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【Webの校正】時間がない!急ぎの仕事を効果的に進める2つのコツ
校正にかける時間がなく、「まだ十分に見直しができていない…」「このまま提出しても大丈夫だろうか…」「この記事を公開するのは心配だ…」など、不安に駆られた経験が一度はあるかもしれません。
完璧な文章を目指したい気持ちは誰もが持っているものです。しかし、限られた時間の中で隅々までチェックするのは現実的とは言えません。むしろ、焦りから気持ちが落ち着かず、すべてが中途半端になるリスクがあります。
時間がない中で、校正で失敗する最大の要因は、すべてを完璧にしようとする素直すぎる真面目さが、すべての確認作業を中途半端にさせてしまうことです。
時間がない場合は完璧を追求するのではなく、最悪のケースを想定して、ここだけは押さえるべきというポイントに全力を注ぐことです。それには、「選択」と「集中」が欠かせません。
「選択」と「集中」の考え方は単純です。
① 最も致命的なミスを特定する=「選択」
② そこにだけ全力を注ぐ=「集中」
この2つの考えにより、短時間でも効果的に重要な部分のミスを潰すことができます。
どんなに綿密に計画的に進めていても、さまざまな要因が重なり時間がひっ迫することがあります。一番の対策はスケジュールの再調整ですが、そうはいかないこともあります。
校正では、文法、誤字脱字、論理展開、データの正確性など、多くの要素をチェックしますが、時間がない中でいつも通りあれこれやっていると確実に時間切れになります。
1. 一番目立つ箇所から優先して確認
校正の時間が限られているときは、読み手の立場になって記事を見て、真っ先に目線が行く箇所から重点的に確認していきます。
①「タイトル」や「見出し」
タイトルや見出しは、記事の中で最初に目に入る部分です。この部分に誤りがあると、文章全体の印象が悪くなります。たとえ本文が完璧でも、「タイトル」や「見出し」に誤字があると、それだけで記事の信憑性を疑われます。
読み手が最初に見る箇所は、そこだけで文章全体の良し悪しを判断される部分です。何よりも優先して確認すべき点です。
▼ タイトルや見出しの間違い例
【誤り】
(1)年末年始を一人で楽しむ方法7戦
(2)AI構成のメリット
(3)文章の品質は校正・校閲がキモイ‼
【正解】
(1)年末年始を一人で楽しむ方法7選
(2)AI校正のメリット
(3)文章の品質は校正・校閲が肝‼
(1)~(3)はいずれも変換ミスによって起こる可能性のあるミスです。余力があれば、(1)は誤字だけでなくタイトル通り、楽しむ方法が『7つ』本文に記載されているか、さらっと見て確認しておきたいポイントです。
② 強調されている文字や装飾部分
文章内の太字や下線、色付きの文字などは、読み手の視線を意図的に誘導させ、特に読んでほしい部分です。読む人によっては、強調部分だけを拾い読みして文章の概要を把握することもあります。この視線誘導が仇となり、強調表示部分に些細なミスがあった場合でも、目につきやすく印象に残ります。
▼ 強調表示の間違い例
【誤り】
(1)期間限定:今田家の特別価格!
(2)お問い合わせはAM9:00~PM17:00まで受付
(3)【注意】パスワードは8文字異常で設定してください。
【正解】
(1)期間限定:今だけの特別価格!
(2)お問い合わせはAM9:00~PM5:00まで受付
(3)【注意】パスワードは8文字以上で設定してください。
(1)は太字の一部の誤りです。(2)は下線の範囲と「PM17:00」の表記の誤りです。(3)は色付き文字の一部の誤字です。これらは強調表示されているために、ちょっとした間違いであっても余計に目立ちます。
2. 横書き文章で目立つアラビア数字
広く一般の方に読まれるWebの記事では、文章内で数字を使用することで説得力や正確性が増すため非常に効果的です。しかしその反面、もし数字に誤りがあった場合には、記事の信頼性を一瞬で失わせてしまう致命傷ともなります。
Webで目にする記事は横書きで書かれていることが多く、一般的に横書き文章での数字表記はアラビア数字(1、2、3……)が使われます。
このアラビア数字は、日本語の文章内では良くも悪くも目立ちます。理由としては、画数が多く複雑な漢字や曲線的なひらがなの中に、直線的・簡潔な形状であるアラビア数字が混じると、形の違いが際立つからです。
また数字を扱う際には、その「単位」にも同じように注意を払う必要があります。たとえば、「10cm」と「10m」、「200人」と「200万人」のように、単位が違うだけで文章の意味が大きく変わってしまいます。単位の間違いは、数字そのものを間違えた場合と同じくらい深刻な問題につながります。
▼ 数字の誤り例①
2025年12月12日(土)に新商品の発表会を行います。
この場合は、年月日の「数字」の確認だけでなく「曜日」も確認する必要があります。
実際に2025年12月12日は「金曜日」なので、「2025年12月12日(金)」になると考えがちです。しかし、日にちが間違っていて曜日が正しいとも考えられます。「2025年12月13日(土)」が正しいとなる可能性です。
