
『InRed』2020年5月号(宝島社)
2020年4月13日 (月) 発売
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目次
校正校閲の基本的な間違いをファッション雑誌から学ぶ
ファッション誌、InRedをパラパラと捲っていて
「ここ間違えやすいかも」
「こういう間違いよくある」
というものを集めてみました。
知識として持っておかないと見つけられない間違いや、嫌というほどよく見る間違いなど色々です。
色々な間違いを知ることによって校正の見方も変わってくると思いますので、実務に役立ててもらえる部分もあるかと思います。
【1~11の誌面情報は、宝島社 InRed(インレッド)5月号より引用】
1:表紙と背表紙
表紙は、その印刷物の「顔」にあたる部分です。その印刷物に関与する全員が見ているとまではいきませんが、関与する職種の誰かは必ず見ています。
なので、表紙に間違いがないかというとそうでもなく、意外と間違いは多いです。
最終の段階まで細かな修正が入り続けることや、誰もが見ているという安心感からなのか、最後の最後までスルーされている間違いなどはあります。
特に背表紙があるものは要注意です。背表紙は、表紙と違って見ている人が圧倒的に少ないです。
平置きにした状態では背表紙は死角になってわかりませんが、棚に並べた状態だと背表紙しか目に入りません。印刷物の第二の顔といえます。そのため、背表紙の間違いはほぼ100%発覚します。誤字脱字だけではなく、文字の高さなどが間違っているケースが多いです。
校正するときは、表1・表4・背表紙のセットでするのが普通ですが、イレギュラーな進行をしている場合は注意が必要です。
表周りの校正は、たとえ赤字が少なくてもダブルチェックの対象にしておいたほうがよいです。
2:イラスト内の文字
校正時、イラストは一つのものとして捉えられがちですが、イラスト内に入っている情報が間違っていることはよくあります。特に上のような英語表記のものはスペルミスが目立ちます。
ただ、イラスト内の文字まで校正すべきかどうかは事前に確認しておいたほうがいいです。クライアントから支給されたイラストなどは、間違いを指摘しても、そう簡単に修正できるものではないのでママいく場合もあります。
3:画像と画像とのアキ
誌面内に画像が多いとき、どのようにレイアウトするかでデザイナーは苦心するかと思います。画像の配置に気を取られるあまり、画像間のアキが不揃いな場合があります。
▼ このように画像が多く、画像のサイズも色々だと、アキが不揃いになってくる可能性が非常に高いです。
▼ 【上の誌面の一部拡大】
赤丸部分のような画像間のアキが、レイアウトが変わったり画像が差し変わったときなどに、不揃いになってくることがあります。
▼ 画像のアキは常に等間隔でもなく、意図的に縦と横で画像のアキに差をつけることで、視線誘導を図っていることもあります。
画像と画像とのアキは、一度知ってしまうと意識しなくても、不揃いなものがあると目に入ってきます。しかも、不揃いなものは結構あります。
4:発売予定
4月中旬発売予定などの、○○予定の文言。
InRedの発売時期は4月中旬なので、ここでは「予定」で問題ないですが、校正するときは、その印刷物の発行時期も考慮しなければいけません。
たとえば、6月15日発売の雑誌に、5月中旬発売予定と記載されていると、間違いとはいえませんが違和感があります。校正時に、発行日(6月13日)よりも、過去の日付(5月中旬)に予定と付いているなら確認が必要です。
時間軸は、読者がその印刷物を手にするときを基準としないといけません。
季刊号などの季節をまたぐものは、制作開始時期と発行時期に数カ月のタイムラグがあります。夏に発行するものでも、春先には製作に入っていることもあるので、文章の素読みのときは、夏に読むものだと想定してみていく必要があります。
また、年をまたぐものは間違いが非常に多いです。特に新年の挨拶とかに間違いが集中します。
▼ 製作時期が「今年」⇒ 発行時期が「来年」の場合
「来年」のことは、「今年」に直す。
「今年」のことは、「昨年」に直す。
来年とか今年とかが曖昧な場合は、西暦で「2021年には~」としておいた方が無難です。
