呼称」と呼ばれます。

人間は、目に入った情報をすべて正しく理解できているわけではありません。とくに慣れた作業では、「いつもどおりだろう」と思い込み、視線を向けただけで確認したつもりになることがあります。

そこで、確認する場所を指で示すことで、「いま、どこを見ているのか」が明確になります。確認する対象に意識を向けやすくなり、見落としや思い込みによるミスを防ぐことにつながります。

2. 指差し確認でミスはどの程度減るのか

指差しをすると、確認すべき場所に視線を集中させやすくなります。さらに声に出すと、目で見た情報を言葉に置き換えるため、見落としや、似た情報を別のものと間違えることにも気づきやすくなります。

「指差呼称のエラー防止効果の室内実験による検証」では、ボタン操作の誤り率について、次の結果が示されています。

・何もしない場合:2.38% 
・声に出すだけの場合:1.00% 
・指差しだけの場合:0.75% 
・指差しと呼称を行った場合:0.38%

この実験では、指差しと呼称を組み合わせた場合の誤り率は、何もしない場合の約6分の12.38÷0.38でした。また、声を出さずに指差しだけを行った場合でも、誤り率は0.75まで低下しており、何もしない場合と比べて約3分の12.38÷0.75になっています。このことから、呼称を組み合わせることが難しい場面でも、対象を指差すだけで一定のエラー防止効果が期待できます。

ただし、この結果だけをもとに、「指差し確認をすれば、どの職場でも事故やミスが同じ割合で減る」とは言い切れません。実験と実際の職場では、作業内容や確認に使える時間、周囲の環境などが異なるためです。

ここで注目したいのは、何となく見るだけの場合に比べて、指差しや呼称を取り入れた場合のほうが、間違いが少なかったという点です。声を出さずに指を差すだけでも、確認する場所が明確になり、見落としや、似たものを別のものと間違えることを防ぎやすくなります。

3. 指差し確認の本当の役割

指差し確認の大切な役割は、「注意する」という漠然とした心構えを、具体的な確認動作に変えることです。

「間違えないように気をつけよう」と考えるだけでは、何をどこまで確認したのかが曖昧になりがちです。対象を指し、表示されている内容を読み、正しい情報と見比べることで、「どこを、何について確認したのか」が明確になります。

ただし、対象を指すだけで確認が完了するわけではありません。指差しは、確認すべき場所に意識を向けるための動作です。指した箇所の内容を読み、正しい情報と見比べ、問題がないと判断して、初めて確認が完了します。

4. 指先で確認する場所をはっきりさせる

情報の多い書類やPCの画面では、対象の上を視線が通っただけで「確認した」と思ってしまうことがあります。

対象を指で示すと、指先が目印になり、「いま、どこを確認しているのか」が分かりやすくなります。日付、金額、品番、氏名などを一項目ずつ指で追えば、確認している場所も見失いにくくなります。

とくに、よく似た数字や文字が並ぶ場面では、隣の行や列を見てしまったり、一部の項目を飛ばしたりすることがあります。指先を目印にすることで、こうした間違いを防ぎやすくなります。

鉄道総合技術研究所が紹介している実験では、パソコン画面上に並んだ点を数える課題を、「指を差しながら数える場合」と「指を差さずに数える場合」で比較しています。この実験は、呼称の有無ではなく、指差し動作の有無による違いを調べたものです。

実験の結果、指差しをしない場合の間違いの割合は約36%でしたが、指差しをした場合約20%に下がりました。

この結果から、指先を目印にして確認する場所を追うことは、見落としや数え間違いを減らす助けになると考えられます。

5. 仕事での指差し確認の使い方

指差し確認は、書類、PCの画面、メール、郵便物などを確認するときにも使えます。

確認する項目を指で示すことで、いま見ている場所がはっきりします。視線だけで確認すると起こりやすい、項目の見落としや行のずれ、隣の項目を確認対象と間違えることなどを防ぎやすくなります。

① 書類を見比べる
元の書類と作成した書類を並べ、同じ項目を交互に指しながら見比べます。

氏名、日付、金額、品番などについて、「元の書類の項目を指す、作成した書類の同じ項目を指す、内容が合っているか確かめる」という順番で、一項目ずつ確認します。

指す場所を一つに絞ることで、別の行や隣の項目を見てしまう間違いを防ぎやすくなります。

② PCに入力した内容を確認する
PC画面の入力欄を指先やペン先で示し、元の書類と内容が合っているかを一項目ずつ確認します。

氏名、金額、日付、数量などを順番に指すことで、確認する欄を飛ばしたり、隣の欄を見たりすることを防ぎやすくなります。

登録や送信を行う前には、特に重要な項目をもう一度指して確認します。

③ メールや郵便物を確認する
メールを送る前に、宛先、件名、添付ファイルを一つずつ指して確認します。確認する場所を指すことで、宛先の見間違いや添付ファイルの確認漏れを防ぎやすくなります。

郵便物では、封筒の宛名と中に入れる書類の宛名を交互に指し、同じ相手のものかを確かめます。一通ずつ指して確認することで、封筒と書類の組み合わせを間違えるのを防ぎやすくなります。

6. 今からできる基本手順

指差し確認の基本は、「指す・確かめる・見比べる・判断する」の4段階です。

① 指す:確認する対象を指先やペン先で示し、いま確認している場所をはっきりさせます。
  ↓ 
② 確かめる:氏名、日付、金額、品番など、指した箇所の内容を一項目ずつ確かめます。
  ↓ 
③ 見比べる:元の書類、予定、基準、送信先など、正しい情報と見比べます。
  ↓ 
④ 判断する
:内容が合っているか、問題がないかを判断してから、次の確認に進みます。

指差し確認では、対象を指すだけで確認が終わるわけではありません。指差しは、確認すべき場所に意識を向け、視線のずれや確認漏れを防ぐための動作です。指した箇所の内容を確かめ、正しい情報と見比べ、問題がないと判断して、初めて確認が完了します。

なお、声を出せる場所では、対象を指しながら、「宛先、○○様、よし」「金額、1万円、よし」のように、確認した内容と結果を口にすると、より意識を向けやすくなります。単に「よし」と言うだけでなく、何を確認したのかまで言葉にすることがポイントです。

声を出しにくい職場環境であっても、指先やペン先で対象を示し、確認する内容と結果を頭の中で言葉にするだけでも構いません。小さな声でつぶやいたり、声を出さずに口だけを動かしたりする方法も効果的です。

また、すべての確認作業で指差し確認を行う必要はありません。まずは、送信、登録、削除、発送など、間違えた場合の影響が大きく、後から取り消したり修正したりすることが難しい作業に取り入れるとよいでしょう。宛先、金額、日付、対象となるデータなど、特に重要な項目に絞ることで、無理なく続けやすくなります。

おわりに

指差し確認だけで、すべてのミスを防げるわけではありません。それでも、何となく見るだけの確認を、「どこを見て、何を確かめたのか」が明確な確認に変えることで、見落としや思い込みを減らし、確認の精度を高めることができます。

「見たつもり」を、「指して、読んで、確かめた」に変える。単純で誰にでも実践しやすく、紙の書類にもPCの画面にも応用できる指差し確認は、デジタル化が進む現代においても有効な、アナログの確認方法と言えるでしょう。

※本記事のアイキャッチ画像および本文中のイラストは、くまみね氏のキャラクター「電話猫」を使用し、コラージュおよびAIによる加工を施したものです。