「校正をお願いします」と言われたらどこまでする? 依頼時に確認すべき作業範囲

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「校正をお願いします」「校正をしてください」と言われたらどこまでする?

「校正をお願いします」「校正をしてください」という依頼ほど、作業範囲が曖昧になりやすいものはありません。

誤字脱字だけを直すのか。表記を統一するのか。不自然な表現も整えるのか。日付や数値、固有名詞などの事実関係まで確認するのか。

依頼者と校正者の認識がずれたまま進めると、
そこまで確認しなくてもよかったのに…
事実確認までしてくれると思っていた…
などといった行き違いが起こります。

校正者が依頼者の要望にできるだけ応えようとし、依頼者が文章をよりよくしたいと考えるのは自然なことです。しかし、あらゆる点をむやみに確認することは、時間や予算の面から現実的ではありません。

そのため、事前に校正者と依頼者で、何をどこまで確認するのかを調整しておく必要があります。

1.「校正」の解釈は人によって違う

① 狭い意味での「校正」

狭い意味での「校正」とは、原稿ゲラ(校正刷り)を照合し、文字や記号が原稿どおりに反映されているかを確認する作業です。

原稿に「2026年9月23日(水)」とあるのに、
ゲラが「2026年9月23日(水 」となっている場合。

ゲラの文末の「」が抜けています。制作過程で何らかのミスが生じ、「」が抜けたと考えられます。これは原稿とゲラに相違があるため、校正の確認対象です。

一方、原稿そのものに誤りがある場合、原稿とゲラを照合するだけでは、その誤りを見つけられません。

原稿に「副都心線は、2003年に開通された」とあり、
ゲラも「副都心線は、2003年に開通された」となっている場合。

ゲラには原稿の内容がそのまま反映されており、両者に違いはありません。そのため、照合上は問題がなく、狭い意味での校正では「問題なし」と判断されます。

ここで「副都心線が実際に2003年に開通したかどうか」は、原稿とゲラを照合するだけでは分かりません。情報が事実として正確かどうかを判断するには、別途確認が必要です。原稿とゲラを見比べる作業では、原稿を正しいものとして扱うため、それ以上は踏み込まないのが基本だからです。

② 広い意味・実務での「校正」

実務では、原稿とゲラの照合だけでなく、通読による文法の確認、表記の統一、内容の確認なども、広く「校正」と呼ばれることがあります。

・誤字、脱字、変換ミス
・句読点、記号、括弧の不備
・改行、段落、見出し、レイアウトの崩れ
・原稿と掲載内容の相違
・指定された表記ルールとの違い
・表記の不統一
・明らかな文法上の誤り
 など

このように、実務上の「校正」は、狭い意味での定義だけでは作業範囲を判断できません。「校正」という言葉に対する理解や、想定する作業範囲は、企業や人によってさまざまです。

実際の文章では、誤字脱字、文法上の誤り、固有名詞や数値の間違い、表記ゆれなど、確認すべき事項が数多くあります。しかし、すべての項目を確認するには、相応の時間とコストがかかります。校正者の判断だけで範囲を決めてしまうと、依頼者との間に認識のずれが生じます。

そのため、何をどこまで確認するかを、両者で取り決める必要が出てきます。

2. 校正の作業範囲を段階に分けて考える

実務上、「校正」として扱われる作業には幅があります。作業内容は、確認する対象や深さによって、次の段階に分けて考えることができます。

① 第一段階:原稿とゲラとの照合

通常、依頼者に逐一確認せずに修正できる、もっとも限定的な範囲です。原稿とゲラを照合し、原稿との違いや、文字・改行・レイアウトの不備を確認します。

・原稿にある文字の抜け
・空行や改行位置の不備
・括弧の不対応
・句読点の不備
・レイアウトの崩れ 
など

それ以上の作業については、依頼内容に応じて範囲を決めます。

② 第二段階:通読し、日本語として明らかな誤りを見つける

原稿とゲラを照合するだけでは見つからない、日本語として明らかな誤りを、文章を通して読んで確認します。原稿どおりに組まれていても、誤字脱字や助詞の抜け、文法上の誤りが含まれていることがあります。

