文章校正とは?文字校正との違いを解説[意味を知れば校正の見方も変わる]

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文章校正とは?文字校正とのを解説[意味を知れば校正の見方も変わる]

文章校正と文字校正の意味は、辞書や書籍で明確に定義されているわけではありません。何となくわかっているつもりでも、2つを同じと解釈しても特に問題があるわけでもありません。

ただ2つの名称が存在するので、何らかの意図があって使い分けているのかもしれません。

そこで「文章」と「文字」の意味から、両者の違いを考えていきたいと思います。

 

いくつかの辞書では「文章」と「文字」の意味をは次のよう定義されています。

文章の意味

1.いくつかの文を連ねて、まとまった考えや気持ちを書き表したもの。
2.文を連ねて、まとまった思想・感情を表現したもの。
3.一つの主題でまとまった思想を表現するために、文を連ねたもの。

文字の意味

1.ことばを、目で見たり指で触ったりして認識するための記号体系
2.言葉を表記するために社会習慣として用いられる記号
3.点や線の組み合わせによって言語をひとくぎりごとに記号化したもの。

文章は、書き手の何らかの考えや思いが備わっていることが条件とされます。当然、読み手側からみても考えや思いが記されていることがわかる必要があります。

文字は、言語学的にはことばを表すための記号とされ、それらが組み合わさることで単語となり文となり文章となっていきます。

以降の章では、いくつかの例文から「文章」と「文字」の違いを探っていきたいと思います。2つの違いがわかれば、文章校正と文字校正の違いもわかってきます。

[記事作成にあたって以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

【文章と文字の意味】
・ベネッセ_表現読解国語辞典
・小学館_デジタル大辞泉
・小学館_精選版 日本国語大辞典
【例文】
・Wikipedia_ベクトル解析
・Wikipedia_ドラえもん
・青空文庫_谷崎潤一郎『細雪』

1. 文章と文字の使い分け【1】

例文を見て、文章と文字のどちらの表現がしっくりくるか考えていきます。

<例1>

どこか異国の地へ行って、何らかの規則正しく並んだ記号を目にした場合。

「何かが書かれている」
「何か文字らしきものが書かれている」
 と感じると思います。

「何か文章らしきものが書かれている」
 と言っても意味は通じますが、文章は書き手の考えや気持ちが表現されるものです。

それを見た相手にも書き手の考えや気持ちが伝わる必要があります。文字や文の集合を意味あるものとして理解できたときにはじめて、文章とするのが相応しい表現です。

ジブリ映画「天空の城ラピュタ」で、ラピュタに降り立ったパズーが、大きな黒い壁画に書かれた文字(ラピュタ文字?)を目の前にして言います。
「彫ってある字が読めるといいんだけど……」

そこに何かが書かれているのはわかるけれども、その意味(考えや気持ち)を読み取れない場合には文字の使用が適切といえる例です。

<例2>

このような文章を目にした場合、
『なんか難しそうな文章だな』と思いますが、
『なんか難しそうな文字だな』とは思わないはずです。

また、文章を読み終えた後に、
「わかりやすい文章だった」とは言いますが、
「わかりやすい文字だった」とは言いません。

<例3>

次のAとBの文を、パッと見比べた場合

A 

B 

Aのほうが「キレイな文字だ」「読みやすい文字だ」という印象を受けますが、
Aのほうが「キレイなだ」「読みやすい文章だ」とはなりません。

2. 文章と文字の使い分け【2】

前述の例2例3のように、ことばの意味を深く考えなくても感覚的にわかることがあります。

文章」のほうが適切、「文字」のほうが適切とされる感覚は、対象への視点の違いによって生まれてくるものです。

・全体を見て判断するもの → 文章

 

・部分に焦点をあてて判断するもの → 文字

 

このような使い分けは、一般的な用語にも見られます。

テープ起こしやOCR機能は、それぞれ「文字起こし」「文字読み取り機能」といわれます。両方とも「文字」が使用されています。

テープ起こしもOCR機能も、一文字一文字を聴きとり、読みとりしていくものです。一文字に重点がおかれ、その積み重ねで全体を再現していきます。

一方、文章校正支援ツールなどは、文章の内容や構造を理解して誤りを見つけていきます。文全体を見て誤りと判断していくものです。そのため「文章」の語が相応しいといえます。

前述した例を踏まえると、
文章」と「文字」の使い分けの基準には、知覚と視点がかかわってきます。

1. 内容(考え・気持ちを)を知覚できるか、知覚できないか【例1】
2. 全体に焦点を当てるか、部分に焦点を当てるか【例2・例3】

という基準です。

このような基準は、校正と校閲の関係にも当てはまります。

校正作業は、基本原稿通りに一字一句忠実に仕上げられているかの確認です。原稿に忠実であるため、そこに何が書かれていようが、どんな言語であっても関係ありません。内容を理解せずともできる作業です。

この視点は、文字の視点と同じです。

 

一方、校閲作業は、内容を理解して誤りを見つけていくものです。そこに書かれている内容を理解しなければ、誤字・脱字、適切な表現、事実確認、表記統一などの確認はできません。

この視点は、文章の視点と同じです。

以上のことから、

文字校正とは、校正的な作業のことをいい、原稿の指示通りの仕上がりになっているかの確認作業といえます。
文章校正とは、校閲的な作業のことをいい、文章内容を理解して誤りを見つける作業のことをいいます。

3. 文章校正と文字校正の使い分け

文章校正」と「文字校正」を使い分けるなら次のようになります。

 

これらの意味を踏まえた上で、次の校正内容を「文章校正」か「文字校正」かにわけて考えていきたいと思います。

・品番が記載されている原稿の情報が、ゲラにちゃんと流し込まれているかの確認です。

この場合は「文字校正」とするのが適切です。内容を理解できなくても、一字一字目で追っていけば確認できます。原稿通りに情報を再現するのが優先される作業です

一方、ゲラの文章を読んで不備を見つけていく場合。

この場合は、一字一字でなく全体を見て内容を理解しないとできない作業です。そのため「文章校正」が適切となります。

4. 文章校正と文字校正はどっちを使う?

いくつかの辞書では「文字」の意味として「文章」も含まれる場合もあるとされるので2つを同じ意味としても問題はありません。

その場合は次のようなイメージです。

使い分けが必要とされるなら前述の基準で問題ないですが、2つを同じ意味とするならどっちの使用が適切か?

一番は相手に伝わることなので、周囲の環境に合うならどちらでもいいわけですが、その他の基準としては、どちらの用語が多く使われているかを軸にして考えるのもいいと思います。

文章校正がネット検索される数は、複数の語をかけ合わせて検索するのも含めれば月間平均29,700回、文字校正は月間平均5,400回です。その差は、5.5倍もあります。
(※検索数は計測可能な語の最大値の集計です。Google検索における2月2日時点のものです)

また、よく検索される文章校正に関連する用語は307ワード、文字校正は92ワードになります。これらの違いから、知名度でいえば文章校正が上で、文字校正よりも浸透していることがわかります。

数が多いから正しいとはなりませんが、両方を同じ意味として扱うなら文章校正のほうが文字校正よりも伝わりやすい場面は多いはずです。

 文章校正とは何か。文字校正との意味や違い

おわりに

文章校正と文字校正の使い分けの必要があるなら、「文章」と「文字」が持つ意味から解釈するのがわかりやすく理解しやすいです。

ただ校正と校閲の使い分けも企業や個人によって変わってきます。文章校正と文字校正も明確にわけるのは難しいことです。

最終的には、使用する相手と解釈にズレがないようにコミュニケーションをとることが大切になってきます。