「2025年12月12日(金)」、あるいは「2025年12月13日(土)」のいずれか判断がつかないため、すぐに確認を取りましょう。
また「午前」「午後」、「AM」「PM」なども数字だけに目が行っていると間違いに気づかないことがあるので注意しましょう。
「2025年12月12日午前8:00~」
「2025年12月12日午後8:00~」
「2025年12月12日AM8:00~」
「2025年12月12日PM8:00~」
たった一文字の違いで、12時間もの差があり意味が大きく変わります。
▼ 数字の誤り例②
今年の3月の平均気温は、37.3度でした。
日本の3月の平均気温としては、37.3度は現実的ではありません。この場合、前後の文章から「3月」という月が誤りなのか、あるいは「37.3度」という気温の数値が誤りなのかを判断する必要があります。
▼ 数字の誤り例③
2026年8月より、当社では新たなサブスクリプションサービスを開始します。
仮に「2026年」を「2025年」に修正する場合、単純に数字だけを直すだけでなく、時制(過去形・未来形)の整合性についても修正が必要です。
記事を公開するタイミングを考慮し、未来のことについて記述する場合は、未来形(~します)を使用します。記事の公開時点ですでに過去の出来事となっている場合は、文章も合わせて過去形(~しました)に修正する必要があります。
未来形 2026年8月より、当社では~~を開始します。
↑
未来のことなら
<記事を公開する日>
過去のことなら
↓
過去形 2025年8月より、当社では~~を開始しました。
こういったミスは、文章全体を読み返すのではなく、日時があったら文末と対応しているかどうか、狙いを定めて確認するのが間違いを素早く見つけるコツです。
▼ 数字の誤り例④
当社のサービスは業界最安値の月額800円(※1)です。
「業界最安値」や「No.1」といった表現は、特に慎重な確認が求められます。これは誤った情報が虚偽表示と見なされ、大きな問題に発展する可能性があるためです。
この場合、「800円」という金額の正しさだけでなく、以下の点も確認します。
① 比較対象となる他社の金額を調査し、本当に「最安値」であるか。
②「※」などの注釈がある場合、その注釈の先にある内容(例:「2025年9月時点の調査」)まで確認し、その根拠が妥当であるか。
3. 印象に残る固有名詞の間違い
固有名詞の間違いは致命的なミスにつながります。中でも企業名・人名・製品名などは、たった一文字の間違いでも非常に目立ち印象に残ります。
企業名、人名などの誤りは、別の企業や人名を指すことになってしまう場合もあります。また、製品名に誤りがあれば売上げにも直結します。固有名詞一つの間違いで、文章全体が意味をなさなくなることもあります。
現在では、固有名詞については、文章を一から読んで人の目で見つけるというよりも、PCの検索機能(Ctrl + F)を使って、特定の単語を検索する方法が便利です。時間がない中でも焦らずにチェックできます。
▼ 固有名詞の間違い例
企業名やブランド名は、独自の表記ルールを持っていることがよくあります。特に、英語やカタカナの表記は注意が必要です。見慣れている名称ほど、パッと見て判断しがちなので、公式サイトなどで正しい表記を確認する癖をつけておきましょう。
✕ Toyota → すべて大文字
○ TOYOTA
✕ NETFLIX → 頭文字のNのみ大文字
○ Netflix
✕ Youtube → YとTが大文字
○ YouTube
✕ 富士フィルム → 小さい「ィ」ではなく、大きい「イ」
○ 富士フイルム
✕ キューピー → 小さい「ュ」ではなく、大きい「ユ」
○ キユーピー
✕ Google Map → Mapではなく、Maps
○ Google Maps
✕ Yahoo Japan → 感嘆符「!」が付き、「JAPAN」はすべて大文字
○ Yahoo! JAPAN
一方、人名や地名には、旧字体や異体字が使われるなど、同じ読み方でも複数の表記が存在することがあります。一概にどれが正しいとも言えません。以下はほんの一例ですが、漢字表記には多くのバリエーションがあるので注意しましょう。
さいとう:斎藤 or 斉藤 or 齋藤 or 齊藤
わたなべ:渡辺 or 渡邊 or 渡邉
やまさき:山崎 or 山﨑
たかはし:高橋 or 髙橋
たろう :太郎 or 太朗
おちゃのみず:御茶ノ水 or 御茶の水 or お茶の水
かすみがせき:霞が関 or 霞ヶ関
じゆうがおか:自由が丘 or 自由ヶ丘
おわりに
時間がないときの校正は、完璧を目指すのではなく、限られた時間でも文章のクオリティを底上げする方法を考えることです。短い時間でも工夫次第で文章の質は上げられます。それには、完璧さよりも致命的なミスがないことを重視するのが大切です。
ポイントは、何を優先して直すべきかを見極める判断力と、限られた時間で集中して取り組む姿勢です。時間がないときは、致命的なミスだけは絶対に潰すという『選択』と『集中』がカギとなります。


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