目 次
校正の赤入れで万能な指示「体裁アワセル」と「体裁ソロエル」
「体裁」とは、見た目や外観、様子、形式のことを言います。出版物においては、書籍や雑誌、カタログなどの外見や形式に関連して使用されます。具体的には、レイアウト、フォーマット、フォント、画像の配置などにまで及びます。体裁は、出版物において読みやすい外観を作り出すための重要な要素です。
この体裁に関わる対象を細かく見ていくといくつもあります。
・フォント、文字サイズ
・行間、字間
・ページの余白、天地左右のバランス
・表紙、扉、目次、索引などのレイアウト
・図表、画像などの配置
・見出し、段落、箇条書き、キャプションなどの書式
・ルビ(振り仮名)、傍点、圏点などの形式 など
これらの要素が体裁に関連し、バラつきがあれば整えることになります。いわゆる「誌面の体裁を整える」と言います。編集者やデザイナー、オペレータなどでは頻繁に使われる用語です。
また、Office Wordにも『文字体裁』という項目があります。禁則処理や文字の間隔など文書の見た目に影響する設定です。文書作成に携わる方なら出版業界にいなくても、体裁という言葉をご存知の方も多いでしょう。
■辞書での体裁の意味
① 外から見たときの感じ。様子。外観。
② 詩文の格式。また、しっかりと整った形式。
③ 他人から見られた時のかっこう。みえ。面目。
【出典:精選版 日本国語大辞典】
1.「体裁を合わせる」と「体裁を揃える」の意味
この体裁を校正指示として使用する場合は、「体裁アワセル」や「体裁ソロエル」などとして使います。2つは同じ意味として使われることもありますが、少し意味合いが違ってきます。状況に応じて適切に使い分けをしましょう。
① 体裁を合わせるの意味
体裁を合わせるは、ある基準や他のものに合わせて整える場合に使います。
▼ 図でイメージすると次のようになります。
①を基準とし、他の②や③を合わせる感じです。
この場合には、合わせるを使います。
② 体裁を揃えるの意味
体裁を揃えるは、複数のものを同じに状態にする、統一する場合に使います。
▼ 図でイメージすると次のようになります。
バラつきのある①②③を、同じ状態に整える感じです。
この場合には、揃えるを使います。
<「体裁を合わせる」と「体裁を揃える」の使い分け>
「合わせる」も「揃える」も結果として、同じ状態になるためどちらを使ってもおかしくない場合もあります。
使い分け方のポイントは、基準があるかないかです。基準があれば「合わせる」、とにかくばらつきを直したい場合には「揃える」と考えておくと大丈夫です。
2.「体裁を合わせる」と「体裁を揃える」の校正での使用例
校正指示として、「体裁を合わせる」と「体裁を揃える」はどういうときに使うか?
最適な使用場面は、2つ以上の変更箇所があるときです。
たとえば、
「フォント」や「級数」「書式(太字や斜体等)」などが間違っているときにまとめて指示をするときに便利です。赤字がくどくならず、誌面をスッキリさせることができます。
詳しくは後述しますが、簡単に言うと「游ゴ15Q、太字にスル」という赤字を「体裁アワセル」のように使います。
以下、次の例文を用いて体裁の使い方を解説していきます。
この①②③の文は、フォント、級数、斜体や太字などの書式がバラバラでいくつも相違点があります。
仮に違う箇所が一つだけなら、「フォント正ス」や「太字にスル」などで指示すれば大丈夫ですが、違いが多いと指示をするのも文字数が多くなり大変です。また、太字や斜体は一目見て誰でもわかりますが、フォントや級数は見ただけでは正確にわからないこともあるので、正確に指示するのに悩む方も多いでしょう。
このような場合に、「フォントや級数、斜体や太字などの書式」をすべてひっくるめて「体裁」という言葉に置き換えます。
① 体裁を合わせるの赤字の使用例
体裁を合わせる校正指示は、「体裁アワセル」「体裁アワス」などと表現します。
【例1】
<赤字例> ※①に合わせる場合
他の表現として、「①に体裁アワス」「①と体裁同じに」などと言い換えることもできます。
フォントや級数、斜体を個別に指示するよりも、具体的に正しい状態の①を指して指示するので、修正側にとってもそこを見ればどの状態に合わせるべきか一目で判断できるのでメリットが大きいです。
<結果> ※①はそのまま
「体裁アワセル」だけでも指示として伝わる場合もありますが、「合わせる」を使用する際は、どこと合わせるのかを明確に指示するのが基本です。
【例2】
例外として、次のように①と②が同じで、③のみが違う場合。合わせるものが決まりきっていて、誰が見ても迷うことがない場合は「体裁アワセル」のみの使用も可能です。
<赤字例>
「①や②と体裁アワス」「他と体裁アワセル」としても全く問題ありません。そのほうが親切な指示になります。
この条件においては、他にも「体裁正ス」「体裁正シク」と表現することも可能です。
<赤字例>
【例3】
離れた位置にあるものと体裁を合わせたい場合には、合わせる対象を「Ⓐ」などとして指示する方法もあります。
<赤字例>
Ⓐでなく、①でも大丈夫ですが、なるべく文章中で使用しないものを選びます。①や②は見出しなどでもよく使用されるので混同されるので注意しましょう。
② 体裁を揃えるの赤字の使用例
体裁を揃えるを校正指示として使用する場合は、「体裁ソロエル」とします。
「揃える」は「上ソロエ」「右ソロエ」のように文章の見た目を統一するときにも使用します。バラバラのものを同じ状態にするイメージです。
ニュアンスとしては、何を基準にするかは不明だがとにかくすべてを統一するという感じです。
<赤字例>
<結果>
3.「体裁を合わせる」と「体裁を揃える」のまとめ
① 体裁アワセルの使用例
合わせるのイメージ
体裁を合わせるは、ある基準や他のものに合わせて整える場合に使う。
<赤字例>
校正指示:「体裁アワセル」「体裁アワス」「体裁同じに」など。
使用の際は「○○と体裁アワセル」のようにどこと合わせるかを明確にする。
<結果>
② 体裁ソロエルの使用例
揃えるのイメージ
体裁を揃えるは、複数のものを同じに状態にする、統一する場合に使う。
<赤字例>
校正指示:「体裁ソロエル」
<結果>
おわりに
「体裁アワセル」や「体裁ソロエル」の赤字は、応用が利くので役立つ校正指示です。それぞれのニュアンスの違いを理解し、状況に応じて適切に使い分けましょう。