字形・字体・書体・フォント[意味と違いをわかりやすく解説]
字形、字体、書体、フォントは、概ね次のような意味になります。
- 字形とは、文字の見た目の形
- 字体とは、文字の骨組み
- 書体とは、文字の様式・装飾
- フォントは、書体と同じ意味とされる
これらについてわかりやすく解説していきたいと思います。
「字形」「字体」「書体」「フォント」の4つは、厳密にいえば違うものになります。
ただ、辞書によっては「書体」と「フォント」は同じとされることが多いです。
これは、辞書による解釈の違いというよりも、DTPの普及によって便宜上一緒にしている(一緒になった)という意味合いが強いです。
一般的にも、書体とフォントは同じ意味として扱われ、どちらの言葉を使っても意味は通じます。
さらに、「字体」と「書体」も同義とする辞書も複数見られます。
以上のように、いくつかに分類することができますが、この記事では次の分類に沿ってそれぞれの言葉の意味を見ていきたいと思います。
・「字形」「字体」「書体=フォント」です。
■ 覚えておきたいキーワード
- 字形 … 見た目・具現化
- 字体 … 骨組み・抽象的
- 書体 … 肉付け・様式・装飾
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・日本エディタースクール_標準 校正必携
・日本エディタースクール_実例 校正教室
・ダヴィッド社_編集校正小辞典
・小学館 デジタル大辞泉
・文化庁ホームページ> 常用漢字表における「字体・書体・字形」等の考え方について
・JAGAT(公益社団法人日本印刷技術協会)> 文字の特性とフォント--フォントデザインの実際(1)
1. 字形の意味
● 字形の意味
→ 字形とは、個々の文字の見た目や形状のことをいいます。
字形の意味は簡単です。文字通り、個々の文字が持つ見た目の形です。
例えば、次のようなものは字形が違うことになります。
1.「新字体」と「旧字体」
2.「明朝体」と「ゴシック体」
1も2も単純に、文字の見た目が違います。
もっとわかりやすいものでいえば、「猫」と「犬」も字形が違うといえます。
字形には、このような大きな違いだけでなく細かな部分にも違いが起こります。はね、はらい、線の長さや太さ、角度などです。
3. 右下のはねが違うので、同じ漢字を意味するものであっても字形が違うということになります。
4. 右肩の点の形状が違うので、これも字形が違うということになります。
このように見た目の大きな違いから細部まで含めて「字形の違い」となります。
字形は、それぞれの文字が持つ見たまんまの形です。些細な部分でも違うと字形が違うことになります。
ここで改めて字形の意味を振り返ると、よりわかりやすいと思います。
「字形とは、個々の文字の見た目や形状のこと」
次のように文字のバランスが悪い、特に部首(けものへん)とのアキが広くて見た目がちょっと変という場合。
このようなときは、「字形が悪い」「字形が良くない」といいます。
2. 字体の意味
● 字体の意味
→ 字体とは、文字の骨組みのことをいいます。
ここでの骨組みとは、その文字の基本となる形を表しています。
字体は、抽象的に思い描かれるもので、実態のないものです。
例えば、
「猫」という漢字を頭の中に思い浮かべた場合、誰にも共通するイメージがあると思います。
「猫って、こういう漢字だったなぁ……」というイメージです。
この頭に思い浮かんだ文字に対する抽象的な概念が「字体」となります。これが「骨組み」に例えられます。
頭の中にその文字のイメージが備わっているからこそ、次のように字形に違いがあっても一つの文字(猫)として認識することができます。
猫と書いた字が、たとえキレイでも汚くても、他人が書いた癖のある文字でも、同じ「猫」の文字だと判別できるのは、「猫という文字はこういうものだ」という骨組みを頭の中に持っているからです。
これらの漢字は、骨組みがすべて同じなので「字体が同じ」ということになります。
1.「新字体」と「旧字体」の比較
部首の骨組みが違うので、これは「字体が違う」ということになります。
2.「明朝体」と「ゴシック体」の比較
骨組みは同じなので「字体は同じ」ということになります。
▼ 「字形」と「字体」の関係性
字体を具現化したものが文字であり、そこに字形が生まれます。
字形は、文字として具現化されたものに使うのに対し、
字体は、頭の中に思い浮かぶ抽象的な文字の骨組みに対して使用します。
3. 書体の意味
● 書体の意味
→ 文字に体系的に施された様式、装飾、スタイルのことをいいます。
字体が、骨組みといわれるのに対し、
書体は、肉付けといわれます。
この文字を肉付けする書体は、数多く存在します。
例えば、和文書体には、明朝体、ゴシック体、楷書体、教科書体などがあり、欧文書体には、ローマン、ヘルベチカ、ユニバースなどがあります。(※書体とフォントについてはさらに後述しています)
▼ 「字形」「字体」「書体」の3つの関係性(1)
「字体」を具現化した「字形」を、「書体」で肉付けするというイメージです。
上の図では、わかりやすくするためにそれぞれの関係性を順を追って説明していますが、実際には字体を具現化した(文字に表した)時点で、同時に書体も設定されることになります。字形と書体は、同時に生まれるものと考えられます。
実際のイメージは次のようになります。
▼ 「字形」「字体」「書体」の3つの関係性(2)
▼ 「字形」と「字体」と「書体」のおさらい
1. ともに明朝体の「新字体」と「旧字体」の漢字を比べた場合
- 字形(見た目) → 違う
- 字体(骨組み) → 違う
- 書体(肉付き・装飾) → 同じ
2.「MS明朝」と「MSゴシック」の猫の漢字を比べた場合
- 字形(見た目) → 違う
- 字体(骨組み) → 同じ
- 書体(肉付き・装飾) → 違う
4. 書体とフォントについて
書体とフォントについては、わかりやすく説明されているサイトがあったので、そこから抜粋して紹介したいと思います。【参考:JAGAT「書体とフォントの違いは何ですか?】
書体とは、
字体を統一的にデザインした文字のスタイルのことを指しています。
和文書体では、明朝体・ゴシック体・楷書体などがあり、欧文書体にはローマン・イタリック・サンセリフなどがあります。
フォントとは、
元来欧文活字の用語で、1つの書体の文字サイズごとに作られた大文字・小文字・数字・記号類のセットのことを意味します。しかし、デジタルフォントはコンピュータ上で文字のウエイトの変更などを行えるため、書体も含めて文字のことを表す慣用語として使われています。
おわりに
■ 一般的な「字形・字体・書体」の意味を詳しく知りたい場合
複数の辞書やサイトを参考にすると解釈が違っているので、頭を整理するのが面倒です。
文化庁ホームページに、詳しく解説されているもの(PDF:8ページ分)があるので、そこから学ぶのが一番です。
【文化庁ホームページ】> 常用漢字表における「字体・書体・字形」等の考え方について(PDF)
■ 試験等で「字形・字体・書体」などの知識が必要という場合
試験元が推奨する参考書で勉強するのがベストです。
例えば、DTPエキスパートの試験では、このような知識も試験範囲に含まれるので、試験元のJAGATが推奨する参考書で覚えるが最適です。
【JAGAT_公式サイト】> 参考書籍一覧