この段階では、文章の意味を変えず、一般的な日本語のルールに照らして明らかに誤っている箇所を指摘します。

・誤字脱字
・助詞や助動詞の抜け、誤用
・主語と述語の不一致
・言葉のつながり方の明らかな誤り
・文脈に照らして明らかな語句の誤用
・敬語の明らかな誤り
 など

一方、文法上は誤りではないものの、より分かりやすくできる表現や、解釈が分かれる表現については、次の段階で確認します。

③ 第三段階:読みやすさや分かりやすさに関する改善点を見つける

文法上の誤りとはいえないものの、読み手に意図が伝わりにくい表現や、読みやすさを損ねている箇所を確認します。

この段階では、辞書や信頼できる資料を確認しても、どの表現が最適かを一律に判断できないことがあります。そのため、校正者の判断だけで修正するのではなく、確認事項として依頼者に伝え、意図を確認するのが安全です。

・意味を捉えにくい文
・複数の意味に解釈できる表現
・冗長な表現
・説明の重複
・文体や語調の不統一
・読者に伝わりにくい専門用語
 など

たとえば、
「新しい技術を使った担当者向けの研修」という表現では、新しい技術を使うのが「研修」なのか「担当者」なのか、分かりにくい場合があります。

新しい技術を使った(担当者向けの)研修
「(新しい技術を使った担当者)向けの研修」

このような場合は、校正者の解釈ではなく、依頼者に意図を確認します。

④ 第四段階:内容の正しさを確認する

固有名詞、日付、数値、引用などの事実関係を確認する作業です。書かれている内容が事実として正しいか、説明に問題がないかまで確認する作業は、一般に「校閲」や「ファクトチェック」と呼ばれます。ここでは一次資料や公的機関のウェブサイトなどで多角的に確認する必要があります。

・出典や引用元を確認できない
・制度名や固有名詞が不正確に見える
・最新情報と異なる可能性がある
・文書内で用語や対象の定義が食い違っている
 など

文章として綺麗に整っていても、内容まで正しいとは限りません。こうした問題は、原稿とゲラを照合するだけでは判断できない部分です。

たとえば、
「前年比120%増」と「前年比120%」では意味が異なります。「前年比120%増」は前年の2.2倍、「前年比120%」は前年の1.2倍を意味します。このような内容は、公的な統計や元の調査資料などの一次資料にまでさかのぼらなければ確認できません。

内容に関する事実確認は、非常に時間のかかる作業です。

3. 校正の品質は、赤字や疑問出しの数では決まらない

入れた赤字や疑問出しの箇所が多いほど、丁寧な校正であるとは限りません。

必要のない指摘を大量に行えば、変更箇所は増えます。それによって原文の意図が薄れたり、依頼者の確認作業が増えたりすることもあります。校正者の善意が、必ずしもよい結果につながるとは限りません。

校正の品質は、次のような点に表れます。

・明らかな誤りを見逃さない
・文書全体の基準を一貫させる
・意味を勝手に変えない
・不明点を曖昧なまま処理しない
・修正理由を説明できる
・依頼された範囲を超えて勝手に修正しない

重要なのは、直せるところをすべて直すことではありません。直すべきところを、適切な方法で処理することです。

おわりに

校正は、依頼者の意図を尊重しながら、文章の誤りや分かりにくい箇所を見つけて整える作業です。

仮に依頼された範囲以外に気になる箇所を見つけた場合は、校正者だけで判断せず、依頼者に伝えて確認するようにします。そうすることで、お互いの認識のずれを防ぎ、よりよい校正につながります。

校正を依頼されたときは、何をどこまで確認するのかを、あらかじめ明確にします。これが校正の最初の仕事です。