![「~に際して」と「〜に関して」の意味と違い[使い分けのポイント解説]](https://kousei.club/wp-content/uploads/2025/06/On-the-occasion-of-and-with-respect-to.jpg)
「〜に際して」と「〜に関して」の意味と違い
「〜に際して」と「〜に関して」は、ビジネス文書や学術的な文章でよく使われる表現です。一見似ているように見えますが、それぞれ意味や使い方に明確な違いがあります。ここでは、それぞれの表現の意味や使い分けについて紹介します。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)
・『精選版 日本国語大辞典』(小学館)
・『広辞苑 第七版』(岩波書店)
1.「〜に際して」の意味と使い方
「〜に際して」は、ある出来事や行動を始めるタイミングや、特別な節目を強調したいときに使われる表現です。この表現は、「〜のときに」「〜を始めるにあたって」といった意味を持ち、何かを始める直前や開始時点に焦点を当てるときに使います。
<使用例>
・新プロジェクト開始に際して、ご挨拶申し上げます。
・入社に際して、書類をご提出ください。
・ご結婚に際して、心よりお祝い申し上げます。
このように「際して」は、特定のタイミングや機会に配慮や心構えを示す場面でよく使用されます。同じような意味を持つ「~するときに」などよりも、「〜に際して」のほうが特定のタイミングを強く意識させる場面に相応しい表現です。
<「~に際して」と似た表現>
・〜のときに
・~するときに
・~の機会にあたって
2.「〜に関して」の意味と使い方
一方、「〜に関して」は、ある話題やテーマについて、その内容や背景、関連情報を述べるときに使われる表現です。話題の範囲や領域を明確に示したいときに使われるのが特徴です。対象や内容自体に焦点を当てるときに使います。
<使用例>
・新制度に関しては、後日ご案内します。
・業務改善に関して、ご意見をお聞かせください。
・本件に関して、意見交換を行いました。
このように「関して」は、ある話題や対象と関連する内容について述べるときに使われる表現です。「〜について」とほぼ同じ意味で、内容全般やその背景・関連情報・意見などに触れるときに適した表現です。
<「~に関して」と似た表現>
・~について
・~に対して
・〜を巡って
3. 使い分けのポイント
前述したように「〜に際して」は、ある出来事や行動が始まる特別なタイミングを強調したいときに使います。たとえば、「転職に際して」は「転職のタイミングで」という意味です。一方、「〜に関して」は、ある話題や物事について述べる場合に使います。たとえば、「転職に関して」は「転職について」という意味になります。
両者の使い分けは、「いつのことか(タイミング)」に注目するか、「何についてか(内容・範囲)」に注目するかで決まります。次の例文を見て、それぞれの意味の違いを考えてみてください。
<例1>
A. 契約に際して必要な書類
B. 契約に関して必要な書類
Aの意味は、「契約のタイミングで必要な書類」となるのに対し、Bは「契約に関連する全般的な資料」という意味になります。
<例2>
A. ご利用に際しての注意
B. ご利用に関しての注意
Aの意味は、「実際に利用するそのときに注意すべき点」となり、Bは「利用という行為全体についての注意点」という解釈になります。
4. 使い分けの練習問題
以下の文では、「際して」と「関して」が使われています。前述の使い分けのポイントを踏まえて、AとBのどちらの表現が適切か考えてみてください。
<Q1>
A. 「新政策に際して、多くの意見を集めています。」
B. 「新政策に関して、多くの意見を集めています。」
答え:「意見を集める」は内容に関わる行為なので、「関して」のBが適切です。
<Q2>
A. 「会社説明会に際して、受付で資料が配布されます。」
B. 「会社説明会に関して、受付で資料が配布されます。」
答え:「資料が配布される」のは説明会という特定の機会なので、「際して」のAが自然です。
<Q3>
A. 「新社屋への移転に際して、記念式典を開催します。」
B. 「新社屋への移転に関して、記念式典を開催します。」
答え:「記念式典」は移転という特定のイベントのタイミングで行われるものなので、「際して」のAを使います。
<Q4>
A. 「環境問題に際して、パネルディスカッションを開催しました。」
B. 「環境問題に関して、パネルディスカッションを開催しました。」
答え:ディスカッションのテーマが環境問題そのものであり、特定のタイミングを示すわけではないため、「関して」のBが適切です。
おわりに
「〜に際して」と「〜に関して」は、似ているようで使い方が異なる日本語表現です。
「〜に際して」は、特定の出来事や節目のタイミングを強調する表現です。何かが始まる直前・直後や、重要な転機の場面で使います。一方、「〜に関して」は、特定のテーマや話題に関連する内容を述べるときに使います。対象となる事柄全体について言及する場合に適しています。
つまり、「〜に際して」はタイミングや場面を強調する表現であるのに対し、「〜に関して」はテーマや対象そのものに焦点を当てる表現です。状況に応じて適切な表現を選ぶことで、より正確に意図を伝えることができます。