文章校正ではなぜ一文字ずつ確認する必要があるのか?[タイポグリセミアが原因⁉]

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校正ではなぜ一文字ずつ確認する必要があるのか?[タイポグリセミアが原因⁉]

校正をする際の読み方は、普通の読書とは異なります。読書の場合は、文字そのものに集中するというよりは文章全体としての内容を理解しようとしますが、校正の場合は一文字一文字を丁寧に確認します。

このような読み方をする理由のひとつとして、この記事では「タイポグリセミア現象」を紹介します。

タイポグリセミア現象とは?

次の画像は、和菓子店の中尾清月堂が2018年に出して話題になった広告です。書かれている文章を読んでみてください。

タイポグラセリア
【株式会社中尾清月堂:富山県高岡市宮田町2-1 >公式サイト

日本語として正しい文字の並びではありませんが、それほど問題なく読めたのではないでしょうか。このように、文字の順番が入れ替わっていても、語の最初と最後の文字が正しければ読めてしまう現象を「タイポグリセミア現象」といいます。

人間は文章を読むとき、文字の正確な並びではなく文字列全体として意味を認識しているようです。そのため、上の例のように文字単位で見ると意味をなさない文章でも、単語単位で捉えると読めてしまうのです。

こうした補完能力は、日常の中で文章を読む際には役立ちますが、校正においては邪魔になります。校正をする際は脳内補完が働いてしまわないように、単語単位ではなく文字単位で読む必要があるのです。

なお、知らない単語は脳内で補完できないので、タイポグリセミア現象は起きません。逆に、よく知っている言葉ほどスムーズに補完されて読めてしまうため、読み飛ばさずに気を引き締めてチェックする必要があります。

校正時に注意すべきポイント

校正の際、タイポグリセミア現象に特に注意が必要なのは、ひらがなやカタカナが続いている箇所です。校正者側の脳内補完が起きやすいことに加え、書き手側の作業の面でも誤りが生じやすくなっているためです。

近年では文章のほとんどが、手書きではなくデジタル入力の形で作成されています。文字の順番を間違えて入力した場合、漢字を含む表現であれば、変換する際にうまくいかなかったり、読み返したときにおかしな文字になっていたりして気づきやすいです。

しかしひらがなやカタカナが続く場合は、変換作業をしなかったり文字列全体を一括でカタカナ変換したりすることで、間違いが残ったままになりやすいのです。このことも念頭に置いて、校正する際は一文字ずつ丁寧に追わなければなりません。

また、校正でチェックすべき要素は、文字の入れ替わりのような単純な誤字だけではなく、日本語表現・内容の整合性・事実関係など多岐にわたります。単独なら気づけた文字の入れ替わりであっても、他の要素が絡んでくることでそちらに注意が向き、見落としてしまうケースもあります。よくあるパターンを以下に挙げるので、校正してみてください。

注意すべき例1

例文

世論の指示を得るためあゆらる手段を講じる。

解答

世論の支持を得るためあらゆる手段を講じる。

【解説】
文字が入れ替わった部分の近くに他の誤りがあるパターンです。校正全般に言えることですが、誤りを1か所見つけるとそこに意識が集中するため、近くにある別の誤りに気づきにくくなります。ひとつ見つけたからといって油断せず、もれなく拾えるよう集中力を保ちましょう。

注意すべき例2

例文

シドニーはオースラリトアの首都である。

解答

キャンベラはオーストラリアの首都である。

【解説】
内容の誤りと文字の入れ替わりが混在している例です。
オーストラリアの首都は、シドニーではなくキャンベラです。その点ももちろんチェックすべきではありますが、そこに気を取られるあまり、「オースラリトア」になっていることを見落とさないようにしましょう。

注意すべき例3

例文

危ない!と思ったらためわらず通報を
朝ラッシュ・帰宅ラッシュの時間帯を中心に、線路への転落事故が多くなっています。危ない場面を見かけましたら、すぐに係員等にお知らせください。

解答

危ない!と思ったらためらわず通報を
朝ラッシュ・帰宅ラッシュの時間帯を中心に、線路への転落事故が多くなっています。危ない場面を見かけましたら、すぐに係員等にお知らせください。

【解説】
大きな文字や目立つ部分ほど見落とすというのは、校正者なら身に覚えがあることでしょう。タイトルや見出し、キャッチなどについても本文と同様に、一文字ずつチェックすることが重要です。また、デザインに惑わされて誤字を見落とさないためには、文字の大きさや色といった体裁面のチェックと文字情報としてのチェックを別々に行うとよいです。

タイポグリセミア現象を避けるための校正のやり方

ここまで述べてきたように、タイポグリセミア現象による見落としを防ぐためには文字を一文字ずつ追うことが重要です。

具体的なやり方としては、文字を指で押さえながら読む、読み終えた文字を鉛筆やマーカーで塗りつぶすなどがあります。会社によってやり方が定められている場合もありますが、そうでなければ自分にとってやりやすい方法をとるのがよいでしょう。

なお、文字だけに集中しているとタイポグリセミア現象の対策にはなりますが、文章の内容が頭に入りにくくなります。文字と文章の両方に同時に気を配るのが難しい場合は、2回に分けて読むのもひとつの方法です。1回目は単語単位で読んで内容を理解し、2回目はひらがなやカタカナが連続している箇所を中心に、文字が入れ替わっていないか一文字ずつ確認することで、精度の向上につながります。

タイポグリセミア
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