ちなみに、過去号から誌面情報を流用する場合「特許出願中」などの文言にも気を付ける必要があります。その当時は出願中でも、「特許取得済」になった可能性があるので確認が必要です。
5:罫線と画像との重なり
▼ このように罫線の上に画像をのせているデザインはよく見かけると思います。
▼ 罫線と画像の配置が逆になり、罫線が画像の上になる間違いがあります。
【よくある間違い例】
これは、間違いに気づくというよりも、
「こういう間違いがある」⇒「見てみる」⇒「やっぱ間違っていた」というパターンが多いです。
6:Rマーク = Registered Trademark
このRマーク、よくロゴに付いているのを見かけると思います(※Rマークは、商標登録済みの商標ことです)。
このRマークの何がおかしいかというと、よく欠けていることです。ロゴ自体が小さく配置されていて、さらにRマーク自体も小さすぎてわかりづらいせいです。
知っておかないと見落とすことが多いですが、欠けていても小さすぎて誰も気づかないというのが現実です。
【例1】Rマークの入ったロゴ
【例2】Rマークが欠けている例
起こりえる理由の一つとして、表示領域が適正でない場合があげられます。
【例3】グレーの点線を表示領域だとします。
【例4】この表示領域が、ロゴよりも狭いと欠けてしまいます。
7:足して100%にならないグラフ
グラフの数値を全て足しても100%にならないことはよくあります。
小数点以下を切り捨て・切り上げしている場合には、足して100%にならないこともあります。校正としては、100%にならない場合、疑問出しをしておくのが賢明です。
この他に、グラフで注意すべき点としては、数値とその占める範囲が違っているということです。
【よくある間違い例】
▼ グラフの数値に赤字が入った場合。
▼ 数値だけ修正され、40%と45%のグラフに占める範囲がそのままになっている。
8:ページ周り(柱)
ページ周り、特に柱部分です。校正をやり始めて間もない頃は、目が慣れていないので柱部分は疎かになりがちです。
【例1】
【例2】
9:注釈
文章中の内容を補足する注釈文。「*」や「※」を用いられていることが多いです。
この誌面では、注釈文が1つだけで文章量も少ないので、どことどこが対応しているかすぐわかりますが、注釈文が※1~※10ぐらいまであると探すのだけでも大変です。
【よくある間違い例】
【例1】
文章中の「*」に、トルの赤字が入ったが、注釈文には何も指示が入っていない。
【例2】
注釈文にトルの赤字が入ったが、文章中の「*」には何も指示が入っていない。
文章に注釈文があるときは、まずどこに対応しているのかを確認しておかないといけません。
10:参照ページ
この参照ページは、「ページジャンプ・飛ばしノンブル・誘導ノンブル」などとも呼ばれたりします。この参照ページが合っているかどうかは、中面の情報が固まってから確認することが多いと思います。
もし、誌面内の参照ページの確認が終わった後に、追加訂正などで中面のページが入れ替わった場合は、参照ページの修正も必要になってきます。
そのため、どこに参照ページがあるのか、それがどのページに振られているのかを常に把握しておく必要があります。
11:背景の文字
背景にある白の「Stage」の文字です。
これだけ見れば「間違うはずがない」と思いますが、校正中はバックの文字は背景として認識されるのか、なぜか気付きづらいものです。
しかも、こういう背景にある英単語ほどスペルが間違っていることがあります。
おわりに
11例、よくある間違い・間違えそうなものを紹介しましたが、このような間違いを見つけるのに、校正の経験年数はあまり関係なく、知っているか知っていないかによるところが大きいです。誰かに教わったか、教わらなかったかです。
校正のスキルアップをするのに一番有効なのが、他の校正者の赤字や疑問出しを見ることです。それにより、自分の視点だけでは気づけなかったものが見えてきます。
校正者同士で、互いに間違いを共有しあうことは、自分のためだけでなく相手のためにもなりますので、積極的に勉強会や共有会などを活用していくことをおすすめします。
【誌面情報はすべて、宝島社 InRed(インレッド)5月号より】
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